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【信頼をめぐる謎】第4回 人はどうやって他人を信頼することを学ぶのか?

2015/06/25 10:00


第1回のコラムでお話ししたように、人は他人を信頼しなければ生きていけません。


一方で詐欺師を信頼して騙されることを避けなければなりません。どうすれば、詐欺師と普通の人を見極めて、他人を信頼できるようになるのでしょうか。


1つのヒントは日本人とアメリカ人の比較です。


さまざまな調査でアメリカ人の方が日本人よりも他人を信頼する傾向があることが分かっています。


なぜでしょうか。


1つの解答は、アメリカ社会の方がいろいろな面で日本社会よりも開放的で、アメリカ人は他人と出会う機会がたくさんあり、その機会を通じて他人を信頼することを学ぶ、というものです。


ただし条件があります。大都市のようなさまざまな人々が行き来するような場所では、詐欺師に騙される可能性が大です。一方で、誰も外から人が来ないような山奥の小さな村では他人と付き合う機会がありません。


適度に人々が交流する場が必要です。


趣味のサークルやスポーツクラブが典型例です。スポーツクラブのメンバーは、家族のような親密な関係ではなく職場の同僚のような互いによく知っている関係でもありません。また新しいメンバーが入ってきたりします。このようなクラブで、なかば他人だけれど少しは知っている人を信頼することを学ぶことで、クラブの外で出会うまったくの他人の信頼性を見極め、他人を信頼できるようになるでしょう。


社会学ではこのクラブのような集団を中間集団と呼びますが、あるていどメンバーの出入りのある中間集団は人々が他人を信頼することを学ぶ学校だと言えるでしょう。



次回は「第5回 信頼のすすめ」です。

配信日程:6月26日(金)午前10時ごろ配信予定



【プロフィール】

佐藤 嘉倫

東北大学大学院文学研究科教授

合理的選択理論の視点から、信頼や社会的不平等の解明に取り組んでいる。

編著に『ソーシャル・キャピタルと格差社会』(東京大学出版会、2014年)がある。

趣味 ジャズ鑑賞、ギター、料理、スキー