東西線の駅設備~トイレに秘められたこだわり 学生リポート
2016/01/25 10:00
去年12月6日に開業した仙台市地下鉄東西線。真新しい車両や駅に目を惹かれた方も多いと思います。その中でも、私たちがよく使う東西線の駅のトイレについて考えてみます。
駅のトイレと言えば「暗い・汚い・臭い」の3Kが問題視されてきました。そのイメージを払拭し、快適にトイレを利用してもらえるよう、鉄道事業者は努力を重ねていると言われます。
東西線各駅は開業したてで、トイレも新品でピカピカです。明るい照明、きれいな壁面タイル。一昔前とは全然違うきれいなトイレになっています。
東西線のトイレの特徴の一つとして、壁面やパーテーションのデザインが各駅で異なることが挙げられます。これは、東西線の「駅の個性化」によるものだそうです。東西線の駅は、各駅でデザインが異なり、トイレもそれに合わせた設計となっているのです。
例えば、荒井駅は地元の伝統的景観「居久根」を取り入れたデザインとなっています。
居久根は屋敷のまわりに植えた防風林のことです。コンコースの天井は木目調パネルの間に照明を配置して緑の風の流れを表現しています。その延長で、トイレ内のパーテーションに木目調のパネルを使用し自然の雰囲気を演出。洗面所上の丸い天井は居久根に囲まれた自然の温かさを表現しています。
また、八木山動物公園駅は空をイメージして設計され、コンコースは青を基調としたデザインです。コンコースの透明感ある爽やかな雰囲気を映えさせるために、トイレは黒で落ち着いた内装となっています。
さらに、トイレへのアプローチ部にも工夫があります。青葉通一番町駅では、青葉通りのケヤキ並木をイメージした天井照明が導入され、トイレの前が明るい雰囲気になっています。コンコースの端に位置しているトイレですが、ケヤキ並木をくぐるような心地よい動線になっています。
設備面でもいくつか特徴があります。南北線では配管の都合でトイレに段差があったのに対して、東西線はバリアフリーで入口に段差がありません。
また、男女兼用の「ひろびろトイレ」が各駅2カ所ずつ設置されました。2カ所あることで、トイレが空くのを待つことが減る、躊躇なく利用できるというメリットがあります。障害のある方や高齢者、小さな子どもがいる方にはありがたいでしょう。
そして、これは私自身疑問視していることなのですが、和式トイレが設置されていることです。基本的に男女とも個室は3つずつあり、うち2つが洋式、1つは和式となっています。
交通局によると、和式を設置しているのは「公共のトイレで和式を利用したいという方がいるから」だそうです。「器具が直接肌に触れなくていい」というのは和式の特徴と言えます。
しかし、株式会社LIXILの2010年の調査によると、商業施設で和式を利用したいと答えたのは男女とも10パーセント未満でした。しかも、和式を希望する割合は年々減少する傾向にあります。
また、和式はきれいに使ってもらえないというデメリットがあります。すぐに汚れてしまうので、利用者は避けてしまいますし、清掃も大変です。
そして、和式を1つ設置しようとすると、東西線では3分の1が和式となってしまい、8割以上の洋式希望の利用者とのミスマッチが生じてしまします。果たして、和式を設置するのが良かったのでしょうか。
私としては、洋式に除菌クリーナーを設置するなどの方法を選択すべきではなかったのかと考えています。
最後に、トイレが改札外にあるということに触れておきましょう。
一般に駅のトイレは改札内に設置して、お金を払った鉄道利用者だけが使用できるようになっています。しかし、仙台市地下鉄の場合、トイレは改札外に設置されており、地下鉄を利用しない人にも広く公共トイレとして利用してもらえるように、という市の思いが読み取れます。
普段何気なく使っているトイレですが、東西線には様々な面でたくさんのこだわりがありました。トイレがきれいだと、お年寄りから子どもまで安心して利用できます。これからも市民に利用され愛される東西線の駅であってほしいと願います。
東北大学 都市まちづくり研究会
工学部 建築・社会環境工学科 都市システム計画コース 2年
山口 修平