- 【結晶は生きている(動画あり)】第1回 100万年かけて成長した巨大結晶
- 【結晶は生きている(動画あり)】第2回 天からの手紙
- 【結晶は生きている(動画あり)】第4回 きれいな氷をつくろう
- 【結晶は生きている(動画あり)】第5回 地球の常識、宇宙の常識
【結晶は生きている(動画あり)】第3回 無重力の世界
2015/07/08 10:00
重いものは下に沈み軽いものは浮く。
これは地上での常識。そのため、結晶が水溶液から成長すると、その周りの溶液が軽くなり対流が発生する。
煙のように見えるこの対流はフラフラすると結晶の成長速度も変動し結晶の品質にもムラが出来る。(資料(1))。
しかし、無重力の世界で重さがないために、それに隠されて見えなかった現象が見えてくる。その一つとして、身近な生活にも係わる水の“ぬれ”に関する疑問があった。著者は国際宇宙ステーションなどの無重力環境をつかって、結晶の成長の仕方調べてきた。そこでも“ぬれ”は結晶の成長に大きな影響を与える。その研究の途中に仙台市の中高生と一緒に飛行機を使った無重力実験をおこなう機会があり、彼らなりに“ぬれ”をどうとらえるかを知りたかった。
まず、無重力をどのようにつくるか?
ここでは飛行機を使った実験を紹介しよう。飛行機をうまく操縦して、投げたボールが描くような放物線にそって飛んでみると、機内で無重力を20秒程度つくることができる。(資料(2))。
そこに仙台市の中高生が乗り込んで実験を行った。その一つが“無重力でぬれたタオルを絞ることができるのか?”というのが彼らの疑問。
早速、無重力をつくってぬれたタオルを絞ってもらった。(ビデオ)。
果たして、水は?
大方の予想は、しぼった水は四方八方に飛んで浮かぶ。(資料(3))。
試してみると絞った水は、飛び散らないで手に厚くまとわりつき腕のほうに上がってきた。(資料(4))。
絞りをゆるめると元のタオルに吸い取られていく。つまり水の重さがなくなるので、手と“ぬれ”性のよい水がたっぷりまとわりつくのである。実験後、その生徒が述懐。“そういえば、手にまとわりついた水は生温く冷たくなかった”。“なぜだろう?”
空気の流れがあると手についた生温い水は早く蒸発する。そのときに手から熱を奪うから冷たく感じる。
しかし重さのない世界では、体温で手の表面から蒸発した軽い温かい水蒸気は、対流を生じないので手のまわりに漂うだけである。ちょうど布団をかけると暖かいのと同じ理屈だ。
次の話は、この熱の話である。
次回は「第4回 きれいな氷をつくろう」です。
配信日程:7月9日(木)午前10時ごろ配信予定
【プロフィール】
塚本勝男
大阪大学大学院工学研究科特任教授
結晶の成長プロセスを分子レベルで光学的に観察するのが得意。無重力での結晶成長研究に精通。2013年には結晶成長の基礎研究に対して日本人として初めてフランク賞を受賞。趣味は音楽鑑賞、海外旅行、温泉巡り。