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【仙台は起業の街になりうるか?】第4回 起業家の集積が集積を生む
2015/11/05 10:00
起業家活動が地域として活発化するためには集積が必要となります。仲間である起業家がたくさんいる場所に起業家は集まりますし、身近な人が起業したとなると自分もやってみようと思う人もでてくるのではないでしょうか。
ニューオーリンズでは、震災後、多数のインキュベーションやコラボレーション・スペースが作られました。起業家や起業予備軍の多くは、このような場所を仕事場所として使います。
その理由としては、そこに行けば起業を志す同じ境遇の仲間が集っており、悩みや不安を共有したり、取引先を紹介したり、場合によっては一緒に仕事をしたり勉強会をすることができるからです。またいくつかの施設には、弁護士や公認会計士など、専門家への相談サービスを提供したりしてくれます。
インキュベーターの中には建物の中にコーヒーショップやスポーツジム、サウナ、バーなども併設しているものもあります。そこでは、仕事の合間にリラックスができるような場も整備されています。
入居企業の中から、ビジネスプランコンテストで賞をもらって注目を受ける企業が出てきたり、大企業に買収されたり、成長して手狭になったため、コラボレーション・スペースを卒業していく企業が出てきます。他方で、そのような企業になることを夢見て、新たな起業家たちが新たに入居します。このようにして起業家の集積がさらなる起業家を引き付けるという好循環がニューオーリンズではすでに始まっているのです。
インキュベーションというと、日本にも30年前くらいから全国各地で作られました。しかしその多くは郊外に建てられ、サービス内容も部屋貸しにとどまっていました。テナント企業も必ずしもスタートアップではなく、大企業の一部の機能(研究開発、生産、営業など)を入居させていました。また入居企業を支援したりネットワークするサービスもあまり見られなかったです(むろん活発に活動されちているインきゅべーターもありましたが)。
これに比べると、海外のインキュベーターやコラボレーション・スペースは、ダウンタウンの真ん中や、人通りの多い一角にあったりと、人が集まりやすい場所に建てられ、そのインテリアは、人がリラックスして話をしたり、集まって議論ができるような工夫が盛り込まれているように見えます。
次回は「第5回 起業を促進するエコシステムの形成」です。
配信日程:10月6日(金)午前10時ごろ配信予定
【プロフィール】
福嶋 路
東北大学大学院経済学研究科教授
地域で活躍する企業の戦略、企業家の活動、企業家の活動を促進する社会的仕組みについて研究している。
編著に『ハイテク・クラスターの形成とローカル・イニシアティブ:テキサス州オースティンの奇跡はなぜ起こったのか』(白桃書房、2015年)がある。
趣味 旅行、温泉、刑事ドラマ・動物番組の鑑賞