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【チーズの世界Q&A】第5回 これまでにない新しいタイプのチーズはありますか?

2016/02/26 10:00

Q:これまでにない新しいタイプのチーズはありますか?   
A:日本でも「ブルカマ」という愛称で作られていますが、とても製造の難しいチーズの一つにブルーチーズとカマンベールチーズの合体したチーズがあります。

外側は白カビのチーズで、内部は青カビのチーズです。


写真1 カンボゾーラチーズ

カットすると一瞬驚くことがあります。青カビも白カビも同じ仲間ですが、生育の特徴が大きく異なるために、同じ時期に食べごろを合わせて持ってくるのが難しいそうです。

ちなみに、ドイツではカンボゾーラと呼ばれ、伝統的なチーズの数が他国より少ないドイツで開発されたものです。ドイツ語では、ヴァイスブラウケーゼと呼ばれ、ホワイト・ブルーチーズという意味で、ドイツ各地で作られています。

青カビチーズが好きな方も、白カビチーズが好きな方も、共に楽しめるように作られています。


Q:裂けるチーズはどのようにして作りますか?   

写真2 裂けるチーズ

A:このチーズはモッツアレラチーズを原料に作ります。

乳を乳酸菌発酵と凝乳酵素(レンネット)で固めた凝乳を、カットして加温しながらホエイ排除をしますと、カードが出来ます。

このチーズカードを80℃以上の熱湯の中に入れて練っていきますと、段々とチーズに艶と弾力と粘性が出てきます。

これを団子状に引きちぎって作るのがモッツアレラチーズであり、この作り方をパスタフィラータ製法といいます。

この熱いお湯の中で引き伸ばす、また冷やしてから、熱水に入れてまた伸ばすという工程を繰返すと、縦に裂けるチーズができます。

以前にはストリングチーズと呼ばれたこともありました。子供にも大人にも、チーズが裂けるという意外性が受け、非常に人気の高い製品です。


Q:チーズの種類はどのくらいありますか?
A:チーズの原材料は、「乳と塩」と書いてあります。もちろん乳酸菌がいなければチーズはできないのですが、意外なほど材料はシンプルです。

チーズの種類は世界中では1000種類もあると言われています。

フランスには「一村一チーズ」という言葉があり、フランスだけでも400種類以上はあるとされています。その他、イタリアやスイスなどヨーロッパ諸国にも独自のチーズが沢山あります。

現在では、新技術により新しいチーズが出来ていますので、さらにチーズの種類は増える一方です。

ミルクの種類は、ウシ、ヤギ、ヒツジ、水牛、馬、ヤク、ラクダ、トナカイの乳と限定されますが、発酵に用いる乳酸菌の種類と組合せは無限ですので、その意味ではチーズの種類は星の数と言っても過言ではないかもしれません。


Q:チーズの孔はどうして出来るの?   
A:チーズには大きな孔があるチーズがあります。

チーズの孔はチーズアイ(チーズの目)と呼ばれ、数あるチーズの中でもエメンタールチーズというスイス原産のチーズが有名です。


写真3 エメンタールチーズ

このチーズは独特の香りと上質なクルミの味がするというチーズで、スイスではグリュイエルチーズと混ぜて溶かした伝統的な家庭料理の「チーズフォンジュ」を作ります。

エメンタールでは、プロピオン酸菌というガス(二酸化炭素)を出す菌を発酵に用いており、あえてチーズ中でガスの孔を作らせているのです。

クルミ状の奇麗なサークル状の孔が最高とされています。

チーズ作りでは、通常はガス産生菌を使うことはありませんので、このチーズは例外と言えるでしょう。

Q:チーズには健康に良い成分が含まれていますか?
A:熟成型のチーズでは、長期間に渡り熟成させていますので、沢山の機能性ペプチドが乳タンパク質より生成しチーズ中には沢山含まれています。

その中には血圧を下げる作用のあるペプチド、免疫活性を高めるペプチド、コレステロールを下げるペプチドなどが知られています。

また、チーズにはビタミンCや食物繊維は含まれていません。これは、原料のミルクに含まれていなかったためです。ですから、野菜や果物と一緒に食べれば栄養バランスも理想的な食品となります。

また、チーズのタンパク質であるカゼインには、必須アミノ酸(人体では作れないアミノ酸)の中でのロイシンなどの分岐鎖アミノ酸(BCAA)がとても多く、筋肉を作る作用が強いのです。

筋肉を増やそうとしているアスリートにも、筋肉が減少して来ます高齢者にも、最適のアミノ酸の給源といえます。

以上お話をして来ましたように、チーズには食品として優れているだけでなく、歴史のある食品であり、世界中で愛され食べ続けられています。

チーズは、古くからワインとのマリアージュが推奨されています。

私は日本の食事に不足しがちなカルシウムの優れた給源としてチーズはとくに大切であると考え、「和食とチーズのマリアージュ」が実現すれば、世界で最も優れた食事になるだろうと考えています。

2年毎に開催されますオールジャパン・ナチュラルチーズコンテストでは、日本中のチーズ工房から優れた作品が出典されます。



写真4 オールジャパン・ナチュラルチーズコンテスト
上は入選したチーズ作品
下は公開の最終審査風景(筆者は左から3番目です)

日本のチーズのレベルは年々高まり、今や欧米のチーズと比肩できる素晴らしいチーズが育っています。今後の日本のチーズの発展がとても楽しみです。


【プロフィール】
齋藤 忠夫(さいとう ただお)
東北大学大学院 農学研究科教授
より優れた乳酸菌を用いて新機能性ヨーグルトの開発に取り組んでいる。
著書には『畜産物利用学』(文永堂出版、2011年)他、30冊がある。
趣味 ピアノ演奏