なぜ18歳から選挙?
2016/07/10 15:11
なぜ18歳から選挙?
今の日本は、「高齢社会」以上の「超高齢社会」です。
今年の国勢調査でも、人口減少社会に突入したことが発表されました。これから生産人口、労働人口は減少し、日本の経済力は衰えていきます。今まで同様の社会保障は望めず、国民負担が増すのは確実です。
独の社会学者ウェーバーは、「正当性」(「支配」に納得して服従する理由)を3つに分類しました。税金をとられたり、法律によって自由が縛られたりすることに正当性がないと、我々は支配に不満を持ってしまいます。
一つ目は「伝統的支配」で、王様に代表されるような神聖性や歴史的秩序に根差すものです。二つ目は「カリスマ的支配」は、超人的能力を有する個人への帰依が得だと考えさせるものです。
今もこれらは影響力を持ちますが、現代の最大の正当性は三つ目の「合法的支配」に求められます。
法のように、支配の手順を事前に決めておき、その手続き、過程に正当性を求めるものです。選挙で代表を選び、代表である議員が政治を行う代表制民主主義がこれです。
しかし、選挙に行かない人が増えるとどうなるでしょうか?
棄権者の中には、「自分達の代表ではない奴が勝手に決めたことだから、従う必要はない。自分達は表を入れてないから、奴ら政治家は我々の代表ではない」と主張する人が出るでしょう。投票率が下がると、こうした意見を持つ人の数が増えて、社会全体で困ってきます。
最初に述べた超高齢社会で、一番の負担者となるのは若者です。18歳、19歳の若者も、就労している場合は所得税などの諸税を、就学している場合でも消費税や各種間接税は負担しています。
なのに、若者には選挙権がありません。決定に関与できないのに、負担だけ押しつけられたらどう思うでしょうか?
選挙権引き下げで負担者である若者に選挙権を与えれば、自らの代表を選べる権利を得られます。若者有権者が増えれば、若者の利益を反映する政策が実現されるかもしれません。今回の選挙権付与と投票行動は、若者自身の未来の為にも重要なのです。
●民主主義の学校
選挙権引き下げには、別の意義もあります。仏の思想家トクヴィルは、身近な政治への参加を通じて人々は自由の行使に親しんでいくと述べました。後に英の法学者ブライスはこれを更に発展させ、「地方自治は民主主義の学校」と述べました。
選挙に参加し、その結果を自ら被ることで、人々は多くのことを考え、学び、成長していきます。
「選挙」は現代民主主義国家を支える「市民」として成長するための学びの場であり、「選挙権」はそこへの入場券なので重要です。「裁判員」制度同様、市民として成長し、責任を担うための重要な機会なのです。
但し、参議院選挙はその場としては最も不適当です。
民主主義の学校機能は、最も身近な、自分達の投票結果がダイレクトに自分達に跳ね返る地方自治で最も効果的です。中学や高校の仲間で協力すれば議員を送れ、政治に関与できるからです。選挙区が大きく、17万票を集めても落選する参議院選挙では、その効果は感じにくいです。
それでも、選挙への参加は、良い学びとなるはずです。自分で投票すると、選挙速報も楽しくなりますよ。
●権利は勝ち取るもの
選挙に行かない理由として「自分達の声なんて反映してもらえない」という声がよく聞かれました。今回の選挙権拡大で、若者の声に耳を貸し、利益を代弁する政治家を選べる土台はできました。
しかし、これで黙っていても自分達の利益が反映される訳ではありません。権利は勝ち取るものです。選挙に行って、自分達の声を表明しない限り、その意見は反映されません。
若者の意見を背景にして立候補した候補者が、若者が選挙に行かなかったために落選すれば、次からは若者の声に耳を貸さなくなります。
今はネット選挙が解禁され、選挙情報も簡単に得られます。候補者はHPや各種SNS、動画、ブログなどで積極的に情報発信しますし、それを客観的に分析、比較、批評するサイトもあります。
それらで情報を集め、自分の意見を決め、それに最も近い候補者、政党を選んで投票に行きましょう!(投票日に都合が悪い人は、事前投票を活用しましょう。仙台市民ならAERでも簡単に投票できます)
【プロフィール】
萩野 寛雄
東北福祉大学 総合福祉学部 福祉行政学科教授
1970年2月21日、東京都生まれ。仙台第二高等学校、早稲田大学、同大学院修了、博士(政治学)。大阪商業大学助手、専任講師を経て2003年から東北福祉大学助教授、2011年より教授。
2012年以降は教務副部長として、初年時教育のリエゾンゼミⅠや防災減災教育、インターネット教育、仙台市荒井地区での復興まちづくり支援、国内大学との連携事業、プリンセス・プリンセスの助成を受けてのこども支援プロジェクトなどを担当している。
今の日本は、「高齢社会」以上の「超高齢社会」です。
今年の国勢調査でも、人口減少社会に突入したことが発表されました。これから生産人口、労働人口は減少し、日本の経済力は衰えていきます。今まで同様の社会保障は望めず、国民負担が増すのは確実です。
独の社会学者ウェーバーは、「正当性」(「支配」に納得して服従する理由)を3つに分類しました。税金をとられたり、法律によって自由が縛られたりすることに正当性がないと、我々は支配に不満を持ってしまいます。
一つ目は「伝統的支配」で、王様に代表されるような神聖性や歴史的秩序に根差すものです。二つ目は「カリスマ的支配」は、超人的能力を有する個人への帰依が得だと考えさせるものです。
今もこれらは影響力を持ちますが、現代の最大の正当性は三つ目の「合法的支配」に求められます。
法のように、支配の手順を事前に決めておき、その手続き、過程に正当性を求めるものです。選挙で代表を選び、代表である議員が政治を行う代表制民主主義がこれです。
しかし、選挙に行かない人が増えるとどうなるでしょうか?
