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【心豊かな暮らし方のかたちを考える『ネイチャー・テクノロジーとは?』】第2回 新しい定常化への移行の時代

2016/04/05 09:51

第2回 新しい定常化への移行の時代

地球環境問題と少子高齢化問題を同時に解くカギは、人間活動の肥大化を人間の持つ本質的な価値である『心豊か』に暮らすことを担保しながら、停止・縮小することであり、これに具体的な解を与えることが今求められているのだと思う。

ではこのようなアプローチは白いキャンバスに絵を描くようにゼロからのスタートなのか? いや、すでに多くの予兆がそれを明らかにしている。

我が国では、すでに1980年代の半ばから『もの』より『心の豊かさ』を求める人が増え続け、現在この両者には30ポイント以上の差がついている。(2-1)

2-1.どのような豊かさを求めているのか?


若い人たちは、車より自転車の方がカッコ良いと言い、フリーマーケットで物々交換することに違和感がなく、週末にはアウトドアをはじめ自然と関わりあうことがブームになり、家庭菜園やガーデニングに目を輝かせ、ビンテージではないものを修理して大事に使うことがお洒落だと言い始めた。予兆は明らかに、『もの』から『心』へ移行することを示している。

少し大きな視点で見れば、狩猟採集社会も、農耕社会も『もの』の移動が飽和してくると(テクノロジーの集積が文明であり、知の集積が文化であるとすれば)、文明的な発達から文化的な成熟、例えば洞窟壁画や地方芸能へ向かう。(2-2)

2-2.文明・文化の成熟構造


18Cに始まった近代社会も、大量生産大量消費という構造を成熟させるとともに資本主義の構造を確固たるものにしていった。それは、少し荒っぽい言い方をすれば、濃いところから薄いところへものを流す社会である。

そしてその薄いところを世界中から探すためにITが武器となり、ビジネスのグローバル化が進んだ。そして今、薄いところがなかなか見つからず、飽和してきていることも事実であろう。(2-3)

2-3.文明・文化の成熟構造


過去の社会構造に学べるとすれば、これからの世界は、非貨幣(お金が主役にならない価値)、ローカル、労働集約に代表されるような文化的な価値に重きを置く社会への移行が始まりかかっているとも言えるのではないかと思う。

次回は「第3回 ネイチャー・テクノロジー」です。
配信日程:4月6日(水) 予定

【プロフィール】
合同会社 地球村研究室 代表
東北大学名誉教授 石田 秀輝(いしだ ひでき)
2004年㈱INAX(現LIXIL)取締役CTO(最高技術責任者)を経て東北大学教授、2014年より現職、ものつくりとライフスタイルのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり『ネイチャー・テクノロジー』を提唱、2014年から『心豊かな暮らし方』の上位概念である『間抜けの研究』を奄美群島沖永良部島へ移住、開始した。
 近著;「光り輝く未来が沖永良部島にあった!」(ワニブックス2015)、Nature Technology (Springer 2014)ほか多数