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【人間関係は犯罪を防げるか?】第1回 貧困と犯罪

2015/12/14 10:00

アメリカの大都市では貧困と犯罪が結びついています。下の図はデトロイト市の住宅価格と犯罪率の地図です。住宅価格の地図では、価格が高い地域、つまり経済的に豊かな地域は濃い青色で、低価格の地域、つまり経済的に貧しい地域は薄い青色で表されています。

犯罪率の地図では、犯罪率の低い地域が濃い青色で、高い地域が薄い青色で表されています。

2つの地図を見比べると、住宅価格地図で濃い青色の地域は犯罪率地図でも濃い青色で、住宅価格地図で薄い青色の地域は犯罪率地図でも薄い青色になっています。

つまり、豊かな地域ではあまり犯罪は発生せずに、貧しい地域で犯罪が発生する傾向にあります。



しかし東京東部の下町に生まれ育った私には、東京ではこの貧困と犯罪の結びつきがないように思えました。東京の下町は山の手に比べて貧しい地域ですが、犯罪が多発したという記憶がないからです。

この直感をデータで裏付けるために、都市社会学の第一人者である倉沢進先生(東京都立大学名誉教授)が1986年に刊行された『東京の社会地図』(東京大学出版会)を探しました。この本では、東京23区を500メートル四方の地区(メッシュ)に区切って、地区ごとにデータの値で色の濃さを変えた地図がたくさん掲載されています。

下の図は社会的経済的地位と犯罪報告数の地図です。社会的経済的地位とはその地区の貧富を表わす指標で、濃い色ほど豊かな地区を意味します。犯罪報告数の地図では、報告数が多いほど濃い色になっています。




2つの地図を見比べればわかるように、デトロイトとは違って東京では貧しい地区に犯罪が集中しているわけではありません。豊かな地区は東京の西部に、貧しい地区は東部に集中しています。しかし犯罪はそのようなパターンを見せていません。なぜこのような違いがあるのでしょうか。次回はこのことについてお話しします。

デトロイト市地図のウェブサイト
http://www.neighborhoodscout.com/mi/detroit/



次回は「第2回 人間関係の重要性」です。
配信日程:12月15日(火)午前10時ごろ配信予定


【プロフィール】
佐藤 嘉倫
東北大学大学院文学研究科教授
合理的選択理論の視点から、信頼や社会的不平等の解明に取り組んでいる。
編著に『ソーシャル・キャピタルと格差社会』(東京大学出版会、2014年)がある。
趣味 ジャズ鑑賞、ギター、料理、スキー