「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ
ともに(2)
佐藤 拓雄
(2012/03/02)
震災発生一年を前に、「ともに」をテーマに綴っているアナ・ログ、今日から2巡目です。
私は、震災発生時から緊急放送に入り、翌朝まで放送が続きました。
明け方、浅見さん&林さんと交代し、2時間弱の仮眠をとった後、往復時間も合わせて1時間程度でしたが自宅に帰ることができました。着替えその他必要なものがあったのと、なんといっても、家族に一目でも会いたかったからです。(その間も家にも戻らず仕事を続けていた方々には悪いので、ほんの1時間とはいえ、2日目の朝にこっそり帰宅したことは、今までほとんど話しませんでした…)
ともかく、家族の無事を確認し、会社に引き返そうとするものの、やはり心もとなく、かつ、こんな時に家族を置いて仕事に行くことがなんとも心苦しく、後ろ髪をひかれる思いの私に、妻が一言、喝を入れてくれました。
「家は私が守るから、パパは自分の使命を果たしてちょうだい!」
頼もしい一言で、もう一度、私のスイッチが入りました。
そうだ、自分は、被災者のため、宮城のために、すべきことがある、使命を果たさなくては、と。そして、被災者には、とりもなおさず自分の家族も含まれるのだ。自分の仕事をしなくては。
…(寝不足の)目が覚めた思いで、仕事に戻りました。
だからといって、そのあと一切迷いがなくなった、と言えば嘘になります。弱い私は、やはり、時に家族が気になり、心が揺れてしまうこともなくはありませんでした。でも、妻のその一言は、私の使命感を呼び起こしてくれるには十分でした。
…と、ここで終われば、ちょっと「深イイ話」…おっと…ですが、仙台市中心部が日常を取り戻すのと同じようなスピードで、妻も日常を取り戻していき…あれあれ?妻よ、あの良妻ぶりはどこへ行った?オレは自分の使命を果たせばよかったんじゃなかったのか?
結局、アナウンサーの仕事だけでなく、家庭でのこまごまとした様々なことも、私の大事な「使命」で、これを果たさないと…というのが、オチでして(苦笑)
でも、そんな家族がいて、日常があること、「ともに」過ごす日々が大切なのだということも、震災を経て、改めて痛感しました。
以上、今回は、家族と「ともに」でした。
続いては、浅見さんです。あれ?前回と同じだ。順番は厳正な抽選なので、こういうこともあるのです。