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【ビッグデータ時代のビジネスと消費者】第2回 現代ビジネスとビッグデータ

2015/10/27 10:00

わが国はビッグデータの活用が欧米の先進諸国と比べて遅れており、その結果、第三次産業のサービス経済において生産性が低いことが指摘されてきました。これに対して、サービスを対象とする学問「サービス科学」の振興が政府主導で行われています。


他方、企業においては、これまで、経営者や店長の経験や勘による判断が行われて来ており、これをエビデンス(証拠)に基づく判断へ移行すべきであるというビジネスの考え方に変わってきています。データ主導型の経営戦略へのシフトです。


実際、米国株式公開330社に対する調査によると「データを重視する企業はそうでない企業よりも業績が良い:“ビッグデータ分析をオペレーションにとり入れた企業は、生産性、収益性で5~6%高い”」という報告がなされています。


企業で行われる業務のほとんどは、いまや電子化されて高速に伝達して蓄積されます。これが企業におけるビッグデータです。例えば、皆さんがスーパーで買い物をしてレジに進むと、商品に付いているバーコードをスキャンしてレジ清算が行われます。これは元来、清算を精確かつスピーディーに行うために考えられたシステムです。しかし、これは、“いつ”、“誰が”、“何を”、“いくらで”、“いくつ”購入したかが、同時に記録されます。この情報は日々蓄積され、企業にとってビッグデータを形成しています。


あるファッションシューズの会社では、全国のチェーン店での売れ筋商品をリアルタイムで観察し、ショーウィンドウの靴を売れ筋商品に入れ替えただけで、客の入りを大幅に増やすことができたことが知られています。これは単にデータを眺めてアクションを取った結果です。


さらに高度な統計処理を行うことで様々な知見が得られる可能性をビッグデータは秘めています。例えば、あるスーパーマーケットでは、購買履歴データを分析して購入商品に応じた他の商品の割引クーポンをレシートとともに発行することで、購買単価が1000円以上上昇した例も知られています。





次回は「第3回 パーソナライゼーション」です。

配信日程:10月28日(水)午前10時ごろ配信予定



【プロフィール】

照井 伸彦(てるい のぶひこ)

・東北大学大学院経済学研究科・教授、同サービス・データ科学研究センター長を兼務

・2012年より情報システム研究機構・統計数理研究所客員教授

・仙台市生まれ、仙台二高卒

・統計学をマーケティングや経済分析へ応用する研究を行っている。最近の著書に「現代マーケティング・リサーチ」(有斐閣)、「Rによるベイズ統計分析」(朝倉書店)などがある。

・日本統計学会賞(2013)、The Tjialling C.Koopmans Econometric Theory Prize (1992)を受賞、日本学術会議連携会員。