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【心豊かな暮らし方のかたちを考える『ネイチャー・テクノロジーとは?』】第4回 心豊かであるということ
2016/04/07 10:23
第4回 心豊かであるということ
ますます厳しくなる『地球環境制約』の中で『心豊か』に暮らすためには、従来型の今日を原点にして思考するフォーキャストではなく、制約の中での豊かさを考えるバックキャスト思考がきわめて重要となる。
バックキャスト思考でライフスタイルを考えるという手法により、すでに4000を超えるライフスタイルを描き、その社会受容性を測定し、現在の20-60歳代の方々が潜在的にどのような欲求を持っているのか、ほぼ明らかに出来た。(4-1)
4-1.人が潜在的に求めているものは・・・
最も強い価値は『利便性』であったが、驚いたのはこれとほぼ同じ強さで『楽しみ』と『自然』が続いたことである。無論、バックキャストで描いたライフスタイルにはインターネットやテレビゲームは現れない。
社会はそのようなものとは異なる『楽しみ』を求めているのである。『自然』も同様に、恐らく自然と何らかの形で関与したいと言うことなのだと考えた。また、これらに続いて『社会と一体』『自分成長』などの価値観が強く現れた。さらにこれらの価値を深掘りするために、新たに開発した90歳ヒアリング手法を導入した。(4-2)
4-2.「90歳ヒアリング」とは
戦前に成人になり、日本が高度経済成長の地盤を固めた1960年代に40歳代の働き盛りだった方々のヒアリングを通して、日本人の生活原理を炙り出そうというものである。
現在までに海外2箇所、国内全都道府県で460名の方々のヒアリングを終了し、現在解析中ではあるが、日本の文化を創ってきた生活原理が44個に集約でき(4-3)、この上に地域性が存在することもほぼわかってきた。
4-3.90歳ヒアリングが教えてくれる日本の文化を創ってきた生活原理
1 自然に寄り添って暮らす
2 自然を活かす知恵
3 山、川、海から得る食材
4 食の基本は自給自足
5 手間隙かけてつくる保存食
6 質素な毎日の食事
7 ハレの日はごちそう
8 野山で遊びほうける
9 水を巧みに利用する(水を使い分ける、水を確保する)
10 燃料は近くの山や林から
11 家の中心に火がある
12 自然物に手をあわせる
13 庭の木が暮らしを支える
14 暮らしを映す家のかたち
15 一年分を備蓄する
16 何でも手づくりする
17 直しながらていねいに使う
18 最後の最後まで使う
19 工夫を重ねる
20 身近に生きものがいる
21 暮らしの中に歌がある
22 助け合うしくみ
23 分け合う気持ち
24 つきあいの楽しみ
25 人をもてなす
26 出会いの場がある
27 祭りと市の楽しみ
28 行事を守る
29 身近な生と死
30 大ぜいで暮らす
31 家族を思いやる
32 みんなが役割を持つ
33 子どもも働く
34 ともに暮らしながら伝える
35 いくつもの生業を持つ
36 お金を介さないやりとり
37 町と村のつながり
38 小さな店、町場のにぎわい
39 振り売り、量り売り
40 どこまでも歩く
41 ささやかな贅沢
42 ちょっといい話
43 ちょうどいいあんばい
44 生かされて生きる
Emile H. Ishida, Earth Village Research Lab.
