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18歳からの選挙とアクティブ・ラーニング

2016/07/10 15:21

18歳からの選挙とアクティブ・ラーニング

18歳に選挙権が引き下げられたことにより,今日,国民性・市民性を養う主権者教育の重要性が指摘されています。

これまでの選挙の投票率は高齢層が高く,我が国は,高齢層の意思決定が反映されやすい状況にあります(第1図参照)。18歳からの選挙に移り,20~30歳代の投票率が向上して幅広い年齢層からの社会参加が得られると,民主主義の充実が期待できます。


第1図 参議院議員通常選挙(地方区・選挙区)の投票率の推移
(明るい選挙推進協会サイトより転載。2016.6.26確認)

そのために,学校教育では,民主主義・政治制度などの政治的教養や社会的な資質を児童生徒に一層身に付けさせる必要があります。例えば,次期学習指導要領の高等学校公民科では,新たな科目「公共」が設定され,18歳からの選挙に必要な内容や方法の学習がさらに充実する動きとなっています。

公民科や社会科には,社会問題や社会政策の是非など,社会的な判断力や意思決定の過程を学ばせる,経験や問題解決過程を用いた教育方法が古くからみられます。それは,現代の世界的教育潮流でもあり,中心発問と探究過程を軸にしたアクティブ・ラーニングへと繋がります。

文部科学省によれば,アクティブ・ラーニングとは,教員による一方的な講義形式の教育とは異なり,学習者の能動的な学習への参加を取り入れた教授・学習法の総称となります(第1表,第2図参照)。

例えば,頭の中に情報を入れ,理解するだけでなく,自分なりに考えたことを表現し,他者との意見交換を通して,より論理的に筋道立って考え,社会的な価値を共有しながら判断を下す。

さらに自らの意思決定を下し,そのもとで態度や行動へと繋げていく。このようなアクティブ・ラーニングを通じて,国民性・市民性に必要な社会的スキルや社会参加に関わる資質の育成が期待されます。




第2図 育成すべき資質・能力の三つの柱
文部科学省サイトより転載(2016.6.26

文献・資料
公益財団法人明るい選挙推進協会(2016):参院選データ. Voters, No.32, pp.14-15.
こちらから(文部科学省サイト2016.6.26確認)


<プロフィール>
宮城教育大学 社会科教育講座 教授 吉田 剛(よしだ つよし)
専門:社会科教育学,学校教育学 
1967年9月,新潟県小千谷市生まれ。
兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科博士課程修了。
宮城教育大学准教授を経て,2013年4月から現職。
日本社会科教育学会評議員,日本公民教育学会員。