「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ
温泉
佐藤 拓雄
(2019/06/27)
小学生の頃、父方の祖父の、喜寿だったか、そういうお祝いで、親戚一同が集まったことがあります。
行ったのは、福島県の磐梯熱海温泉。祖父は郡山市に住んでいましたので、割と近場ですね。
その磐梯熱海温泉で、祖父と私と弟という3人だったと思いますが、温泉に入りました。
かなり広い浴槽で、泳ぎを覚えたばかりの私は、ついつい平泳ぎを披露。
今考えると、「温泉で泳いではいけません」とたしなめられるような場面でしょうね。
ところが、その時祖父がとった行動は、一緒に平泳ぎをスイスイ、でした。
「おじいちゃん、泳ぐのじょうずだね!」とはしゃぐ私と弟。
ますます調子に乗る祖父。
という感じで、楽しく温泉に入り、部屋に戻りました。
「温泉気持ちよかった?」などと母か叔母かに聞かれたのだと思います。
「おじいちゃんと泳いだよ。おじいちゃん泳ぐのうまいんだよ」
というようなことを言うと、周りの大人一同が、目を見開き、「えーっ?!おじいちゃん泳いだの!?」。
それもそのはず、祖父は、明治生まれの父親。
口数は少なくて、自分の子どもにはかなり厳しく、万に一つも、温泉で平泳ぎを披露するような人ではなかったようですので、息子・娘である、父や叔父叔母の驚きは相当だったようです。
ただ、私にとっての祖父は、厳しい面は全く見せず、優しくて、いつも私たちを可愛がってくれて、茶目っ気もあり、というおじいちゃんでしたので、温泉で泳ぐのも、父や叔父叔母のような意味での驚きはなかったのです。
父親としての顔と、孫に見せる祖父の顔が、これほど分かりやすく違うのも微笑ましいですね。
私の父も、これほどではありませんが、やはり孫に対しては、私の知らなかった顔を見せていたりします。
将来私もそうなるのでしょうか?
【写真】は、その磐梯熱海温泉に程近い、猪苗代湖。単なる連想です。
明日は、西ノ入アナウンサーの温泉話です。