棄権者の中には、「自分達の代表ではない奴が勝手に決めたことだから、従う必要はない。自分達は表を入れてないから、奴ら政治家は我々の代表ではない」と主張する人が出るでしょう。投票率が下がると、こうした意見を持つ人の数が増えて、社会全体で困ってきます。
最初に述べた超高齢社会で、一番の負担者となるのは若者です。18歳、19歳の若者も、就労している場合は所得税などの諸税を、就学している場合でも消費税や各種間接税は負担しています。
なのに、若者には選挙権がありません。決定に関与できないのに、負担だけ押しつけられたらどう思うでしょうか?
選挙権引き下げで負担者である若者に選挙権を与えれば、自らの代表を選べる権利を得られます。若者有権者が増えれば、若者の利益を反映する政策が実現されるかもしれません。今回の選挙権付与と投票行動は、若者自身の未来の為にも重要なのです。
●民主主義の学校
選挙権引き下げには、別の意義もあります。仏の思想家トクヴィルは、身近な政治への参加を通じて人々は自由の行使に親しんでいくと述べました。後に英の法学者ブライスはこれを更に発展させ、「地方自治は民主主義の学校」と述べました。
選挙に参加し、その結果を自ら被ることで、人々は多くのことを考え、学び、成長していきます。
「選挙」は現代民主主義国家を支える「市民」として成長するための学びの場であり、「選挙権」はそこへの入場券なので重要です。「裁判員」制度同様、市民として成長し、責任を担うための重要な機会なのです。
但し、参議院選挙はその場としては最も不適当です。
民主主義の学校機能は、最も身近な、自分達の投票結果がダイレクトに自分達に跳ね返る地方自治で最も効果的です。中学や高校の仲間で協力すれば議員を送れ、政治に関与できるからです。選挙区が大きく、17万票を集めても落選する参議院選挙では、その効果は感じにくいです。
それでも、選挙への参加は、良い学びとなるはずです。自分で投票すると、選挙速報も楽しくなりますよ。
●権利は勝ち取るもの
選挙に行かない理由として「自分達の声なんて反映してもらえない」という声がよく聞かれました。今回の選挙権拡大で、若者の声に耳を貸し、利益を代弁する政治家を選べる土台はできました。
しかし、これで黙っていても自分達の利益が反映される訳ではありません。権利は勝ち取るものです。選挙に行って、自分達の声を表明しない限り、その意見は反映されません。
若者の意見を背景にして立候補した候補者が、若者が選挙に行かなかったために落選すれば、次からは若者の声に耳を貸さなくなります。
今はネット選挙が解禁され、選挙情報も簡単に得られます。候補者はHPや各種SNS、動画、ブログなどで積極的に情報発信しますし、それを客観的に分析、比較、批評するサイトもあります。
それらで情報を集め、自分の意見を決め、それに最も近い候補者、政党を選んで投票に行きましょう!(投票日に都合が悪い人は、事前投票を活用しましょう。仙台市民ならAERでも簡単に投票できます)
【プロフィール】
萩野 寛雄
東北福祉大学 総合福祉学部 福祉行政学科教授
1970年2月21日、東京都生まれ。仙台第二高等学校、早稲田大学、同大学院修了、博士(政治学)。大阪商業大学助手、専任講師を経て2003年から東北福祉大学助教授、2011年より教授。
2012年以降は教務副部長として、初年時教育のリエゾンゼミⅠや防災減災教育、インターネット教育、仙台市荒井地区での復興まちづくり支援、国内大学との連携事業、プリンセス・プリンセスの助成を受けてのこども支援プロジェクトなどを担当している。