~動物を巡る話シリーズ第2弾~ 動物を巡る不幸な話(後編)
2016/03/04 10:32
みやぎのボランティア市民活動情報誌 「月刊 杜の伝言板 ゆるる」
2015年4月号より〈バックナンバーより掲載〉
~動物を巡る話シリーズ第2弾~ 動物を巡る不幸な話(後編)
行き場のない動物に向き合う
▲アニマルピース菅原さんと保護犬たち.
平成13年、泉区にて150匹の犬が劣悪な環境下で飼育されているという事件をきっかけに、その犬たちを保護する活動を始めたアニマルピースの菅原とみえさん。
想像を絶する惨劇に、心身ともに疲労困憊する中で命を救う活動を続けてきました。
現在は、保健所からの引き取りと譲渡への活動をしながら、貰い手が無くてどこにも行くところがない犬猫10数頭を自宅で保護しています。
飼い主が被災して飼えなくなった高齢の犬や飼い主が高齢で飼えなくなった高齢の猫、病気や障がいのある犬猫など、居場所がない命を最後まで面倒を見続けています。
保護した犬猫は、病院で検査をして病気があれば薬を飲ませ、通院も必要です。高額の医療費とフード代など年間約800万の維持費が掛ります。そのすべては一般市民、個人の善意による寄付と自己負担です。
また、約60名ものボランティアに支えられていて、病院のお迎えやお散歩、一時預かり、イベントスタッフなど各自が「自分に今できること」をしています。
長年活動を続けてこられたのは家族の協力があってのこと。一向に減らない飼育放棄の現状から「アニマルピースに連れていけばいいやという安易な発想があるんじゃないかと思い、個人からの引き取りはやめました。いつか終わると思いながら続けてきたけど、家族の疲労を考えるとあと3年で活動を引退したい。それまでに根本を変えたいんです」と菅原さんは決意しています。
▲アニマルピース活動の様子
動物のおかれた現状と改善を求めて
菅原さんは昨年度から宮城県動物愛護推進委員として、殺処分をさらに減少させる実現可能な対策や動物と共生できる社会の構築に向けた具体的な方法と改善を求めて提案しています。
平成25年度における宮城県の犬猫引き取り数は、計3,630頭(内、返還数326頭、譲渡数720頭、殺処分2,561頭)でした。殺処分の詳細は犬227頭、猫2,334頭(内、子猫2,043頭)となっています。
県内9か所ある保健所・支所に収容された犬猫は、1週間の猶予の後、動物愛護センターのガス室にて炭酸ガスで窒息死させられます。数10分もの間、もがき苦しんで死んでいくという悲惨な殺し方です。ガス室といえば誰もが「アウシュビッツ強制収容所」の悲劇のことを思うでしょう。人は犬猫に対して日常的に悲劇を繰り返しているといっても過言ではありません。
愛護センターだけでなく各保健所単位で、団体や個人ボランティアと連携し、協力態勢で譲渡を増やす対策が必要です。もっと県民と協力して保護活動を行い、県民一人ひとりの動物愛護に対する意識の向上につなげる必要があります。さらに、他自治体ですでに行われている麻酔注射による安楽死にする殺処分の見直しが急がれます。
犬猫を全くケアしない、不衛生な環境の中で飼う、食事を与えない、暴力をふるう、度を超えた多頭飼育など、いろんな虐待があります。
「人のことが大好きだから近づいたのにひどい目に遭わされて、人のことが怖くなって自分を守るために凶暴になってしまった。そして、人に見捨てられ不幸な人生が始まった…」不幸な動物がおかれた状況と不幸な人間の人生はどこか似ています。
動物のような弱いものへのいたわりのない社会は、高齢者や病気や障がいがある人など弱者にとって生きるのが厳しい社会に違いありません。人に寄り添う動物は野性動物と違って、人に保護されないと1人では生きられません。
動物保護に関わる人たちの「2度とかわいそうなめに遭わせたくない。いま私にできることを精一杯したい」という思いをどう受け止めるか、今を生きる私たち一人一人に問われています。
▲保護犬とのふれあい
(取材・執筆 黒森きのこ)
月刊杜の伝言板ゆるる2015年4月号
http://www.yururu.com/?p=894
2015年4月号より〈バックナンバーより掲載〉
~動物を巡る話シリーズ第2弾~ 動物を巡る不幸な話(後編)
行き場のない動物に向き合う
▲アニマルピース菅原さんと保護犬たち.
