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【宮城県議選の前に読む選挙いま・むかし】第4回 デモは選挙を変えるのか?
2015/10/22 10:00
2012年夏には、毎週金曜夜の「官邸前デモ」と呼ばれる反原発デモが高揚しました。2015年夏には、安保法制をめぐって国会周辺で「反安保デモ」が連日繰りひろげられました。これらのデモは、全国の地方都市にもひろがりました。
日本は国際的に見てもデモの参加者数が少なく、デモに参加した経験のある人の割合もわずか3.6%にとどまる(2010年)というおとなしい国民です(図4参照)。例えばドイツの場合にはデモの参加経験者は21.1%にものぼります。しかし福島原発事故後、日本でも重要な政治的出来事に対して、街頭行動で政治的な意思表示をするというトレンドが顕著になってきました。
非暴力的なデモが整然と行われ、後片付けもきちんと行われています。「サウンドデモ」と呼ばれるように、楽器や鳴り物の活用も目立っています。
各種の世論調査でも、福島原発事故を契機に、原子力政策の転換を求める世論が支配的です。安保法案についても、世論調査では批判的な意見が支配的です。
問題は、このようなデモの高揚や批判的な世論が投票行動にどの程度の影響を与えるのか、という点にあります。
2012年12月の衆院選では、日本の総選挙ではじめて原発政策が争点の1つとなったにもかかわらず、原発政策について明確な意思表示を避けた自民党と公明党が勝利し、安倍政権が誕生しました。
2013年7月の参院選、2014年12月の衆院選でも、自民党・公明党が勝利しました。
野党が多党化していること、民主党政権への失望感と、批判票の明確な受け皿がないために棄権が増え、低投票率が与党を助ける構図になっています。
しかし2015年8月3日に投開票された仙台市議選では、5つの選挙区のうち、3つの選挙区で共産党の候補がトップ当選し、もう1つの選挙区でも民主党候補がトップ当選するという興味深い異例の結果となり、全国的に注目されました。
有権者は景気や経済問題に敏感で、エネルギー政策や安保・防衛政策は一般に票に結びつきにくいという傾向があります。
1960年安保闘争が高揚し、政治的混乱の責任を取って、改定された日米安保条約の成立と引き換えに、7月岸信介首相(安倍晋三の祖父)は退陣します。次の池田隼人首相は所得倍増政策を掲げ、11月の総選挙に勝利しました。安保闘争の高揚は5ヶ月後の総選挙結果には結びつきませんでしたが、その後の自民党政権は改憲問題を本格的に取り上げることを避けるようになります。
日本は高度経済成長路線を歩み、自民党の長期政権が続くことになりました。この総選挙は、戦後日本の政治と社会の大きな転換点となったのです。
2016年7月の参院選もまた、どのような結果になるにせよ、今後の日本政治の基本的な路線を規定する大きな転換点となることでしょう。
次回は「第5回 若者の政治的発言力は60歳代の3分の1」です。
配信日程:10月23日(金)午前10時ごろ配信予定
【プロフィール】
長谷川 公一(はせがわ こういち)
東北大学大学院文学研究科社会学専攻分野教授
市民社会論や環境社会学、政治社会学、社会運動などを主に研究しています。投票は有権者にとって貴重な政治参加の機会です。選挙権を持つようになって40年あまり、海外出張中を除いて、棄権は1度もありません。
趣味:俳句。句集に『緑雨』(りょくう)があります。時雨、白雨、紅雨など、日本語ほど、雨に関して繊細で豊かな言葉をもつ言語はありません。