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【知って納得! くり返し発生する地震の謎(動画あり)】 第4回 プレート境界の地図を作る

2015/07/23 10:00

↑タイトルカバーを押すと動画が再生されます


実は繰り返し地震から断層の動きを知ることができます。


前回、小さなくり返し地震は、断層面の中にひっかかっている場所があり、そのまわりのゆっくりとしたすべりで起こるという話をしました。


このことから逆に、小さいくり返し地震があるということは、まわりにゆっくりとしたすべりがあるということを意味しています。つまり、くり返し地震の分布から、ゆっくりとしたすべりが起きている場所とそこでの動きを捉えることができるのです。


それでは、実際、くり返し地震はどのように分布しているのでしょうか?

表題の動画は、くり返し地震の分布を、関東から北海道まで、移動しながら上空から眺めたものです。桃色がくり返し地震の位置、緑色は東北地方太平洋沖地震のときのすべり量になります。水色は沈み込む太平洋プレートになります。


宮城県の沖合の2011年に起きた東北地方太平洋沖地震の時に大きくすべった場所は、小さいくり返し地震が少ないことがわかります。くり返し地震はゆっくりとしたすべりを示していることから、ゆっくりとしたすべりがあまりなかったところで東北沖地震が起きたことがわかりました。


ゆっくりとしたすべりがあると地震を起こす力はあまり溜まっていきません。東北沖地震のすべり域は、大きなひっかかりがあってずっとがんばって力をためていた場所、くり返し地震が発生している場所は、小さなひっかかりしかなく、プレートの動きを受け流してずるずるとすべっていた場所というふうに言えます。


くり返し地震はいわば、ゆっくりすべる/急激にすべるというプレート境界のすべりの性質の地図を作る作業に使えると考えられます。そのような“地図”ができれば、将来的にどこにどれくらいの規模の地震が起きそうかという予測にも使うことができると考えられます。

この“地図”の中で宮城県沖地震の起きてきた場所は、東北沖地震にくらべれば、面積が小さいひっかかり(急激にすべる場所)ということができます。


ではこの先、宮城県沖地震はいつ起きるのでしょうか?


いままでより短い間隔で起きるのでしょうか?それとも当分起きないのでしょうか?これについては、宮城県沖地震が起きる場所が東北沖地震の際、どれくらいすべったのか、そしてその周りで、現在どれくらいすべっているのか?など未解明の課題が多くあり、たくさんの研究者がこの問題に取り組んでいますが、まだ明快な答えは出ていません。


明日の最終回は、くり返す地震の性質について2011年の東北沖の地震があってはじめてわかったことについてお話しします。



次回は「第5回 予知ができる地震〜その後」です。

配信日程:7月24日(金)午前10時ごろ配信予定



[豆知識]ちょっと詳しい地震の情報を得るには?

本Webアプリの地震・災害・気象のページのほか、下記のページでも最新の地震の状況や地震に関す知識を得ることができます。


●地震の活動状況(気象庁):最新の地震情報

http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/index.html


●防災地震web(防災科学技術研究所):最新の地震情報

http://www.seis.bosai.go.jp


●J-RISQ地震速報(防災科学技術研究所):市区町村ごとの揺れの状況など

http://www.j-risq.bosai.go.jp/report/


●地震に関するFAQ(日本地震学会):地震に関するよくある質問と回答

http://www.zisin.jp/modules/pico/index.php?cat_id=6




気象庁

http://www.jma.go.jp/jma/index.html


防災科学技術研究所

http://www.bosai.go.jp


日本地震学会

http://www.zisin.jp



【プロフィール】

内田 直希 (うちだ なおき)

東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター助教

長期間にわたる地震の観測データから、沈み込み帯の地震発生メカニズムの解明に取り組んでいる。

最近の著作物に『繰り返し発生する地震の規模はどのように決まるのか」(地震本部ニュース, 7巻第3号, 2015)、『特集 東北地方太平洋沖地震から3年 発生前に起きていたスロースリップ」(なゐふる, 97号, 2014)など。

趣味 自然鑑賞、温泉、陶芸、読書