~動物を巡る話シリーズ第1弾~ 動物を巡る幸せな話(後編)
2016/03/01 10:14
みやぎのボランティア市民活動情報誌 「月刊杜の伝言板ゆるる」
2015年3月号より〈バックナンバーより掲載〉
~動物を巡る話シリーズ第1弾~ 動物を巡る幸せな話(後編)
農福連携と動物福祉
現実の社会に不適合な人たちの居場所をいかにつくるかが課題になっています。その解決策のひとつが農福連携です。農業は働く場所として、セラピー的要素もある「居場所」を作りだせるのでしょうか。
アニマルウェルフェアの先駆として放牧豚がありますが、放棄地を活用したスモールビジネスなので高齢者など弱者でもできるといいます。味がよいことも科学的に立証されている上、動物にとって心地よいアニマルウェルフェアの考えに基づいた環境は、障がい者が働きやすい環境でもあり、農福連携が成り立つポイントとなっています。
一方で、生産には少しコスト高になってしまうこともあり、福祉レベルを上げれば利益追求との間に必ずギャップが生じます。「人と動物が共に幸せに生きていく優しい街を目指して」一歩前へ進むには、人間も動物も少しずつ我慢して、社会全体の幸福度を上げていくことではないでしょうか。
動物の福祉を考えることはすなわち、人間の福祉を考えることになるわけですから。
アニマルセラピー
セミナーのパネリストを務めた NPO法人エーキューブ理事長(※2015年3月現在)の齋藤文江さんに話を聞きました。
2002年から人と動物のふれあい活動を中心に、福祉施設や学校などを訪問し、動物の持つ温もりや優しさにふれてもらうボランティア活動を続けているNPO法人エーキューブは、仙台市主催の「動物介在活動ボランティアセミナー」の受講生らが、自発的に立ち上げた団体です。
▲エーキューブ齋藤さん
アニマルウェルフェアを守り、会員の家族として幸せに暮らしている動物たち(主に犬)が活躍しています。
「動物介在活動」とは、動物とふれあうことによる情緒的な安定、 レクリエーション・QOLの向上等を主な目的とするふれあい活動です。一般にアニマルセラピーとよばれる活動です。
「ボランティアする会員たちにとっては、自分の愛犬が活躍し、褒めてもらえることがとても誇らしく、『みんなが笑顔になる』それが活動の原動力になっています」と齋藤さんは話します。
老人や障がい者の福祉施設への訪問活動では、その効果に驚かされます。
「あの人はムリだよ」と、施設の人たちも笑顔を見たことが無いという高齢者が、犬と接したらとても穏やかな表情を見せてみんなびっくりしたとか、いつも大声で騒いでいる人が落ち着いて静かになったり、認知症で職員の名前すら覚えられない人が訪問する 犬の名前をちゃんと覚えているなど…まさに奇跡そのものです。
▲仮設でのふれあい活動の様子
震災時から3年間、荒浜地区で、子どもたちの心のケアを目的にふれあい活動を続けてきました。
震災前から訪問していた小学校が被災したと聞き、心配で会員たちと駆けつけました。「次はいつ来るの?」と子どもたちから訪問を望む声が多く寄せられ、次第に笑顔も増えていきました。
子どもと動物
不登校の子どもたちを支援する適応指導センターへの訪問活動も子どもたちに人気があります。犬がいるから行ってみようかなと、外へ出るきっかけになっています。犬を通して人と話すことができたり、徐々に活発になって人と接する社会性が生まれています。
また、小学校で、正しい動物とのふれあい方や命の大切さを学んでもらう「動物介在教育」を、年齢に合わせたプログラムを組んで行っています。低学年では動物の命と世話をすることについて、中学年では人と同じ命を体感することや犬について調べる活動、高学年では管理センターで処分される動物のことや命の重さや動物を迎えるときの責任について考える機会としています。
▲犬との接し方を学ぶ小学生
「犬嫌いの子はたいてい犬との接し方を知らないから、起こった不幸を犬のせいにして犬を悪者にしてしまいます。動物の行動を知り学ぶことで初めて、人と動物の 良い関係が築けるのです。よい体験は感受性を育み、心やさしい子どもに成長することに生かされます」と齋藤さん。
犬は人に寄り添って傾聴してくれる動物です。
黙って人の話をよく聞いて、人に何かを命令することもない。そして温かみのある存在です。だから犬と一緒にいると人の心は落ち着くのでしょう。私たちの人としての生き方が問われています。
(取材・執筆 黒森きのこ)
