「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ

学問の秋
佐藤 拓雄
(2009/11/11)


僕の卒業した大学の専攻は、大学院進学率が高く、学部の3年4年より、大学院生のほうが圧倒的に多いほどでした。
そんなわけで、大学院生というものを常に身近に感じて過ごしていて、漠然と「カッコいいなあ」という気持ちを持っていました。

何がカッコいいのか。
やはり、専門の研究に没頭しているところでしょうね。実際は「没頭」していない人も多かったのかもしれませんが、青い青い学部生からすれば、研究発表をしたり、論文を書いたりしているのをみて、自分もいつかああなりたいなあ、とワケもなく思ったりしたものです。
言い換えれば、専門を究めるカッコよさでしょうか。
また、大学院生の多くは、高校などの非常勤講師をして学費を稼いでいて、それもまたワケもなく憧れました。

そんななかでも、これはすごい!さすが大学院生!と、驚き、うらやましく思ったのが、ある先輩の「書庫」でした。
驚くなかれ、アパートの隣り合う部屋同士を2部屋借りて、片方を「書庫」というか「書斎」というか、本だらけにして使っていたのです。
一度、片づけを手伝ってくれと言われて訪れたのですが、書物の量もハンパじゃない。床が抜けるんじゃないか、というほどの学術・研究書が、図書館とかにあるようなスチールのラックにきれいに整理して置いてあるのです。うーん。これぞ研究者。すげえなあ。カッコいいなあ。と大学生の拓雄青年は思ったわけです。

それから十年近く後、今度は、妻の実家を訪れて、またおったまげました。
自宅に「ミニ図書館か!」と思わせるくらいの書庫が。
妻の父は、元大学の先生。大学院生のさらに上を行く、本物の研究者です。理科系の研究者なので、書物の内容は正直よく分かりませんでしたが、当然、先輩の家どころじゃない量。
それが、これまた整然と、スチールのラックに並んでいるのです。自宅に居ながらにして、大学の研究室状態。
研究者の自宅ってみんなこうなのか?ホントに大変なものだなあと、驚き、同時にうらやましく思いました。

自宅に専門書を並べて、昼夜分かたず論文執筆にあたる、というような、僕にとっては夢のような生活。
僕の場合、局アナというサラリーマンの道を選んだ時点で、まさに夢のまま終わってしまいましたが、いまだに憧れの念を抱き続けています。

明日からは、「秋」シリーズ最終章、「芸術の秋」です。

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