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【存続の危機!東北地方の郷土芸能をデジタルで救え!(動画あり)】 第2回 被災地・大船渡の郷土芸能をデジタルで支援する

2015/09/01 10:00

↑上のタイトルを押すと動画が再生されます。


東北地方に古くから伝わる郷土芸能の保存・継承支援を行うため、私たちは2002年から最先端のモーションキャプチャ・システムと3DCGを組み合わせて活用することにより「伝統芸能デジタル化プロジェクト」を行っています(共同研究者:東北大学大学院教育情報学研究部 佐藤克美准教授)。


プロジェクトが一定の成果を収め、次の段階に進もうとしていた2011年3月、東日本大震災が発生しました。津波により三陸地方は大きな被害を受けましたが、特に人口約4万人の大船渡市は、浸水範囲内人口1万9千人、死者340人、行方不明者81人と非常に大きな被害でした。大船渡港沿岸には臨海型の多くの工場や事業所が立地していましたが、全域が浸水しました。また、大船渡駅の駅舎や線路が流出し、駅東側に形成されていた商店街が壊滅的な被害を受けました。


同様に、大船渡で継承されてきた「浦浜念仏剣舞」もその詰所(練習場所)が津波で流され、壊滅的な被害を受けました。そのような状況のなかで、浦浜念仏剣舞の継承者たちは震災で亡くなった方々の供養のためいち早く活動を再開し、鎮魂を祈って剣舞を舞ったと言います(写真1、2、3)。








それを知った日本各地の郷土芸能を愛する人たちから、衣装や面、笛や太鼓が大船渡に届けられました。しかし、その多くは「有形」のものにする支援であり、継承者ご自身が被害に遭われたり、伝統を受け継ぐ若者が地域から流出してしまうなど、「無形」の側面に対する支援の難しさが指摘されていました。そこで私たちは「慣性センサー式モーションキャプチャ」を大船渡に持ち込み、「浦浜念仏剣舞」などの郷土芸能の保存と継承支援を開始しました(写真4、5)。






「慣性センサー式モーションキャプチャ」はスタジオや大がかりなシステムを必要とせず、センサーが埋め込まれたスーツを着て踊ってもらえば、すぐに動きのデータがコンピュータに保存することができます。そのデータをもとに3DCGアニメーションによる「継

承のための教材」を作成すれば若い人たちへの継承にも役に立ちます。

私たちは現在も引き続き、東日本大震災で被災した地域に伝わる郷土芸能の保存・継承支援を行っています。


(本シリーズの第4回では福島飯館村での活動を紹介します)。

参考書籍:(1)渡部信一編著(2007)『日本の「わざ」をデジタルで伝える』 大修館書店 (2)渡部信一(2012)『超デジタル時代の「学び」─よいかげんな知の復権をめざして』 新曜社



次回は「第3回モーションキャプチャで郷土芸能を若者に伝える」です。

配信日程:9月2日(水)午前10時ごろ配信予定



【プロフィール】

渡部信一(わたべ しんいち)

1957年仙台市生まれ。東北大学教育学部卒業。東北大学大学院教育学研究科博士課程前期修了。博士(教育学)。東北大学大学院教育学研究科助教授などを経て、現在、東北大学大学院教育情報学研究部教授。

主な著書に、『日本の「学び」と大学教育』(ナカニシヤ出版)、『ロボット化する子どもたち─「学び」の認知科学─』(大修館書店)、『超デジタル時代の「学び」─よいかげんな知の復権をめざして─』(新曜社)、編著書に『日本の「わざ」をデジタルで伝える』(大修館書店)、『「学び」の認知科学事典』(大修館書店)などがある。

ホームページ http://www.ei.tohoku.ac.jp/watabe/