「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ
食欲の秋
佐藤 拓雄
(2007/09/28)
お酒も好きですが、僕はかなりの甘党です。特に好きなのが、大福。本日も、会社のデスクで、こうしておやつに大福をほおぼっています。
そんな甘党の僕が夢を叶えたお話を一つ。
小さい頃から甘党で、母の作るケーキやクッキーが大好きでした。中でも特に好きだったのがアップルパイ。子どもながら、いくらでも食べられる、というくらい好きでしたが、いくら手作りでも、モノには限度というものがあります。普段は、焼いた一枚を家族5人で切り分けて食べていました。当たり前ですね。
「ああ、もっと食べたいなあ」と、いつも欲求不満と満足感とが入り混じった複雑な心境で、大事に大事に食べていたのをよく覚えています。
そんなあるとき、ふと思いつきました。
「そうだ!自分の誕生日なら、一枚全部自分で、とお願いしても聞いてもらえるんじゃないか?」と。
小学校の高学年くらいの年齢だったでしょうか、そのへんはちょっと記憶が曖昧なのですが、当時の僕にとっての究極の夢を、誕生日のお願いとして申し出てみました。やはり「誕生日」という理由づけは強い。母はあっさりOKしてくれました。
待ちに待った9月25日、直径30cmのアップルパイが丸々すべて僕のものになりました。
なんという幸せ。究極の夢が叶った瞬間でした(笑)
でも、悩んだのは、その食べ方。一気に食べるべきか、少しずつ大切に食べるべきか。究極の夢が叶ったあとに待っていたのは、究極の選択でした。
結局どうしたか。悩んだ挙句、毎日少しずつ切り取って、3日くらいかけて大事に大事に食べ切りました。実に満足度の高い誕生日プレゼントでした。
今の自分だったらどうするかな。そもそも何でも「大人買い」ができるようになると、こういう「気持ちの贅沢」みたいなことが減ってきますね。いいような悪いような、です。
でも、アップルパイを丸々一枚、というのは、いまだにやってみたいです。メタボにはなりたくないので、現実的にはできませんが。