「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ

東日本大震災7年
佐藤 拓雄
(2018/02/27)


7年前の震災直後、被災地を取材しているときに偶然出会った僧侶の方から、
「一隅(いちぐう)を照らす」
という言葉をいただきました。
天台宗の開祖・最澄の言葉で、一人一人が自分の持ち場をしっかり果たすことで社会がよくなる、という意味だそうです。

あまりにも大きすぎる震災の被害を前に、無力感を覚えることも少なくない中で、この言葉は、非常に自分の心に響きました。
私のできることは小さくても、私のすべきことははっきりしています。
そのすべきことをしていくことが、必ず復興につながっていくと思うことができ、改めて、震災後のこの宮城で、地元のテレビ局の人間としての自分の使命を果たすことこそが重要なのだと確信できたような気がしたのです。

それ以来、この言葉は、私の座右の銘になっています。
震災に限らず、あらゆる場面で、自分の「持ち場」は何か、ということを考えるようになりました。

先日、大雪のあと、通勤路を歩いていて、またこの言葉を思い出しました。
歩道の雪が、きれいに片づけられているところと、反対に雪かきを全くせず凍って非常に危険なところ。
その歩道に面した建物の人が雪かきをしたかしないか、ということですが、ああ、これが「一隅を照らす」だなぁと。
それぞれが持ち場の雪かきをすれば、どこも凍らないだろうに、と妙に納得してしまいました。本来の言葉の意味とは違うのかもしれませんが。

それはともかく、この7年で、私の「持ち場」も少しずつ変化してきていますが、復興の道のりの中で、その「持ち場」をしっかり見極め、役割を果たしていきたい、という思いが変わることはありません。

【写真】仙台市の震災遺構、荒浜小学校です。津波の被害を受けた校舎には、津波・震災というものを一瞬で直感させられます。

明日は、稲垣アナウンサーです。

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