平成13年、泉区にて150匹の犬が劣悪な環境下で飼育されているという事件をきっかけに、その犬たちを保護する活動を始めたアニマルピースの菅原とみえさん。
想像を絶する惨劇に、心身ともに疲労困憊する中で命を救う活動を続けてきました。
現在は、保健所からの引き取りと譲渡への活動をしながら、貰い手が無くてどこにも行くところがない犬猫10数頭を自宅で保護しています。
飼い主が被災して飼えなくなった高齢の犬や飼い主が高齢で飼えなくなった高齢の猫、病気や障がいのある犬猫など、居場所がない命を最後まで面倒を見続けています。
保護した犬猫は、病院で検査をして病気があれば薬を飲ませ、通院も必要です。高額の医療費とフード代など年間約800万の維持費が掛ります。そのすべては一般市民、個人の善意による寄付と自己負担です。
また、約60名ものボランティアに支えられていて、病院のお迎えやお散歩、一時預かり、イベントスタッフなど各自が「自分に今できること」をしています。
長年活動を続けてこられたのは家族の協力があってのこと。一向に減らない飼育放棄の現状から「アニマルピースに連れていけばいいやという安易な発想があるんじゃないかと思い、個人からの引き取りはやめました。いつか終わると思いながら続けてきたけど、家族の疲労を考えるとあと3年で活動を引退したい。それまでに根本を変えたいんです」と菅原さんは決意しています。
▲アニマルピース活動の様子
動物のおかれた現状と改善を求めて
菅原さんは昨年度から宮城県動物愛護推進委員として、殺処分をさらに減少させる実現可能な対策や動物と共生できる社会の構築に向けた具体的な方法と改善を求めて提案しています。
平成25年度における宮城県の犬猫引き取り数は、計3,630頭(内、返還数326頭、譲渡数720頭、殺処分2,561頭)でした。殺処分の詳細は犬227頭、猫2,334頭(内、子猫2,043頭)となっています。
県内9か所ある保健所・支所に収容された犬猫は、1週間の猶予の後、動物愛護センターのガス室にて炭酸ガスで窒息死させられます。数10分もの間、もがき苦しんで死んでいくという悲惨な殺し方です。ガス室といえば誰もが「アウシュビッツ強制収容所」の悲劇のことを思うでしょう。人は犬猫に対して日常的に悲劇を繰り返しているといっても過言ではありません。
愛護センターだけでなく各保健所単位で、団体や個人ボランティアと連携し、協力態勢で譲渡を増やす対策が必要です。もっと県民と協力して保護活動を行い、県民一人ひとりの動物愛護に対する意識の向上につなげる必要があります。さらに、他自治体ですでに行われている麻酔注射による安楽死にする殺処分の見直しが急がれます。
犬猫を全くケアしない、不衛生な環境の中で飼う、食事を与えない、暴力をふるう、度を超えた多頭飼育など、いろんな虐待があります。
「人のことが大好きだから近づいたのにひどい目に遭わされて、人のことが怖くなって自分を守るために凶暴になってしまった。そして、人に見捨てられ不幸な人生が始まった…」不幸な動物がおかれた状況と不幸な人間の人生はどこか似ています。
動物のような弱いものへのいたわりのない社会は、高齢者や病気や障がいがある人など弱者にとって生きるのが厳しい社会に違いありません。人に寄り添う動物は野性動物と違って、人に保護されないと1人では生きられません。
動物保護に関わる人たちの「2度とかわいそうなめに遭わせたくない。いま私にできることを精一杯したい」という思いをどう受け止めるか、今を生きる私たち一人一人に問われています。
▲保護犬とのふれあい
(取材・執筆 黒森きのこ)
月刊杜の伝言板ゆるる2015年4月号
http://www.yururu.com/?p=894