震災から5年「こころの復興」
2016/05/19 10:46
月刊杜の伝言板ゆるる2016年4月号より
震災から5年「こころの復興」
=NPO法人仙台傾聴の会 森山 英子=
震災から5年、被災3県の被災者アンケート調査によると「震災思い出しつらい」70%との結果がある。ハード面での整備復興は目に見える形で分かるが「こころの復興」は中々見えにくい部分ではある。
しかし、このアンケート調査の結果でわかるように、「深い心の傷」を抱えている人が7割もいる。
これまで、当会は震災発生後の3月下旬から宮城県医師会の依頼を受けて、避難所から「傾聴活動」を始めて今日まで継続して5年間、各仮設住宅集会所、又は借り上げ住宅者向けの仙台市市民活動サポートセンターでの「傾聴茶話会」等を毎月15回開催してきた。
ここには延べ3,912名のボランティアを派遣。被災者が多数いる高齢者施設に延べ8,667名、仮設、独居個人宅に1,029名のボランティアを派遣してきた。
さらに「傾聴サロン」の対面相談を毎月仙台市、名取市、岩沼市で開催し、誰にも相談すことが出来ない方々の話を聴く場の設定をして347名の相談を受けてきた。また電話相談も実施し、これまで1,172件の相談を受けた。(平成23〜平成27年)
人材育成として
宮城県内各市町村での「傾聴ボランティア養成講座」「傾聴基本講座」「こころの健康講座」「民生委員向け講座」「子育てサポーター養成講座」等を依頼により実施し、震災後5年間で「傾聴ボランティア養成講座」で872人を育成した。
その地域(登米市、富谷町、美里町、大和町、名取市、岩沼市、大河原町、柴田町、白石市、塩釜市、山元町)では、傾聴ボランティア団体が誕生して仮設や高齢者施設等で傾聴活動をしている。
この地域には被災者が多数在住し、震災当初は地域の方々が「被災者のために傾聴を学んで、少しでも力になりたい」との思いからの受講者が多かったが震災後3年ぐらいからは、被災者自身が「自分も人の役に立ちたい」との思いから進んで「傾聴ボランティア養成講座」を受講する方が多くなり、実際に「傾聴ボランティア」として活動する方々も多くなってきた。
これこそが被災者の自立に繋がった姿なのではないかと思われる。
昨年12月に初めて石巻市で実施した一般市民、災害ボランティア向け養成講座(3日間12時間コース)には若い世代の災害ボランティアが20名参加をした。
その方々のアンケート結果によると、大満足75%、満足25五%。内容の満足は実技の「ロールプレイング」が良かったとの結果が出た。ほとんどが初めての方々で、「傾聴」を知ることで活動に活かしていく、日常生活の中で活用できる、等大きな反響だった。
若い世代の反応の良さを感じながら楽しく出来た講座に感謝すると共に、若い方々への「傾聴」の広まりを期待したい。
「傾聴茶話会」のエピソード
・「市外からの入居で周りの人と話をすることは無く、また自分の話を聞いてくれる人もいない、故郷の話を知ろうとしても耳を傾けてくれる人も無く、話す気にならない。話題にも口を挟まない(よそ者だから余計な事を言ってはここにいられない)しかし、丁寧に何でも聴いてくれる〝傾聴の会の日〞を一番楽しみにしている」。
・「3年10ヶ月の間、誰にも話せなかった辛い気持ちを涙ながらに話をされ、最後に「ずっと誰にも話せなかったことを話したら心が軽くなった」と言われた。
・その他「傾聴茶話会」仮設等の方々からは「寄り添っていただけたから」「じっくりと話を聴いて貰ったから」「お茶会の場があったから」等々の声を頂いている。
これらのコメントが当会の活動の励みとなり、5年間活動の継続に繋がっていると思われる。
▲事業を通じた成果
ある被災者は、復興住宅への入居が決まってから初めて仮設での「傾聴茶話会」に参加をして、その後「仙台市市民活動サポートセンター」での「傾聴茶話会」へ参加した時、対面でじっくりと親身に話を聴いて貰った経験から「自分も聞き役になりたい」との思いになり、「傾聴ボランティア養成講座」を受講して活動を始めた。
そして自身の復興住宅集会所での自治会設立、「傾聴茶話会」の準備に奔走して復興住宅での第1回傾聴茶話会の開催に扱ぎ付けた。
現在は当会の「傾聴ボランティア」として復興住宅、高齢者の施設など精力的に活動をしており、「いつまでも被災者と呼ばれたくない」という思いに至っている。まさに彼こそが傾聴によって自立へ向かったと思われる。