この90歳ヒアリング結果と、バックキャスライフスタイルの分析で明らかになった潜在欲求から、心豊かな暮らしの構造がやっと見えてきた。それは、厳しい環境制約の上に利便・自然・育という3本の柱を持ち(4-4)、「利便」から「育」に向かうほど(図中AからCに向かうほど)、心の豊か度が上昇することを示している。
4-4
次回は「第5回 「間抜け」の研究」です。
配信日程:4月8日(金) 予定
【プロフィール】
合同会社 地球村研究室 代表
東北大学名誉教授 石田 秀輝(いしだ ひでき)
2004年㈱INAX(現LIXIL)取締役CTO(最高技術責任者)を経て東北大学教授、2014年より現職、ものつくりとライフスタイルのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり『ネイチャー・テクノロジー』を提唱、2014年から『心豊かな暮らし方』の上位概念である『間抜けの研究』を奄美群島沖永良部島へ移住、開始した。
近著;「光り輝く未来が沖永良部島にあった!」(ワニブックス2015)、Nature Technology (Springer 2014)ほか多数
ますます厳しくなる『地球環境制約』の中で『心豊か』に暮らすためには、従来型の今日を原点にして思考するフォーキャストではなく、制約の中での豊かさを考えるバックキャスト思考がきわめて重要となる。
バックキャスト思考でライフスタイルを考えるという手法により、すでに4000を超えるライフスタイルを描き、その社会受容性を測定し、現在の20-60歳代の方々が潜在的にどのような欲求を持っているのか、ほぼ明らかに出来た。(4-1)
4-1.人が潜在的に求めているものは・・・
最も強い価値は『利便性』であったが、驚いたのはこれとほぼ同じ強さで『楽しみ』と『自然』が続いたことである。無論、バックキャストで描いたライフスタイルにはインターネットやテレビゲームは現れない。
社会はそのようなものとは異なる『楽しみ』を求めているのである。『自然』も同様に、恐らく自然と何らかの形で関与したいと言うことなのだと考えた。また、これらに続いて『社会と一体』『自分成長』などの価値観が強く現れた。さらにこれらの価値を深掘りするために、新たに開発した90歳ヒアリング手法を導入した。(4-2)
4-2.「90歳ヒアリング」とは
戦前に成人になり、日本が高度経済成長の地盤を固めた1960年代に40歳代の働き盛りだった方々のヒアリングを通して、日本人の生活原理を炙り出そうというものである。
現在までに海外2箇所、国内全都道府県で460名の方々のヒアリングを終了し、現在解析中ではあるが、日本の文化を創ってきた生活原理が44個に集約でき(4-3)、この上に地域性が存在することもほぼわかってきた。
4-3.90歳ヒアリングが教えてくれる日本の文化を創ってきた生活原理
1 自然に寄り添って暮らす
2 自然を活かす知恵
3 山、川、海から得る食材
4 食の基本は自給自足
5 手間隙かけてつくる保存食
6 質素な毎日の食事
7 ハレの日はごちそう
8 野山で遊びほうける
9 水を巧みに利用する(水を使い分ける、水を確保する)
10 燃料は近くの山や林から
11 家の中心に火がある
12 自然物に手をあわせる
13 庭の木が暮らしを支える
14 暮らしを映す家のかたち
15 一年分を備蓄する
16 何でも手づくりする
17 直しながらていねいに使う
18 最後の最後まで使う
19 工夫を重ねる
20 身近に生きものがいる
21 暮らしの中に歌がある
22 助け合うしくみ
23 分け合う気持ち
24 つきあいの楽しみ
25 人をもてなす
26 出会いの場がある
27 祭りと市の楽しみ
28 行事を守る
29 身近な生と死
30 大ぜいで暮らす
31 家族を思いやる
32 みんなが役割を持つ
33 子どもも働く
34 ともに暮らしながら伝える
35 いくつもの生業を持つ
36 お金を介さないやりとり
37 町と村のつながり
38 小さな店、町場のにぎわい
39 振り売り、量り売り
40 どこまでも歩く
41 ささやかな贅沢
42 ちょっといい話
43 ちょうどいいあんばい
44 生かされて生きる
Emile H. Ishida, Earth Village Research Lab.
この90歳ヒアリング結果と、バックキャスライフスタイルの分析で明らかになった潜在欲求から、心豊かな暮らしの構造がやっと見えてきた。それは、厳しい環境制約の上に利便・自然・育という3本の柱を持ち(4-4)、「利便」から「育」に向かうほど(図中AからCに向かうほど)、心の豊か度が上昇することを示している。
4-4
次回は「第5回 「間抜け」の研究」です。
配信日程:4月8日(金) 予定
【プロフィール】
合同会社 地球村研究室 代表
東北大学名誉教授 石田 秀輝(いしだ ひでき)
2004年㈱INAX(現LIXIL)取締役CTO(最高技術責任者)を経て東北大学教授、2014年より現職、ものつくりとライフスタイルのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり『ネイチャー・テクノロジー』を提唱、2014年から『心豊かな暮らし方』の上位概念である『間抜けの研究』を奄美群島沖永良部島へ移住、開始した。
近著;「光り輝く未来が沖永良部島にあった!」(ワニブックス2015)、Nature Technology (Springer 2014)ほか多数