「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ

人生最大の「激走」
佐藤 拓雄
(2024/10/31)


【写真】は、2019年の全日本大学女子駅伝。仙台を走る駅伝を、仙台国際センター前の沿道で応援しました。トップを行く名城大学の「激走」です。今年は名城大学の連覇が途切れましたね。

さて、私は人生の中で、あまり「激走」をした覚えがありませんが・・・実に恥ずかしい激走エピソードを書きます。

入社2年目か3年目ごろ、1990年代のことです。
楽天イーグルスが誕生するはるか以前、「プロ野球ニュース」というフジテレビの深夜の番組がありました。
番組は、地方でプロ野球の試合があると、球団のない地区でも、その地域のアナウンサーが、解説者とともに試合を伝える仕組みでした。

そんななか、山形でプロ野球の試合があり、仙台放送が出張して、現地でナイターの結果を伝えました。解説者は、レジェンド級の元プロ野球選手。
放送が無事終わり、では打ち上げに、と皆で繰り出しましたが、放送が終わってからですので、既に日付は変わっています。

1軒目、レジェンドのお話を拝聴し、こんな方から話が聞けるなんて、いやあ本当にありがたい、勉強になる、と至福の時間を過ごしました。レジェンドも絶口調で、「よしもう1軒!」となるわけですが、実は翌日(もはや日付変わって当日ですが)、私たち仙台放送のスタッフは、全員別の仕事で宮城に戻り、現場に直行という予定でした。出発は確か朝7時だったと記憶しています。
ですので、「いやすみません、実はあす朝早いのでこのへんで・・・」と切り出したところ、「何言ってんだ佐藤君、大丈夫、寝なきゃいいんだよ」との頼もしいお言葉。若気の至りで「それもそうだな」と納得したのが運の尽きでした。

もはやどんな展開かお分かりですよね。

2軒目も楽しく時は過ぎ、もはや明け方。朝日を見ながらホテルに戻り、レジェンドのアドバイス通り、寝ないで出発を待つことにしました。寝なければいいのだ!と座っていましたが、やはり、時間とともに少々疲れが。出発まであと1時間ちょっと・・・横になるくらいいいだろう、目をしっかり開けて、寝ないんだから。
・・・タイムマシンがあったら、その自分に喝を入れに戻りたいですね。絶対に横になってはいけない!!と。

自分の感覚では、数秒後。突然部屋の電話が鳴りました。携帯電話も持っていない時代、ホテルの部屋の内線電話です。
何だか分からず、電話に出ると、「拓ちゃーん、みんな待ってるぞー」という先輩Dの低い声。
「△●◇※☆\Ψ??!!!!」
一瞬で何が起きたのかを把握し、頭からサーッと血が引いていくのが分かりました。出発時刻はとっくに過ぎています。
そこから一体どのくらいのスピードで部屋を飛び出し、皆の待つバスまで行ったのか。正確には分かりませんが、これほどのスピードで出かけたことは、人生、後にも先にもありません。

しかし、その「大激走」は、もはやほとんど意味はありません。
バスに乗り、「すみませんっ!!!!」と頭を下げたものの、乗っている全員から一斉に冷たい視線。当然です。
移動中も誰一人喋らない。「針の筵」とはこのことでした。

本当に情けない話です。
もちろん、レジェンドのせいではありません。
全て私がダメなだけなのですが、一つ教訓があるとすれば、こういう時は「寝なければいい」ということですね。違う違う!

そうではなくて、コンディションをちゃんと整えましょう、ということですね。
翌日早いのに、遅くまで飲んではいけないのです。

でもこの時は、今考えても、かなり無理のあるきつい日程でしたけどね。


明日は、伊藤瞳アナウンサーです。

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