「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ
皐月に想う
(2013/05/13)
知り合いの歌舞伎通から先月、新歌舞伎座こけら落とし公演に誘われました。
観劇好きな私。とっても楽しみ。
ただ私は生来、長時間観劇する忍耐強さを持ち合わせておりません。出発前は多少の不安があります。
映画もDVDで済むのならそうしたいところ。横になって足を伸ばし、トイレに行く時は一時停止ボタンを押し、眠くなったら寝たい。元々、観劇に向かないのです。
そんなもので、劇場に向かう際には「興味がないものほど、見てみれば新発見がある!」と気持ちを奮い立たせねばならないくらい面倒な人間です。
歌舞伎は古典演劇という先入観から二の足を踏んでいました。
しかも初参加が、チケット入手困難のこけら落とし公演。罰当たりなのは自覚しています。
そんなことを考えながら新歌舞伎座に到着すると、劇場前は大混雑。人混み好きの私はテンションアップ。基本ミーハーです。
「これだけ人を集める歌舞伎の魅力とは…」と場内に入ると、内装の美しさにびっくり。
温もりを感じる木造建築からは、江戸の香りが。
「音響構造に最新技術を取り入れてつつ、旧歌舞伎座を復元している」と歌舞伎通。伝統的な趣が好きです。
何と言っても歌舞伎の再開を待ちわびた人々の高揚感で溢れています。
そして開幕。全ての振る舞いが様式美に彩られ、とってもオシャレ。
大向こうの粋な掛け声が会場の一体感を高めます。
そう!歌舞伎は元来が誰でも楽しめる大衆演劇。面白いに決まっています。
私も心の中で「中村屋~!」の掛け声。
一幕が終わって次の幕までの間を「幕間(まくあい)」といい、その時間に食べる弁当が「幕の内弁当」。舞台を踏み鳴らす動作を「足踏み」。「足踏み」が響き渡るように檜が敷かれた舞台が「ひのき舞台」。舞台概要が書かれたガイド本が「筋書き」、などと演劇用語を学びながら舞台は進み、去年12月に亡くなった中村勘三郎さんの孫・七緒八(なおや)君2歳が登場。
キョロキョロしながら、周りにつられて見栄を切る姿に拍手。
歌舞伎の伝統をファミリーで築き上げていこうという温かみを実感し、あっという間に3時間が終了。
お土産には歌舞伎座羊羹を購入。
「これぞ日本文化!これぞ日本の心だ!」という高ぶりとともに歌舞伎座を後にしました。
これが先月の話。今月は明治座に行ってきます。
次は林さんです。