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【知って納得! くり返し発生する地震の謎】 第3回 アスペリティとくり返し地震
2015/07/22 10:00
釜石沖の地震の研究などから、くり返し地震が起きる決まった場所というものが存在することがわかりました。
最近の研究で、「地震を起こす決まった場所」は実際には、地震を起こす断層の中の引っかかりやすい場所ということがわかってきました。
このことをもう少し詳しく説明します。
地球の中が動こうとする力で、断層が急激にすべるものが地震であるという話を前回しました。東北地方では、太平洋プレートとその上の陸のプレートの間のプレート境界が巨大な断層で、太平洋プレートは年間8cmくらいの速さで動こうとしています。
断層を挟んだ両側のプレートが少しずつ動こうとするときに、断層の中には、引っかかっている場所とずるずるすべっている場所があると、考えられます。下の図は、巨大な断層である東北沖のプレート境界のひっかかり(アスペリティといいます)の分布を模式的にしめしたものです。
ひっかかりの原因としては、プレートのでこぼこなどが考えられています。図で薄い灰色の場所は、プレートが動こうとする力を受け流してずるずるとすべっている場所、濃い灰色の場所は、がんばって引っかかっているアスペリティになります。
そして、アスペリティが地震を起こす決まった場所の原因と言えます。つまり釜石沖の地震のようなくり返す不思議な地震は、このような小さなひっかかりがまわりのゆっくりとしたすべりに耐え切れなくなって急激にすべることにより起こると考えられます。
また、基本的に大きなアスペリティほど長い間がんばって、最後に大きな地震を起こすことになります。
普段、地震が起こると不安になりますが、引っかかっている場所は、永遠にがんばってすべらないわけにはいけませんので、小さい地震でよかったということもできるかもしれません。
次回は「第4回 プレート境界の地図を作る」です。
配信日程:7月23日(木)午前10時ごろ配信予定
[豆知識]ちょっと詳しい地震の情報を得るには?
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防災科学技術研究所
日本地震学会
【プロフィール】
内田 直希 (うちだ なおき)
東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター助教
長期間にわたる地震の観測データから、沈み込み帯の地震発生メカニズムの解明に取り組んでいる。
最近の著作物に『繰り返し発生する地震の規模はどのように決まるのか」(地震本部ニュース, 7巻第3号, 2015)、『特集 東北地方太平洋沖地震から3年 発生前に起きていたスロースリップ」(なゐふる, 97号, 2014)など。
趣味 自然鑑賞、温泉、陶芸、読書