「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ
子どもの頃なりたかったもの
佐藤 拓雄
(2007/07/03)
子どもの頃なりたかったもの、それは、コックさんです。幼稚園時代の夢です。
きっかけは、母親によると、帝国ホテルの当時の料理長・村上信夫さん。テレビで見た村上さんのピンとそびえ立つコック帽に一目惚れしたらしいです。フランス料理の村上さんですから、「コック」ではなく「シェフ」というべきかもしれませんが、料理人=「コックさん」が当時のボキャブラリーの限界でした。
それはともかく、幼稚園児の僕は料理はできませんでした。要するに「形」から入ったわけです。
そして、どういうわけか、「東大に入ってフランス語を勉強して、フランスで料理人の修行をして、帝国ホテルの料理長になる」などという、幼稚園児らしからぬ、しかし、現実的なのか現実離れしているのか分かりかねる、具体的なプランを幼稚園の先生などに話して驚かれていたそうです。
さて、そのプランのどれ一つとして現実になっていないことは言うまでもありませんが、実は、「コックさん」の夢はちょっとだけ実現しました。
浪人時代、気分転換と予備校の学費の足しに、という名目で始めたファミリーレストランのアルバイトです。
はじめは、コックさんの夢などとっくに忘れ、「ウエイターをしたい」と面接に行ったのですが、「厨房の手が足りないから」と、作るほうに回されました。ハンバーグ焼きから始まって、スパゲティ、グラタンなどの調理を主にやりました。家で料理をすることなどほとんどなかった僕が、フライパンの中身を片手で返せるようになったり、塩・こしょうのふり方が格好良くなったり、思わぬ収穫もありましたが、なんといっても最大の収穫は、コックの格好ができたこと。白いコック服、そして、幼き日に憧れた白いコック帽。村上信夫さんほどの高さではありませんが、「ああ、そういえば、こういうのに憧れていたことがあったなあ」とちょっと感激したことを覚えています。
今になって悔やまれるのは、そのとき、写真を撮っておかなかったこと。当時は、携帯電話のカメラもデジカメもない時代、いつもカメラを持っている人なんてほとんどいませんでしたので、そんな発想がまるでありませんでした。
ちなみに、現在、家では「男子厨房に入らず」状態。写真は、これ用に撮影しただけです。すみません。はい。
次は水上アナ。どんな夢を持っていたんでしょうね。