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【ビッグデータ時代のビジネスと消費者】第5回 インターネット広告の裏側

2015/10/30 10:00

皆さんは、インターネットで様々なページを検索して情報を集めていると思います。その際、閲覧しているページに企業の広告が魅力的な形で出てくることを経験していると思います。


最近は、動画を用いてテレビ広告よりも見る人を釘付けにする広告も少なくありません。また、皆さんは、表現方法ばかりでなく、広告内容に注意が自然と向くように感じている方も多いと思います。これは偶然ではありません。


これまでにお話ししたパーソナライゼーションのネット広告版が行われているのです。すなわち、皆さんの関心や興味を過去のネット閲覧履歴から分析し、その人の関心をもつものを推測して広告が出されているのです。このインターネット広告費は、2014年に1兆円を超えて、テレビ広告費2兆円に次ぐ広告メディアとなっており、将来的にはこれを抜くと予想されています。


ある検索サイトを開くたびに広告が右側に出されるものがありますが、その際、皆さんがこの広告を見たと判断して、その度に1円が検索サイトに支払われるものもあります。デジタル広告ともいわれるインターネット広告に関するビジネスは大きな市場をもち、あのGoogleも広告業が本業であると明言しています。


テレビ広告と違ってインターネット広告は、顧客がどのサイトの広告を見て購買したかが閲覧履歴情報から正確にとれるために、効果の測定は大きな問題となりません、広告費を出す企業の広告主からすると効果の透明性のある広告媒体です。


そのデジタル広告の裏側では何が行われているのでしょうか。まず、サイトではディスプレイ型の広告スペース(広告枠)が画面のどこかに確保されています。そこに広告を消費者に見てもらい購買してもらいたいと考える複数の広告主がいます。


それを媒介する仲卸業者が、その広告枠を巡り一瞬のうちに入札競争が行われ、最高値を付けた広告主の広告が表示される仕組みとなっています。これが0.1秒のうちに行われる広告リアルタイム入札-リアルタイムビディング(RTB)-です。このとき解析されるのが個人のサイト閲覧履歴情報です。これもビッグデータを分析して新しい価値を生み出すイノベーションです。




○終わりに

ビッグデータの世界は広がり続けています。いまや家電製品の中に高性能のコンピュータや情報発信装置が組み込まれ、製品自体がネットワークにつながっています。


この現象は“モノがネットにつながる”という意味でIoT(Internet of Thing)と呼ばれています。例えば、家のエアコンを外出先からスマートフォンで遠隔操作できたり、家のビデオレコーダーに外出先からネットを通じて録画予約したり、録画した番組を外出先で見たりできるのがその例です。


今後は、身の回りのあらゆるモノ(機器)が情報ネットワークでつながり、それがビッグデータとして記録されていきます。その活用は、このコラムでお話ししたビジネスの分野ばかりでなく、わたしたちの健康や安全、農業や食、わが国の課題である高齢社会の在り方をも変えてゆくことになるでしょう。


第1回でお話ししたように、現代はサービス化した経済の社会です。そこでは、働く人のそれぞれが“知識”を活用して、新しいサービスを創造し、またより良いサービスを提供することを考えねばなりません。


ビッグデータというと、自分とは遠い世界と感じる人も少なくないと思いますが、データを分析するツールも身近になっています。皆さんが使うパソコンのほとんどに入っているソフトウェアExcelを使ってデータの分析ができます。またデータの取得も容易になっています。お店で働く人は、パソコンに記録した日々の売上や客数などのデータを使えば、明日の客数や売上の予測が出来、経営に役立つ情報が取り出せます。


ビッグデータの時代は、このようにデータ分析が身近になった時代でもあります。皆さん一人一人が、データに基づいて考えて問題を解決することで小さなイノベーションを起こし、それを積上げてゆくことが重要で、この意味で、“データ”から知識を得て行動する人の数が“ビッグ“になっていく時代でもあるのです。





次回は「仙台は起業の街になりうるか?」です。

配信日程:11月2日(月)午前10時ごろ配信予定



【プロフィール】

照井 伸彦(てるい のぶひこ)

・東北大学大学院経済学研究科・教授、同サービス・データ科学研究センター長を兼務

・2012年より情報システム研究機構・統計数理研究所客員教授

・仙台市生まれ、仙台二高卒

・統計学をマーケティングや経済分析へ応用する研究を行っている。最近の著書に「現代マーケティング・リサーチ」(有斐閣)、「Rによるベイズ統計分析」(朝倉書店)などがある。

・日本統計学会賞(2013)、The Tjialling C.Koopmans Econometric Theory Prize (1992)を受賞、日本学術会議連携会員。