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【存続の危機!東北地方の郷土芸能をデジタルで救え!(動画あり)】 第5回 テクノロジーで継承者の「思い」を伝える
2015/09/04 10:00
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東北地方に古くから伝わる郷土芸能の保存・継承支援を行うため、私たちは2002年から最先端のモーションキャプチャ・システムと3DCGを組み合わせて活用することにより「伝統芸能デジタル化プロジェクト」を行ってきました(共同研究者:東北大学大学院教育情報学研究部 佐藤克美准教授)。
このプロジェクトの中心にあるのは、最先端のモーションキャプチャ・システムと3DCGというデジタルテクノロジーであり、「郷土芸能」という身体を使った「踊り」です。しかし私たちは、郷土芸能の継承を支援しようと考えたとき、踊りの「動き」だけに注目するのでは不十分であることを非常に強く感じてきました。
実際、本シリーズの第1回で紹介した八戸法霊神楽の師匠は、「長い伝統のなかで実際に伝えられてきたものは、神楽に関わる人々の『思い』や気持ちだ」と語っています。
そこで、本シリーズの最後に、継承者の「思い」をデジタルテクノロジーで伝えようとした私たちの取組を紹介します。
私たちは、八戸法霊神楽の保存および継承支援において、「踊り」だけではなく継承が行われている神社や神楽殿などの再現にも取り組みました。継承における「場」が重要と考えたからです。建物等は残されていた神社の古い図面を探しだし3DCGで再現しました
(写真1、2、3)。
しかし、それを見た神楽のメンバーからは、「建物のCGはすばらしいけれど、しめ縄がない。これだと神楽は踊れない」「権現様(獅子頭)が置物っぽい。本当は、これが一番大切なんだ」という厳しい修正のコメントをいただきました。私たちは、神楽に関わる人々の「思い」や気持ちを非常に強く感じました(写真4)。
私たちは、最先端のモーションキャプチャ・システムと3DCGを組み合わせて活用して身体の動きを直接計測しリアルに再現することにより、存続の危機に瀕している伝統芸能(民俗芸能・郷土芸能)の保存や継承支援を続けてきました。さらに将来、デジタルテクノロジーが発展すれば、より正確に、そしてより精密に身体の動きを計測し保存することが可能になることは疑いありません。
しかし、それで郷土芸能を継承しようとしている人々の「思い」が伝わらないのであれば、それは単なるデータの記録にすぎません。デジタルテクノロジーを上手く利用し、継承者の「思い」や気持ちを伝えるよう工夫を開発し続けることが非常に大切であると今、私たちは強く感じています。
参考書籍:(1)渡部信一編著(2007)『日本の「わざ」をデジタルで伝える』 大修館書店 (2)渡部信一(2012)『超デジタル時代の「学び」─よいかげんな知の復権をめざして』 新曜社
来週は「経済学で読み解くニュースの核」です。
配信日程:9月7日(月)午前10時ごろ配信予定
【プロフィール】
渡部信一(わたべ しんいち)
1957年仙台市生まれ。東北大学教育学部卒業。東北大学大学院教育学研究科博士課程前期修了。博士(教育学)。東北大学大学院教育学研究科助教授などを経て、現在、東北大学大学院教育情報学研究部教授。
主な著書に、『日本の「学び」と大学教育』(ナカニシヤ出版)、『ロボット化する子どもたち─「学び」の認知科学─』(大修館書店)、『超デジタル時代の「学び」─よいかげんな知の復権をめざして─』(新曜社)、編著書に『日本の「わざ」をデジタルで伝える』(大修館書店)、『「学び」の認知科学事典』(大修館書店)などがある。
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