月刊杜の伝言板ゆるる2015年3月号
http://www.yururu.com/?p=892
2015年3月号より〈バックナンバーより掲載〉
~動物を巡る話シリーズ第1弾~ 動物を巡る幸せな話(後編)
農福連携と動物福祉
現実の社会に不適合な人たちの居場所をいかにつくるかが課題になっています。その解決策のひとつが農福連携です。農業は働く場所として、セラピー的要素もある「居場所」を作りだせるのでしょうか。
アニマルウェルフェアの先駆として放牧豚がありますが、放棄地を活用したスモールビジネスなので高齢者など弱者でもできるといいます。味がよいことも科学的に立証されている上、動物にとって心地よいアニマルウェルフェアの考えに基づいた環境は、障がい者が働きやすい環境でもあり、農福連携が成り立つポイントとなっています。
一方で、生産には少しコスト高になってしまうこともあり、福祉レベルを上げれば利益追求との間に必ずギャップが生じます。「人と動物が共に幸せに生きていく優しい街を目指して」一歩前へ進むには、人間も動物も少しずつ我慢して、社会全体の幸福度を上げていくことではないでしょうか。
動物の福祉を考えることはすなわち、人間の福祉を考えることになるわけですから。
アニマルセラピー
セミナーのパネリストを務めた NPO法人エーキューブ理事長(※2015年3月現在)の齋藤文江さんに話を聞きました。
2002年から人と動物のふれあい活動を中心に、福祉施設や学校などを訪問し、動物の持つ温もりや優しさにふれてもらうボランティア活動を続けているNPO法人エーキューブは、仙台市主催の「動物介在活動ボランティアセミナー」の受講生らが、自発的に立ち上げた団体です。
▲エーキューブ齋藤さん
アニマルウェルフェアを守り、会員の家族として幸せに暮らしている動物たち(主に犬)が活躍しています。
「動物介在活動」とは、動物とふれあうことによる情緒的な安定、 レクリエーション・QOLの向上等を主な目的とするふれあい活動です。一般にアニマルセラピーとよばれる活動です。
「ボランティアする会員たちにとっては、自分の愛犬が活躍し、褒めてもらえることがとても誇らしく、『みんなが笑顔になる』それが活動の原動力になっています」と齋藤さんは話します。
老人や障がい者の福祉施設への訪問活動では、その効果に驚かされます。
「あの人はムリだよ」と、施設の人たちも笑顔を見たことが無いという高齢者が、犬と接したらとても穏やかな表情を見せてみんなびっくりしたとか、いつも大声で騒いでいる人が落ち着いて静かになったり、認知症で職員の名前すら覚えられない人が訪問する 犬の名前をちゃんと覚えているなど…まさに奇跡そのものです。
▲仮設でのふれあい活動の様子
震災時から3年間、荒浜地区で、子どもたちの心のケアを目的にふれあい活動を続けてきました。
震災前から訪問していた小学校が被災したと聞き、心配で会員たちと駆けつけました。「次はいつ来るの?」と子どもたちから訪問を望む声が多く寄せられ、次第に笑顔も増えていきました。
子どもと動物
不登校の子どもたちを支援する適応指導センターへの訪問活動も子どもたちに人気があります。犬がいるから行ってみようかなと、外へ出るきっかけになっています。犬を通して人と話すことができたり、徐々に活発になって人と接する社会性が生まれています。
また、小学校で、正しい動物とのふれあい方や命の大切さを学んでもらう「動物介在教育」を、年齢に合わせたプログラムを組んで行っています。低学年では動物の命と世話をすることについて、中学年では人と同じ命を体感することや犬について調べる活動、高学年では管理センターで処分される動物のことや命の重さや動物を迎えるときの責任について考える機会としています。
▲犬との接し方を学ぶ小学生
「犬嫌いの子はたいてい犬との接し方を知らないから、起こった不幸を犬のせいにして犬を悪者にしてしまいます。動物の行動を知り学ぶことで初めて、人と動物の 良い関係が築けるのです。よい体験は感受性を育み、心やさしい子どもに成長することに生かされます」と齋藤さん。
犬は人に寄り添って傾聴してくれる動物です。
黙って人の話をよく聞いて、人に何かを命令することもない。そして温かみのある存在です。だから犬と一緒にいると人の心は落ち着くのでしょう。私たちの人としての生き方が問われています。
(取材・執筆 黒森きのこ)
月刊杜の伝言板ゆるる2015年3月号
http://www.yururu.com/?p=892