「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ

私のイチ押し~食べ物編~
佐藤 拓雄
(2007/06/04)


仙台の「百舌」という牛タン屋さん。そんじょそこらの牛タン屋さんではありません。
まずタンが違う。「厚い、美味い、柔らかい」。2cmはあろうかという超厚切りなのに、箸で持って口へ運ぶと、スッと離れていく感じ。そのくらい柔らかく、噛み切らずに食べられるのです。
しかも、その厚くて柔らかい牛タンを使ったメニューが実に豊富で、美味しいものばかり。塩焼きをはじめ、ステーキ、ホワイトソースがけなどなど、洋食のシェフだったというご主人ならではのメニューがずらり。
なかでも、タンカツは絶品。タンのカツですよ。薄い衣をつけたタンを、揚げるのではなく、少量の油で焼きあげる感じのカツ。これを、これまたタンの入った特製の味噌ダレでいただきます。
3年ほど前に、番組の取材でお邪魔して(写真はそのロケ中のもの)、以来、すっかりこのお店のファンになってしまい、家族を連れて行ったり、お昼時に一人で行ったり。
実はこのお店を気に入ったもうひとつの理由が、ご主人と奥様の人柄でした。勝新太郎似で一見気難しそうなご主人は、実は冗談好き・話し好きの気さくな方。大変研究熱心で、次々に新しいメニューを考え出し、運がいいと、その試作品を食べさせていただけることも。そして、いつもにこにこ、穏やかに笑っていらっしゃる奥様。
仙台へ来た知人友人を自信を持って案内できるイチ押しのお店・・・でした。
去年1月、そのご主人が急逝され、お店はそのまま閉店。もうタンカツを味わうことはできなくなってしまったのです。
働き盛りのご主人で、あまりに突然のこと、悲しく、そしてショックでした。お気に入りのお店、お気に入りのメニュー、そしてご主人の笑顔。それはいつもそこにあり、こちらが望めばいつでも会えるものだと勝手に思い込んでいた自分の浅はかさ。揃って「百舌ファン」だった家族も皆ショックを受けていました。
ご主人の急逝から1ヵ月後、奥様が馴染みのお客さんのためにと1週間だけお店を開けてくださいました。変わらぬ美味しさでしたが、いろいろな思いがこみ上げてきて、自然と涙が出ました。
「百舌」のタンカツ。もう味わうことはできませんが、記憶に残り続ける味です。
「百舌」は、現在奥様が牛タンの通信販売を続けてらっしゃいます。

このテーマ、最後は寺田アナウンサー。取材先でのお昼は必ずラーメンを食べるそうですが・・・

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