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【存続の危機!東北地方の郷土芸能をデジタルで救え!(動画あり)】 第1回 最新のテクノロジーで郷土芸能を保存する
2015/08/31 10:00
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東北地方に古くから伝わる郷土芸能が今、存続の危機に瀕しています。さらに、2011年に発生した東日本大震災により、その危機は一段と深刻なものになっています。
私たちは2002年から最先端のモーションキャプチャ・システムと3DCGを組み合わせて活用することにより「伝統芸能デジタル化プロジェクト」を行っています(共同研究者:東北大学大学院教育情報学研究部 佐藤克美准教授)。このシリーズでは、その研究成果を紹介します。
モーションキャプチャは人体(動物)の動きを丸ごと計測する最先端のデジタルテクノロジーで、ゲームや映画では非常によく用いられています。ゲームや映画のなかで、リアルで滑らかな動きをするCGキャラクターは、このモーションキャプチャを使って計測した実際の人間の動きをもとに作られたものが多くあります。
人の動きを直接計測しリアルに再現できることから、私たちは存続の危機に瀕している伝統芸能(民俗芸能・郷土芸能)の保存や継承支援に役立つのではないかと考え、プロジェクトを開始しました。
モーションキャプチャでは身体にセンサーやマーカーをつけてその動きを計測しますが、その技術の発展には目を見張るものがあります。プロジェクト開始当初、私たちは「磁気式モーションキャプチャ」を使用していました。磁気式モーションキャプチャは、身体に磁気センサーを取り付け、磁場を発生させた空間のなかでそのセンサーの位置・回転情報を計測するというシステムです。この磁気式モーションキャプチャでは、郷土芸能の衣装を着たままでも計測できるというメリットがありました(写真1)
一方、磁気式モーションキャプチャの弱点は、専用のスタジオで計測する必要があるという点です。磁気発生装置やコンピュータに囲まれた無味乾燥な空間で踊ってもらう必要があり、継承者の気持ちがお祭りの時とは大きく異なっていることに、私たちも気づいていました。
しかし最近、私たちは「慣性センサー式モーションキャプチャ」という最先端のシステムを活用することができるようになりました。これは、磁気センサーの代わりに慣性センサーを体に取り付けることで身体の動きを計測します。慣性センサーは非常に小型化され携帯電話やスマートフォンなどにも使われているセンサーです。スタジオを飛び出しどこにでも簡単に持って行けるというこの「慣性センサー式モーションキャプチャ」の特長を活かし、私たちは現在、東日本大震災で被災した地域に伝わる郷土芸能の保存・継承支援
を行っています(写真2、3、4)。
参考書籍:(1)渡部信一編著(2007)『日本の「わざ」をデジタルで伝える』 大修館書店 (2)渡部信一(2012)『超デジタル時代の「学び」─よいかげんな知の復権をめざして』 新曜社
次回は「第2回 被災地・大船渡の郷土芸能をデジタルで支援する」です。
配信日程:9月1日(火)午前10時ごろ配信予定
【プロフィール】
渡部信一(わたべ しんいち)
1957年仙台市生まれ。東北大学教育学部卒業。東北大学大学院教育学研究科博士課程前期修了。博士(教育学)。東北大学大学院教育学研究科助教授などを経て、現在、東北大学大学院教育情報学研究部教授。
主な著書に、『日本の「学び」と大学教育』(ナカニシヤ出版)、『ロボット化する子どもたち─「学び」の認知科学─』(大修館書店)、『超デジタル時代の「学び」─よいかげんな知の復権をめざして─』(新曜社)、編著書に『日本の「わざ」をデジタルで伝える』(大修館書店)、『「学び」の認知科学事典』(大修館書店)などがある。