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【存続の危機!東北地方の郷土芸能をデジタルで救え!(動画あり)】 第4回 郷土芸能継承者を元気づける:福島飯館村

2015/09/03 10:00

↑上のタイトルを押すと動画が再生されます。


東北地方に古くから伝わる郷土芸能の保存・継承支援を行うため、私たちは2002年から最先端のモーションキャプチャ・システムと3DCGを組み合わせて活用することにより「伝統芸能デジタル化プロジェクト」を行ってきました(共同研究者:東北大学大学院教育情報学研究部 佐藤克美准教授)。


私たちは現在、このプロジェクトの目的は2つに分けられると感じています。第1に、デジタルテクノロジーによって郷土芸能のデータを正確に記録・保存するという目的です。正確なデータを保存しておけば、もし万一その芸能がいったんは継承されなくなったとしても、将来復活させることが可能になると考えられます。


第2の目的は、いま存在している継承者を支援していくことです。これまで私たちは様々な視点から継承を支援してきましたが、そのひとつとして「継承者の情熱を高める」ということがとても重要であることに気づいています。


取り組みの例として、福島県飯館村に伝わる「小宮の田植踊」について紹介します。飯舘村小宮地区に住んでいた人々は、現在も震災による原発事故の影響により他の地域で生活をしています。そのため震災以降、田植踊が踊られることはありませんでした。


しかし、2014年に北海道で行われた民俗芸能大会に福島県代表として参加することになり、久しぶりにメンバーが集まり田植踊が披露されました。田植踊の師匠は、「参加するからにはみんなで頑張ろうと一致団結した」と言います。大会に参加することが継承者の情熱を高めた、といえます。


さて、私たちは「小宮の田植踊」をモーションキャプチャで記録し、スマートフォン等で見ることのできるARコンテンツを作製しようと作業を進めています。ARとは「拡張現実」のことで、例えば「市民便り」などに印刷されたマーカーをスマートフォンで読み取ると、スマートフォンの上で「小宮の田植踊」の映像が立体的に見ることができる技術です。とてもリアリティがある映像を見ることが出来、見る人の興味を強く引きつけます。


ARコンテンツのサンプルを田植踊のメンバーに見てもらったところ、「このように注目

してもらえるとやる気も出るし、これからも頑張ろうという気持ちにもなる」と話してくれました(写真1、2、3)。








ARコンテンツの作成自体が継承者の情熱を高めることにもつながり、郷土芸能が失われていくことを防ぐことができると、いま私たちは考えています。



次回は「第5回 テクノロジーで継承者の「思い」を伝える」です。

配信日程:9月4日(金)午前10時ごろ配信予定



【プロフィール】

渡部信一(わたべ しんいち)

1957年仙台市生まれ。東北大学教育学部卒業。東北大学大学院教育学研究科博士課程前期修了。博士(教育学)。東北大学大学院教育学研究科助教授などを経て、現在、東北大学大学院教育情報学研究部教授。

主な著書に、『日本の「学び」と大学教育』(ナカニシヤ出版)、『ロボット化する子どもたち─「学び」の認知科学─』(大修館書店)、『超デジタル時代の「学び」─よいかげんな知の復権をめざして─』(新曜社)、編著書に『日本の「わざ」をデジタルで伝える』(大修館書店)、『「学び」の認知科学事典』(大修館書店)などがある。

ホームページ

http://www.ei.tohoku.ac.jp/watabe/