「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ
燃える秋
金澤 聡
(2013/11/08)
今回のテーマは「燃える秋」です。
東北が熱く燃えた、楽天イーグルスの日本一。
被災地・東北にとっての悲願が成就された。
最後にマウンドに立っていたのは、背番号「18」田中将大だった。前日の第6戦に先発した田中は、プロ入り最多の160球を投げ切った。
勝負事に絶対はないと痛感。今シーズン初めて、田中に土がついた。
翌日、田中はベンチに入れてほしいとコーチに直訴したという。星野監督は、ベンチに入れてもマウンドに上げることは絶対しないと決めていた。
3点リードで先発の美馬から2番手則本がマウンドに立っていた7回。
星野監督は、佐藤義則ピッチングコーチと継投について話し合おうとした。
その時、田中が2人の間に割って入る。
「登板させてください」田中が星野監督に志願する。
「本当に大丈夫なのか?」星野監督は前日完投したエースの肩を心配していた。
「大丈夫です!」
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫です!!」
「本当に大丈夫なのかっ!」
「大丈夫です!!!」
「それなら9回いけ!」
指揮官は3度の確認で、田中の不断の決意を感じた。
9回、コールされたのは『田中将大』
前日沈んだ難攻不落の不沈艦は、エースのプライドと意地で再び浮上し、その姿をマウンドに表した。
そして、球団創設9年目で初の日本一をもたらした。
偉大なる若きエースは、絶対にマウンドに上がらなくてはいけない理由があったのかもしれない。
自分の負けで日本一を逃しては、次に進めない。そう感じた。
たとえエースが代わったとしても、燃える秋が、また来年訪れることを願って…。
次は、小口アナウンサーです。