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みんみん対談 「仙台の市民協働によるまちづくり2016」―これまでの5年これからの5年― 後編

2016/01/05 10:00

特定非営利活動法人せんだい・みやぎNPOセンター

ニュースレター2016年1月1日vol.103 より(全文から一部分を抜粋)


みんみん対談

「仙台の市民協働によるまちづくり2016」―これまでの5年これからの5年― 後編


○地域と共に取り組む課題解決

新川:仙台市には元々強いそれぞれの地域の地縁の組織があり、それぞれの行政区毎の活動を活発にやられてこられたという経緯がありますが、今回の震災を通じてどのように感じていますか。


市長:仙台は平成元年に政令指定都市に移行して「区」というものができました、この20年住民の皆さんに「区」に対してアイデンティティを感じていただくため、区民まつりなどの協働事業をやってきました。また、合併市町とのいわゆる心理的な地域的なバリアをいかになくすかということにも苦心してきました。「区」がある程度根付いていたので、復興のさまざまな事業が比較的スムーズに地域に受け入れられたのはよかったと思います。

一方で、区民協働を中心にやってきた結果、全市をテーマにしたNPO活動に対する資金的な支援制度はこの間不十分でした。そろそろ全市の中で取り組んでいく課題にどういう支援をするか、またテーマ化するかなど検証してみる必要があると感じています。




新川:私たちの問題意識としても、極めて特殊しかも少数派で、しかし重大な問題を抱えるケースが沢山見られます。それは仙台市全体でみるととても大きな問題になっているが、地域の中ではどうしても埋没してしまいます。そんな課題をどのように解決していくか、例として適当かどうかわからないが、引きこもりの問題などが典型的です。全市的にできることも確かにあると思いますが、やはり地域もしっかり関わっていただかないと困ります。私たちとしてはそういうところに行政と地域、そしてNPOが連携をして問題解決に取り組む枠組みが今回の協働条例でうまくできたらいいと思っています。


市長:その通りだと思います。地域の中の課題について「わが地域にはこういう課題があります」と表立って自分たちからは言い出しにくい。その心情やバックグラウンドをわきまえながら、トータルとして課題に向き合っていくために何が必要かということを解きほぐしたり、くっつけたり、またあんまり当事者と地域と行政が向かい合い過ぎないようにすることができる、第三者というのはよいものなんですよね。


新川:それぞれが役割を果たすことで色々な担い手が地域の中で本当は力を発揮できるのだけれど、うまく力を合わせられない。そういう結び目づくりを誰が出来るか、勿論行政ができるところもありますが、行政が制度や仕組みや権限を持っておられると逆に動きづらい。そうすると市民の側でやらなければならない部分が出てきますが、当事者の市民が直接行うことは難しい。そこに、関わっていくNPOの役割があるのかなとは思っています。それが地域を支援するという意味での中間支援なのかもしれないと思っています。


○これから5年の協働のまちづくりに向けて

市長:これからの社会に対する私の基本的なイメージは、正解のない社会に我々全員で入っていかなければならない。そうすると試行錯誤していくことしか武器になるものはないと思います。行政だけではこれからの社会を乗り越えていくことはできないと思うので、それを一緒にやっていくのが市民協働なり市民のみなさんとの事業の連携なり融合だというふうに、お互いの考え方を少しゆるやかに持っていることが必要ではないでしょうか。

役所の中のことで言えば、仙台市の職員がこれからは仙台のNPOや、全国のNPOにお伺いして、中間支援のあり方などいろいろ教えていただき、市の職員としてということ以前に一人の市民としての厚みを増すということをやっていくことも課題かなと思います。


新川:とても良いビジョンだと思います。市役所職員の方々がそういう力をつけて、現実的にみんながどんな風に動いているのかということを学び感じていただければ、市の行政としても、そして市の職員としても物事の捉え方というのはずいぶん変わってくるかと思いますので、ぜひそういったことを進めていただければと思います。


市長:「市民協働」については、仙台市役所の職員一人ひとりまで「体質化」することが必要です。それに向けて市長としての立場から声を掛け、事業を予算化し職員研修をするということも大事ですが、一方でNPOのみなさんは仙台市の9,600人の職員を使い倒そうという気持ちで色々なアプローチをしていただいて、育てていただきたい。そういう関係性がつくられ、そして試行錯誤しながらお互いに向かい合っていければ、この厳しい時代でも乗り切る道はあるんじゃないかと思いますね。


新川:ありがとうございます。一緒にやれることと出来ないこととが確かにあります、それぞれの拠って立つものが違いますから、それぞれの活動があっていいと思います。同時に共通の目標でこれは一緒にやると効果があるよね、みたいな所を一緒に探し、創って行く努力が出来るといいと思います。職員の方々がどう学んで下さるかという所も大事ですし、我々も行政の活動や制度の仕組みやそこでの権限のあり方やその手続きなどを理解していかないと、ご一緒にはできないというふうに思っています。


市長:行政の持っている基本的な判断基準とNPOの志はある場面では背中合わせの時もありますが、広い意味ではこの社会の中の目標を同じにしています。行く道は違うが行き先は同じということですよね。


新川:お互いに違うと判った上で、一緒にやらないとできないはずです。


市長:協働条例ができてこれからの5年は勝負の時だといえます。


新川:そうですね、一緒にやってまいります。


市長:こちらもがんばりたいと思いますので、よろしくお願いします。


(記録・編集 鈴木美紀)



特定非営利活動法人せんだい・みやぎNPOセンター

ニュースレター2016年1月1日vol.103 より(全文から一部分を抜粋)