「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ

2013年 ともに
佐藤 拓雄
(2013/03/12)


東日本大震災は3年目に入りました。
そこで、今日からのテーマは、私たち仙台放送の復興へのキャッチフレーズ「ともに」です。

あの日から2年。
今も、県内だけで10万人もの方が、仮設住宅で暮らしています。
1300人もの方の行方がまだ分かりません。
津波被災地は更地だらけ。(写真はきのう3月11日、朝日の南三陸町歌津です。更地の上にうっすらと雪。寒い朝でした)
内陸部の被災地も復旧は遅れています。

それに比べれば、私の暮らしは、ほぼ震災前に戻りましたが、それでも、近所のスーパーは、地震で壊れ、まだ再開していません。近くのビルも全壊、つい先日ようやく解体工事が終わり更地になりました。住んでいるマンションは「一部損壊」でしたが、修繕工事が始まったのはごく最近で、今も作業中です。
私程度の被災状況でも、暮らしのすぐ隣に今も震災があるのです。

阪神淡路大震災では、「地域経済が震災の影響を脱した」と感じた人の割合が、震災10年で初めて半数を超えたという統計があります。いかに時間がかかるか、ということを思い知らされます。

そういう中で、ここ数か月の間に、仙台に住む人から「もう震災の話は見たくない、聞きたくない」という声を聞きました。それも一人ではなく複数、そして、受けた被害がそれ程ではない人たちです。
ある人は「辛いから」と言い、別の人は「いつまで被災地の状況を放送するのか。仙台市民はとっくに前を向いている」と言いました。

本当に残念で、情けなく、悲しい、と思いました。
震災の現実は、「辛い」に決まっています。でも、自分よりもっと辛い人が、同じ県で暮らしているのです。「前を向く」とは、都合よく忘れることではないはずです。

私の考えを押し付けるつもりはありませんし、色々な考え方があるのは百も承知ですが、でも、あえて言いたいのは、何もできなくても、目をそらすことだけはしないでほしい、ということです。
今後さらに震災の風化は進みます。その風化に拍車をかけるのは、現実から目をそむけ、見ないこと、聞かないこと、なかったことにする行為ではないでしょうか。

震災3年目、まだまだ私たちは、震災の真っ只中です。

次は、明日から職場復帰、寺田アナウンサーです。

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