「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ
2014年「ともに」
金澤 聡
(2014/03/10)
虹色に輝く夢が詰まった当時16歳の少年は、葛藤していた。
「このまま続けていいのか。辞めるべきなのでは…」
故郷宮城は先の見えない災禍に襲われ、少年の胸をえぐった。
幼い時から通っていたスケートリンクも被災し、練習拠点を失った。実家も被災し、一時避難所生活を送った。
しかし、少年は、立ち上がる。故郷の復興のため東北の光になろうと決断する。
もう一度スケート靴を履いた。
練習場所を失った少年は、アイスショーに参加することで技術を磨いた。
募金活動をしながら各地を渡り歩き、60公演もこなした。
被災地に勇気を届けたい。その想いを結実させるため、海外留学も決める。
出来る限りの努力は全部行った。
どんなに辛くても、血のにじむような努力を続けた。
支えてくれた故郷の人に光を届けるために。
ソチオリンピック。
震災から3年。19歳になった青年は、世界一に挑んだ。
青年にはライバルとの熾烈な最終決戦が待っていた。
フリー前半、得意のジャンプでミスを犯すが、後半は立て直し見事に滑りきった。
『諦めるな』 『絶対に諦めるな』
そう訴えるような滑りだった。
羽生結弦。男子フィギュア初の金メダル獲得。
新たな歴史の幕を開いた。
「金メダリストとして復興に携われることはある」
世界一になって勇気を届けた東北の光は、
これからもともに、故郷の復興に寄り添っていく存在だろう。
故郷でも見えつつある震災の心の風化…
羽生がもたらした金メダルは、失ってはいけない大事な何かを改めて教えてくれた。
*写真は、羽生選手が金メダルを獲得した事を祝して、
弊社電波塔「仙台スカイキャンドル」を金色に灯したときのものです。あいにくの雪模様と、自宅から携帯カメラで撮影したため、分かりにくい写真になっています。
すいません。(2月15日撮影)
次は飯田アナウンサーです。