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東日本大地震から5年をふりかえる「第4回 みんなのゼミでのアンケート結果(1)」

2016/03/11 10:19

第4回 みんなのゼミでのアンケート結果(1)

今回は東日本大震災から5年目を迎え、宮城県民の皆さんに聞いたアンケートの結果を中心にして、さまざまなことを振り返っています。

第4回と第5回は、3月1日(火)~3月8日(火)まで仙台放送アプリを通じて募った「みんなのゼミ」のアンケート結果を中心に見てみることにしましょう。

1.社会資本の復興状況に対する評価
はじめに、「あなたの周囲の震災後損害のあった東北の社会資本(橋や道路、水道や電気・通信、街並みなど)はどの程度回復したと思いますか」とする質問に対する回答結果を見てみることとしましょう。

表1をみると、社会資本については「ある程度以上」回復したとする人が全体の8割を超え、ハード面では一応の復興がなされたといえる結果となっています。

表1 社会資本の回復状況への評価

資料:仙台放送「みんなのゼミ」アンケート(2016.3)
結果より集計。

2.経済生活の変化はどうか
次に、収入や仕事などの経済生活についての結果をみましょう。表2には経済生活・収入のアンケート結果を示してあります。ここでは、「もともと震災では経済的な影響や損害はなかった」とする回答者は除外して集計してあります。

表2の結果を見ると、社会資本の場合と比べて、「ある程度回復した」とする回答者の割合が小さくなっており、「あまり回復していない」以下の評価をしている人が多くなっています。

特に「どんどん悪くなっている」とする回答者の割合は、社会資本の回復状況に関する評価では1%未満であったのに対し、ここでは8%近くになっています。

表2 経済生活の回復状況への評価

資料:仙台放送「みんなのゼミ」アンケート(2016.3)
結果より集計

3.心身の健康状態の回復状況はどうか
次に、心身の健康状態の回復状況に対する評価を見ることとします。この結果は以下の表3に示されています。ここでも、「もともと震災では心身の健康に影響や損害はなかった」人は集計から除外してあります。

これによると、経済面での回答と同様に、「あまり回復していない」とする回答が、社会資本の回復状況に対する評価の結果と異なり、やや多くなっています。ここでも、「どんどん悪くなっている」という回答が残っています。

表3 心身の健康状態の回復への評価

資料:仙台放送「みんなのゼミ」アンケート(2016.3)
結果より集計。

4.震災のために何か活動をしたか
次に、「被災地域の復興のために仕事としてではなく、何か特別な活動をしましたか。」とする質問の結果を見てみたいと思います。ここでは、「震災後3年間」と「去年と現在」の2つの時点での活動をそれぞれ尋ねました。

表4を見ると、最初の3年間は「募金や寄付」をした人が多く、3割の人が選択しています。

しかし、去年と今年では「募金や寄付」を選んだ人の割合は最初の3年間の半分程度になっています。

「被災地を訪問して、宿泊したり地元の産品を購入した」という形での活動をしたと答えた人は、震災後3年間も現在もほぼ3割とあまり変わってなく、安定的な支援手段となっていることがわかります。

逆に、被災地の社会資本や住宅などのハード面での復旧が進んでくるにつれて、「復旧作業の手伝いなどの作業的なボランティアを行った」や「仮設などを訪問して、話し相手などの対人のボランティアを行った」という割合は被災後3年間の半分程度と小さくなってきます。

その中で、「被災地には行かなかったが買い物で被災地の産品を積極的に購入した」という形での支援をしたひとは最近時点の方がやや増えています。最後に、「特別な支援活動をしてこなかった」という人は最初の3年間で34%程度、最近ではやや増えて4割程度となっており、大幅な変化とはなっていません。

このことは、震災後5年たっても依然として6割程度の人は、被災地のことを気にかけて何らかの行動をとっているといえます。今後も、このような支援の意識が継続されていくことが期待されます。

表4 被災地復興のための活動

資料:仙台放送「みんなのゼミ」アンケート(2016.3)
結果より集計。割合はその活動を行ったと答えた人の全回答者
336名に対する割合。選択肢は複数回答。

5.仙台5区の人の動き
最後に、震災時点に住んでいた場所と現在住んでいる場所を尋ねた結果のうち、震災当時仙台の5つの区の中に住んでいた166人の人について震災後5年で同じ区に住み続けている人の割合を計算しました。結果は以下の表5です。



表5を見る限りでは、やはり津波等の被害の大きかった宮城野区の継続居住率は7割を切っており、3割程度の人は震災後区外に転居していることがわかります。

次回は「第5回 みんなのゼミのアンケート結果(2)」です。

【プロフィール】
吉田 浩
東北大学大学院 経済学研究科・災害科学国際研究所(兼任) 教授
少子・高齢化社会の問題を経済学的観点から統計などを用いて解明。世代間不均衡、男女共同参画社会、公共政策の決定過程、震災復興などを研究。
1969年、東京生まれ、1女2男の父。