「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ
今年の夏の思い出
佐藤 拓雄
(2025/09/12)
何回か前のこのアナ・ログに書いたように、16歳のトランペット奏者・児玉隼人さんのリサイタルに行ってきました。
素晴らしかった。堪能しました。アンコールの「トランペットラブレター」、心に沁みたなあ・・・
【写真】は終演後張り出されたアンコール曲目です。
そしてこの夏は、伊坂幸太郎の新刊を2冊読みました。いつものように、発売と同時に買っても、細切れ読書になったらもったいないので、あえてすぐには読まず、自分の中でのタイミングを待って味わいました。
その1冊、短編集「パズルと天気」には、かなり以前の作品も収録されていましたが、私にとってはすべて未読の「新作」。
私は伊坂幸太郎作品は全て読んでいますが、単行本でしか読まないので、雑誌掲載やアンソロジーの一編のようなものは、過去の作品でも「チェック漏れ」があるわけです。しかしそれは、未読の作品を読めるということであり、うれしい限りです。
「パズルと天気」は、どちらかと言うと、伊坂さん自身が言う「物騒な話」ではない短編で構成されていますが、改めて感じたのは、伊坂幸太郎作品のバリエーションの豊かさ。
伊坂作品は、大きく括れば、「物騒な話」と「物騒ではない話」、「SFっぽいもの」と「そうでないもの」などというように、いくつかの系統に分けられるかもしれませんが、それにしても本当にいろいろな作品があります。そして、そのどれをとっても、私には「伊坂幸太郎らしい」と感じられます。バリエーション豊富なのに、作風が安定しているというのか、絶対に期待を裏切りません。
急に話が変わりますが、以前、元メジャーリーガー・イチロー選手の全安打を一挙に見せてくれる番組がありました。確か、当時3000安打を達成して、それをすべて見せるという、壮大かつマニアックな番組でした。試合ではなく、ひたすらイチローのヒット映像が続いていくのですが、これが非常に面白かった。
見ていくうちに感じたのが、実にいろいろなヒットがあるのに、そのどれもが「イチローらしい」ということ。内野安打も、外野を深々と破る長打も、ポテンヒットも、セーフティーバントも。どれを見ても、「イチローだなあ」と。
つまり何が言いたいかと言うと、一流と言うのはそういうことで、何をやってもその人らしくなるということなのかもしれず、伊坂作品もそれに通じるものがあると、私が勝手に思っているということです。
児玉隼人さんの音色と伊坂幸太郎作品を堪能し、イチロー選手に思いを馳せた夏でした。
このテーマは私が最後でした。
次回からは新たなテーマで、飯田さんから始まります。