▲平成27年4月~平成28年2月 延事業活動従事者数
当会の「傾聴茶話会」の特徴は、他の茶話会と違って物を作るとかの形を取らなかったのは「傾聴」に徹するということにある。会員は「傾聴」を学んで、自己研さんを日々行っており、そのための会員研修会は年間10回を超え、毎回活動の終了後は各リーダーを中心に振り返りを行うという手法を取っている。
さらに毎月支部定例会の中で活動の総振り返りやグループワークを実施し、毎年12月には全会員でのグループワークも行っている。これらが会員の活動への姿勢に繋がっていると思われるし、だからこそ5年間継続出来る力が付いたのだと思われる。
▲延べ受益者数9,806人
「こころの復興」
「こころの復興」を数字に表すことは難しいが、少なくとも地元のNPO法人として、震災から5年の当会員延べ23,222名の活動もその一部を担えたのではないか、と考えている。平成26年、27年と宮城県震災復興担い手NPO等支援事業補助金の交付(内閣府ホームページにも掲載)を頂いた経緯もある。
しかし、次年度から復興支援の補助金も打ち切りになるとの通達も受けている中で、当会は、この活動を今後も継続していくための手立てを検討している所ではある。
この度発行の「こころの復興 傾聴ボランティアの視点Ⅱ」の中には様々な形の「こころの復興」、各方面からの寄稿も含めて編集をしています。ご覧頂ければ幸いです。
▲今回発行した「こころの復興 傾聴ボランティアの視点Ⅱ」
※1冊目は無料(送料実費負担)、2冊目からは500円の寄付(送料実費負担)をお願いいたします。
詳細は、下記連絡先までお問合せください。
NPO法人仙台傾聴の会
〒981-1232 名取市大手町5-6-1 名取市市民活動支援センター内
●TEL:090-6253-5640
●FAX:022-343-9705
●E-mail:moriyama-e@tulip.sannet.ne.jp
●URL:http://sendaikeicho.web.fc2.com/
月刊杜の伝言板ゆるる2016年4月号
http://www.yururu.com/?p=1523
震災から5年「こころの復興」
=NPO法人仙台傾聴の会 森山 英子=
震災から5年、被災3県の被災者アンケート調査によると「震災思い出しつらい」70%との結果がある。ハード面での整備復興は目に見える形で分かるが「こころの復興」は中々見えにくい部分ではある。
しかし、このアンケート調査の結果でわかるように、「深い心の傷」を抱えている人が7割もいる。
これまで、当会は震災発生後の3月下旬から宮城県医師会の依頼を受けて、避難所から「傾聴活動」を始めて今日まで継続して5年間、各仮設住宅集会所、又は借り上げ住宅者向けの仙台市市民活動サポートセンターでの「傾聴茶話会」等を毎月15回開催してきた。
ここには延べ3,912名のボランティアを派遣。被災者が多数いる高齢者施設に延べ8,667名、仮設、独居個人宅に1,029名のボランティアを派遣してきた。
さらに「傾聴サロン」の対面相談を毎月仙台市、名取市、岩沼市で開催し、誰にも相談すことが出来ない方々の話を聴く場の設定をして347名の相談を受けてきた。また電話相談も実施し、これまで1,172件の相談を受けた。(平成23〜平成27年)
人材育成として
宮城県内各市町村での「傾聴ボランティア養成講座」「傾聴基本講座」「こころの健康講座」「民生委員向け講座」「子育てサポーター養成講座」等を依頼により実施し、震災後5年間で「傾聴ボランティア養成講座」で872人を育成した。
その地域(登米市、富谷町、美里町、大和町、名取市、岩沼市、大河原町、柴田町、白石市、塩釜市、山元町)では、傾聴ボランティア団体が誕生して仮設や高齢者施設等で傾聴活動をしている。
この地域には被災者が多数在住し、震災当初は地域の方々が「被災者のために傾聴を学んで、少しでも力になりたい」との思いからの受講者が多かったが震災後3年ぐらいからは、被災者自身が「自分も人の役に立ちたい」との思いから進んで「傾聴ボランティア養成講座」を受講する方が多くなり、実際に「傾聴ボランティア」として活動する方々も多くなってきた。
これこそが被災者の自立に繋がった姿なのではないかと思われる。
