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東日本大地震から5年をふりかえる「第2回 その時、もっとも頼りになったのは誰?」

2016/03/08 10:22

第2回 その時、もっとも頼りになったのは誰?

今回は東日本大震災から5年目を迎え、宮城県民の皆さんに聞いたアンケートの結果を中心にして、さまざまなことを振り返っています。

第1回では、震災直後のみなさんの状況をみました。続いて第2回では、行政の対応について見てみることにしましょう・

今回のコラムで使用したアンケート調査は、東日本大震災から3年が経過した2014年2月~3月に、東北大学吉田研究室が被災3県(岩手・宮城・福島)を含む全都道府県を対象として、3,119人から回答を得たものです。

1.誰がどの程度に頼りになりましたか?
ここでは、被災の時、誰が頼りになったのかについて尋ねた結果を見ることとします。質問としては、「1. 内閣総理大臣、2. 都道府県知事、3. 市町村長、4. 国会議員、5. 官僚、教師、7. 警察、8. 消防、9. 自衛隊、10. 町内会、近隣の人々、11. 家族、親戚、12. 職場の人々、友人、13. ボランティア、NPO」のそれぞれについて、頼りになった程度を「1.大いに頼りになった、2.少し頼りになった、3.あまり頼りにならなかった、4.全然頼りにならなかった」の中から選択してもらいました。

はじめに、日本国全体での集計結果をみてみましょう。 図1の結果を見ると、自衛隊が大いにまたは少し頼りになったと答えた人は、合わせて75.1%にものぼり、当時の自衛隊の救出活動が、人々に頼もしく受け取られたことが分かります。

次に、頼りになった程度の高い人は、家族・親戚です。家族・親戚は「大いに頼りになった」と答えた割合では、自衛隊よりやや小さいですが、「大いに」または「少し頼りになった」と答えた人を合わせると、80%を超えており、自衛隊より頼りになった存在であったことが分かります。

以下、消防、警察と続きます。注目するべきは「見知らぬ他人」で、40%近くの人が「大いに」または「少し」頼りになったと答えています。一時的な避難場所は、帰宅困難となった場合に、助け合ったことがこの調査結果からもわかります。

そして、図の下位のほうには、行政の中心にある、「内閣総理大臣」や「官僚」などが並んでいます。特に、「国会議員、官僚、内閣総理大臣」の3つについては、「あまり」と「全然頼りにならなかった」を合わせた割合が90%を超えており、このアンケートの結果だけからすると国の中枢よりも「見知らぬ他人」の方が頼りになったという残念な結果となっています。

図1 震災時に頼りになった程度

出所:東北大学吉田研究室調べ(2014)。Q35:「震災時に、誰が頼りになりましたか。
次のそれぞれについて頼りになった程度をお答えください。なお、ここで震災時とは東日本大震災後3ヵ月後くらいまでを指します。」を集計。

2.宮城県民にとって頼りになったのは?
次に、1.でみた頼りになった相手とその程度について、宮城県だけを取り出して、その傾向を見てみたいと思います。表1によると、宮城県民では「自衛隊」に対して頼もしいと思った人の割合の回答が、全国よりも高いことが分かります。

これは、宮城県が被災地域であったことも当然影響していますが、図2を見ていただくと、同じ被災地の中でも宮城県民の自衛隊に対する評価が高いことが分かります。

表1 宮城県民の評価(大いに頼りになった)

出所:図1に同じ。単位:%。「大いに頼りになった」の割合。

図2 宮城県民の自衛隊に対する評価

出所:図1に同じ。

また、頼りになった人などの「順位」では、第3位の消防まででは全国と同じですが、宮城県は、「町内会・近隣の人々」や「職場以外の知人・友人」という人のつながりが頼りになったという割合が4位と5位にランクされていることが宮城県の特徴となっています。

そして、さらに特徴的であったのは、「都道府県知事」に対する評価です。全国では、都道府県知事が「大いに頼りになった」とする回答は5.8%でしたが、宮城県では12.8%と2倍余りにも達しています。

3.知事に対する評価が高かった宮城県
2.では、「都道府県知事」に対する評価に注目しました。
このような知事に対する評価の傾向は、被災地ならば同様なのでしょうか、それとも宮城県だけの傾向なのでしょうか。このことを明らかにするために、被災地3県での知事に対する評価を取り出してまとめたものが表2です。

表2を見ると、被災3県の岩手県、宮城県、福島県の中でも、知事が「大いに」または「少し頼りになった」とする人の割合は、宮城県民では43%あまりと一番高くなっています。
その逆として、福島県では全然頼りにならなかったとする人の割合が50%を超えており、やはり宮城県の村井知事に対する評価が高いことが分かります。

前段の「自衛隊」に対する評価と考え合わせると村井知事が自衛隊の出身であったことから、危機管理や非常時のリーダーシップを感じたと言えるのでしょうか。



今回は、被災時に頼りになった相手とその程度について、アンケート結果に基づいて振り返りました。その中で、中央政府に対する評価が低いこと、自衛隊に対する評価は全国および宮城県で高いこと、そして特に宮城県では知事に対する評価が高かったことを紹介しました。

現在、国の災害復興の担当は復興庁、防災対策の中心は内閣府です。復興庁は復興庁設置法により平成32年までに廃止することが決まっています。

今後、地震だけでなく、豪雨や感染症など様々なリスクに対して、中央政府として信頼感の高い対応ができるためにも、「防災庁」または「防災省」の設置を含めて積極的な対応が必要と思われます。

第3回の配信日程:3月9日(水) 予定

【プロフィール】
吉田 浩
東北大学大学院 経済学研究科・災害科学国際研究所(兼任) 教授
少子・高齢化社会の問題を経済学的観点から統計などを用いて解明。世代間不均衡、男女共同参画社会、公共政策の決定過程、震災復興などを研究。
1969年、東京生まれ、1女2男の父。