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【宮城県議選の前に読む選挙いま・むかし】第2回 都市化するほど国政選挙への関心が高まる

2015/10/20 10:00

議員を選ぶ選挙には、衆院選、参院選という国政選挙、県議選、市議選(町議・村議選)の地方選挙の4つがあります。相対的に有権者の関心が高いのは、投票率が高いのは、どの選挙でしょうか。


図2の仙台市の場合をご覧ください。仙台市内の有権者に関する集計です。



衆院選と参院選の投票率を比較すると、ほぼ一貫して、衆院選の投票率が参院選を上回っています。参院選の投票率が異例に高かった1980年6月は衆参同日選挙の折でした。


では県議選と市議選の投票率を比較してみましょう。戦後第1回の1947年と、政令市になった1989年以降東日本大震災前までは同日に投票が行われ、投票率もほぼ同一でした。1962年から1987年までは、県議選は統一地方選の前半に行われ、市議選はその2週間後に行われていました。


興味深いのは、1951年から1979年までは遅く行われる仙台市議選の方が、県議選よりも3〜10%ほど投票率が高かったことです。市議選の投票率が0.9ポイント下回っているのは1975年だけです。1983年、87年も県議選の方が高い投票率を示しています。


市議選と衆院選ではどうでしょうか。1947年から1963年までは市議選の方が5〜10%投票率が高い傾向にありました。この頃、東京オリンピックの頃までは仙台市も、身近な選挙、小さな選挙の方が投票率が高い、農村型の傾向にあったのです。


1967年以降は市議選の投票率の相対的な低下が目立ち、衆院選の方が投票率が一貫して高い傾向にあります。仙台市は都市型の選挙区の特徴を示すようになりました。転入者が増え、都市化が進んだことと対応しています。


有権者は、大きな選挙である国政選挙をより重視するようになってきたのです。都市化するほど、身近な選挙への関心が低下するということでもあります。


しかしいずれの選挙でも、長期的な低下傾向は否めません。それは投票に関する義務的な感覚が薄れてきたこと、政治的な有効性感覚が低下してきたことを示しています。


残念ながら、投票率低下傾向に対する効果的な歯止めは見当たらないのが世界的な現状です。



次回は「第3回 女性票を制すものは選挙を制す?」です。

配信日程:10月21日(水)午前10時ごろ配信予定



【プロフィール】

長谷川 公一(はせがわ こういち)

東北大学大学院文学研究科社会学専攻分野教授


市民社会論や環境社会学、政治社会学、社会運動などを主に研究しています。投票は有権者にとって貴重な政治参加の機会です。選挙権を持つようになって40年あまり、海外出張中を除いて、棄権は1度もありません。

趣味:俳句。句集に『緑雨』(りょくう)があります。時雨、白雨、紅雨など、日本語ほど、雨に関して繊細で豊かな言葉をもつ言語はありません。