昨年12月に初めて石巻市で実施した一般市民、災害ボランティア向け養成講座(3日間12時間コース)には若い世代の災害ボランティアが20名参加をした。
その方々のアンケート結果によると、大満足75%、満足25五%。内容の満足は実技の「ロールプレイング」が良かったとの結果が出た。ほとんどが初めての方々で、「傾聴」を知ることで活動に活かしていく、日常生活の中で活用できる、等大きな反響だった。
若い世代の反応の良さを感じながら楽しく出来た講座に感謝すると共に、若い方々への「傾聴」の広まりを期待したい。
「傾聴茶話会」のエピソード
・「市外からの入居で周りの人と話をすることは無く、また自分の話を聞いてくれる人もいない、故郷の話を知ろうとしても耳を傾けてくれる人も無く、話す気にならない。話題にも口を挟まない(よそ者だから余計な事を言ってはここにいられない)しかし、丁寧に何でも聴いてくれる〝傾聴の会の日〞を一番楽しみにしている」。
・「3年10ヶ月の間、誰にも話せなかった辛い気持ちを涙ながらに話をされ、最後に「ずっと誰にも話せなかったことを話したら心が軽くなった」と言われた。
・その他「傾聴茶話会」仮設等の方々からは「寄り添っていただけたから」「じっくりと話を聴いて貰ったから」「お茶会の場があったから」等々の声を頂いている。
これらのコメントが当会の活動の励みとなり、5年間活動の継続に繋がっていると思われる。
▲事業を通じた成果
ある被災者は、復興住宅への入居が決まってから初めて仮設での「傾聴茶話会」に参加をして、その後「仙台市市民活動サポートセンター」での「傾聴茶話会」へ参加した時、対面でじっくりと親身に話を聴いて貰った経験から「自分も聞き役になりたい」との思いになり、「傾聴ボランティア養成講座」を受講して活動を始めた。
そして自身の復興住宅集会所での自治会設立、「傾聴茶話会」の準備に奔走して復興住宅での第1回傾聴茶話会の開催に扱ぎ付けた。
現在は当会の「傾聴ボランティア」として復興住宅、高齢者の施設など精力的に活動をしており、「いつまでも被災者と呼ばれたくない」という思いに至っている。まさに彼こそが傾聴によって自立へ向かったと思われる。
▲平成27年4月~平成28年2月 延事業活動従事者数
当会の「傾聴茶話会」の特徴は、他の茶話会と違って物を作るとかの形を取らなかったのは「傾聴」に徹するということにある。会員は「傾聴」を学んで、自己研さんを日々行っており、そのための会員研修会は年間10回を超え、毎回活動の終了後は各リーダーを中心に振り返りを行うという手法を取っている。
さらに毎月支部定例会の中で活動の総振り返りやグループワークを実施し、毎年12月には全会員でのグループワークも行っている。これらが会員の活動への姿勢に繋がっていると思われるし、だからこそ5年間継続出来る力が付いたのだと思われる。
▲延べ受益者数9,806人
「こころの復興」
「こころの復興」を数字に表すことは難しいが、少なくとも地元のNPO法人として、震災から5年の当会員延べ23,222名の活動もその一部を担えたのではないか、と考えている。平成26年、27年と宮城県震災復興担い手NPO等支援事業補助金の交付(内閣府ホームページにも掲載)を頂いた経緯もある。
しかし、次年度から復興支援の補助金も打ち切りになるとの通達も受けている中で、当会は、この活動を今後も継続していくための手立てを検討している所ではある。
この度発行の「こころの復興 傾聴ボランティアの視点Ⅱ」の中には様々な形の「こころの復興」、各方面からの寄稿も含めて編集をしています。ご覧頂ければ幸いです。
▲今回発行した「こころの復興 傾聴ボランティアの視点Ⅱ」
※1冊目は無料(送料実費負担)、2冊目からは500円の寄付(送料実費負担)をお願いいたします。
詳細は、下記連絡先までお問合せください。
NPO法人仙台傾聴の会
〒981-1232 名取市大手町5-6-1 名取市市民活動支援センター内
●TEL:090-6253-5640
●FAX:022-343-9705
●E-mail:moriyama-e@tulip.sannet.ne.jp
●URL:http://sendaikeicho.web.fc2.com/
月刊杜の伝言板ゆるる2016年4月号
http://www.yururu.com/?p=1523