「アナ・ログ」
アナウンサーリレーエッセイ
私のイチおし・読書編
寺田 早輪子
(2008/11/10)
向田邦子さんの作品が、大好きです。文章のリズム、知的なユーモア…。向田さんのように、読んだ人が温かい気持ちになり、何年経っても心に残る文章を書ける女性になりたいと感じます。
『阿修羅のごとく』、『思い出トランプ』、好きな作品をあげれば切りがありません。
中でも、何度読み返しても心が締め付けられるのが、『眠る盃』の中の「字のない葉書」。
終戦の年、向田さんの、当時小学1年生の妹が学童疎開する際の話です。まだ、字が書けなかった妹に、「元気な日はマルを書き、毎日、一枚ずつポストに入れなさい」と、葉書の束をリュックサック入れて持たせた父親。
始めは、大マルで届いた葉書も、次の日には、バツに…。
三月目に、帰ってきた妹の肩を抱き、声を上げて泣いた父親。
家族愛を描いた映画などを観て、胸が締め付けられることもありますが、恋人を、家族を、愛おしいと思う瞬間は、日常にこそあると感じる作品です。
家族に「大事に思っている」ということを伝えるのは、恥ずかしかったり、照れくさかったり…。母に、大きなマルを書いた葉書を、送ってみようかしら…(^▽^)
今回の写真は、おでん屋さんでの一枚。おでんが美味しい季節になりましたね。
さて、ネクストバッターは、今度、一緒におでんを食べに行く早坂アナです。