屋根のある人もない人も、かけがえのない命 (後編)
2016/01/12 10:00
みやぎのボランティア市民活動情報誌 「月刊 杜の伝言板 ゆるる」12月号より
屋根のある人もない人も、かけがえのない命 (後編)
=NPO法人仙台夜まわりグループ 理事・事務局長 青木康弘=
【津波がさらって行ったもの】
震災で、路上生活者の様相も一変しました。
仙台には、全国から復興関連の職を求めて多くの人たちが流入してきました。その中には、仕事に就けず、あるいは雇用の期間が切れるなどして、路上に陥る人たちが引きも切りませんでした。
2013年に仙台夜まわりグループが独自に実施した調査では、当事者45名のうち、仕事を求めて仙台以外からやって来たのは18名(40%)で、平均年齢は52歳と、震災前より10歳近く若くなりました。
また、住み慣れた地域共同体を失い、避難所や仮設住宅の生活に疲れて、路上生活を余儀なくされるという震災の直接的な被災者も少なからずおられます。震災による津波は、かけがえのない命や家を奪っただけではなく、相互扶助という意味での人と人との関係そのものをもさらっていったのです。
震災直後から、多方面の様々な相談が寄せられるようになり、私たちは、それら相談対応窓口を一括するために2013年から、みやぎNPOプラザの1階スペースをお借りして、「HELP!みやぎ」を開設しました。
HELP!みやぎには、路上生活者からの相談だけでなく、震災被災者、ネットカフェで寝泊まりしている方、車上生活者、家賃滞納者等、様々な問題を抱える人たちからのSOSが殺到しました。
それらに対応する中で、私たちの支援対象も、路上生活者のみならず、あらゆる生活困窮者を含むものへと変化してきています。
【誰もが関係性の中で】
厚労省が毎年実施している実数調査によると、今年の仙台市内の路上生活者数は110名でした。全国的に激減傾向にある中、仙台ではこの3年間、100名を下回らず、減少数も微減に留まっています。行政やNPOの支援で路上を脱却した数とほぼ同数が新たに路上に陥っているということになります。
私たちは、路上生活に至る出来事を、単に自己責任とか個人の問題とは考えていません。その根底に不安定雇用と不安定居住があるという意味で、路上生活者の問題は、社会や産業構造の問題なのです。
これら問題を解決するためには、官民協働による包括的な支援施策の構築が必要不可欠です。そのために、仙台夜まわりグループは、毎月、仙台市の担当部署と支援者会議を行い、情報交換や施策の検証等を行っています。
「ホームレス」とは、家がないという意味の「ハウスレス」とは異なり、家族や隣人、社会との関係を失った状態です。
ですから、彼ら彼女らに、単に住まいと食を与えれば、それで済むということにはなりません。
誰もが社会の中で、公的セーフティーネット、家族や地域のセーフティーネットに守られて生きる社会こそが、私たちのめざすものです。
これからも、私たちのモットー「できるときに、できることを、できる人が」を大切に、何度失敗しても、やり直しができる社会を構築すべく、活動を進めて参ります。
仙台夜まわりグループでは、毎年11月から翌3月までを「越冬支援期間」と位置づけ、生命の危険に晒されている路上生活者が最悪の状況に陥らないために、24時間体制で緊急対応に備えています。
特に、この時期に、ヴォランティアや献品(カップ麺、袋麺、缶詰、レトルト等食糧品、男性防寒具、男性冬物下着、寝袋)を募っています。
私たちの足下で、路上死、孤独死という悲しい出来事が起こらないよう、どうか市民の皆様のご協力をお願いいたします。
NPO法人仙台夜まわりグループ
〒983-0044 仙台市宮城野区宮千代2-10-12
●TEL:022-783-3123
●E-mail:yomawari@medialogo.com
みやぎのボランティア市民活動情報誌
「月刊 杜の伝言板 ゆるる」12月号より