「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ

東日本大震災11年
寺田 早輪子
(2022/03/10)


今日からの「アナ・ログ」新たなタイトルは『東日本大震災11年』です。
「日常」は当たり前のことではない…と思い知らされたあの日からもう11年が経ちます。あれから県内各地で様々な「震災当日の体験」と「震災後」のお話を伺いました。

3月11日。テレビでは犠牲になった方々の人数を振り返ります。私はその人数が記された原稿を伝えるたび、「それぞれに家族がいて、友人がいて…」ということに思いを巡らせます。記された人数の何倍もの人々が、大切な存在を失い、一通りではない思いを抱いて、震災後を過ごしているということを、普段の取材を通して痛感しているからです。

11年が経って、やっとお話を伺える方もいらっしゃいます。
新たに出会い、初めてうかがうお話もたくさんあるのです。

先日、石巻市内での取材帰りに鮮やかな黄色がとても印象的なキッチンカーを住宅街で発見。そばで荷物を運び出していたご高齢の男性に声をかけ、お話しをさせていただきました。男性は70代。元々、市内でラーメン店を経営していたのですが、津波火災で店を失い、手を繋いで一緒に避難しようとしていた妻が津波に巻き込まれ、いまだ行方不明であるとお話してくださいました。

「もしかしてな…、もしかしてな…」
改めてインタビュー取材をさせていただいた時、男性が繰り返し繰り返しつぶやいた言葉です。
「もしかして、あの時、手を離さなければ…」「もしかして、今もどこかで無事なのでは…」
いろいろな思いの詰まった言葉だと受け止めました。

震災11年。誰にとっても心の区切りはつきません。
新たな思いに触れるたび、伝え続けることの意義を深く噛みしめています。
つらい体験を「忘れてほしくない」という気持ちから、懸命にお話してくださった皆様の思いを、これからもつなげるために。

☆写真は…、黄色のキッチンカーの前で。ご紹介したエピソードはあさって12日(土)「ともに」で放送します。
続いては、佐藤拓雄アナウンサーです。


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