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石巻の復興は子育て支援でリードしよう! 荒木 裕美(NPO法人ベビースマイル石巻)

2016/07/19 09:56

月刊杜の伝言板ゆるる2016年7月号

石巻の復興は子育て支援でリードしよう! 
荒木 裕美(NPO法人ベビースマイル石巻・代表理事)


NPO法人ベビースマイル石巻は妊娠期〜未就学児親子の子育て支援を行っています。
震災当時、私は二歳になる長男を子育て中で妊婦8ヶ月の主婦でした。乳幼児に特化した「情報」が入ってこない・「物資」がない・「遊び場」がない状況をうけ、乳幼児親子は地域とのつながりが弱い時期なのだと体感しました。

そこで、①緊急時に乳幼児に特化して支援する団体が石巻に必要!②子育て当事者ネットワークを作って、「私たち、ここにいます!」と乳幼児親子の存在を地域の中で見える化!が必要だと感じました。

震災によって、新たなまちづくりが行われる。この時に、子育ての視点を復興まちづくりにしっかり入れ込み、たくさんの新たな命が産まれ、命を大切に育てる。子育てを楽しめる地域として人々が集まる地域をつくりたい。これが活動の原点です。



地域を変化させる

さて、5年を振り返ると石巻の乳幼児親子を取り巻く子育て事情も大きく変化してきました。いえ、子育てママのネットワークがしっかりと地域で機能し、ニーズをがっつり届け、変化させてきたと言えるでしょう。

震災後、石巻で妊娠・出産・子育てすることへの不安感から、私たちの当事者ネットワークはつながりをもって、広がっていきました。2011年5月に任意団体を立ち上げ、2012年4月にNPO法人を設立。助成金などを活用し、公民館や仮設集会室などを利用して、乳幼児親子の居場所づくり、親子のイベント・サロン・子育て講座・相談などを行い、震災のコミュニティの変化による孤立と、孤立による虐待を防ぎ、地域とつなげる活動を展開。

2013年には年間約3,500組の親子(7,000人)の交流の場づくりと、メーリングリスト登録数は800件を超えていきました。(石巻の年間出生数は約1,000人)

石巻市では震災後まずは保育所の整備から始まり、多忙な復興業務の中、地域の子育ての支援は民間に委ねられていました。子育て支援の団体や個人の活動の中でも、妊婦や乳幼児、未就学親子を対象とした団体は少なく、それだけ当時者だからこそ立ち上げてこれた分野なのではないかと思います。

石巻行政が子育てに関してNPOをパートナーとして考える契機となったのは、平成27年度内閣府「子ども・子育て新制度」でした。新制度の内容は、認定こども園など保育に関することに加え“地域の子育て支援の充実”。まさに、地域の子育て当事者のニーズを集め、必要な支援をつなぎ、作ってきた私たちの活動でした。

そして平成27年度に市より「地域子育て支援拠点事業」を受託。地域に根差した支援拠点、マタニティ・子育てひろば「スマイル」の運営が始まりました。

最近特に感じるのは、ママが震災経験を語ってくれるようになってきたことです。震災直後から、「震災ケア」を目的の一つとして活動してきました。しかし、遊び場やサロンの場で震災の話はあまり出てこなかったのです。

今、震災の話も会話の中に自然と織り込まれておしゃべりしている様子を見ると、人に話せるようになるには時間がかかること、話せる場を作ってこれたことにほっとします。震災によって住居環境が大きく変化した方、親が犠牲となった方、子育てへの影響は計り知れません。

子育ては気力体力と言われますが、気力のほうが大切なのです。しっかりと寄り添える関係づくりと地域資源との連携を深めたいと思います。

命を大切にする連携・協働

近頃は、その連携、協働のあり方についても地域で改めて見直さなくてはいけないと感じています。石巻では、子どもの貧困や不登校についての課題があることを知りました。問題が目に見えてくるのは就学後。しかし、その前からきっと問題の芽は育っているはずです。

問題を未然に防いでいくための妊娠期・乳幼児期からのセーフティネット作りは大変重要だと感じます。そして、団体の連携や協働は、「連携・協働」をすることが最終目的ではありません。

一つの命をどう救うのか、長期的に見守るために、個々のケアプランに合わせて実践的に連携していく必要があると感じます。ずっと感じてきたけれど、出来てこなかった。でも今、何か連携の糸が見えてきた気がします。

地域から子どもに関わろう

活動では支援が1人でも多くの方に届くように、工夫しています。しかし、支援を受けようとする方には比較的届きやすくても、支援が本当に必要な方は、支援を必要とせず孤立しているケースが多く、当事者ネットワークにもなかなか入ってきません。

私たちの直接支援出来る人は限られています。私たちは地域にニーズを届けて発信していきますので、是非そのパスを受け取って、より親子の日常に身近な地域の方に見守り・寄り添いをお願いしたいと思います。

子育てひろばに来る親子の一番の動機は「四六時中、部屋で赤ちゃんと2人きりでお世話のくり返し。息が詰まりそうになり、家以外に出たいと思った」、「とにかく、だれか、自分以外の大人と話がしたかった」です。あら?そんなこと?はい。現代での子育ては多くの場合この状況になり、放っておくとたくさんの問題の引き金となっていきます。

地域には、子どもや子育てに関われる方がもっといるのではないでしょうか!?
日本では少子化は大きな課題で、石巻では震災による若者の流出も課題です。30年後には地方消滅と言われ、子どもや子育てのことは未来につながる重要課題です。

「わかっちゃいるけど、誰かやってくれるでしょ〜、っていうか荒木さんやって」、「30年後か〜俺(私)生きてないだろうから、別にいいや〜」なんて言わないでください!身
近にいる赤ちゃんと目を合わせてみてください!その子が生きる将来なのです!一肌脱ぎませんか?

じゃあ、どうしたらいいかって!?「子ども」・「子育て」という言葉を口に出してみてください!子育てに関わる人たちが「おや?」と寄ってくると思いますので、「何かできるこ
とがあれば」と言ってください(笑)

私、ばかげたこと書いていますよね。でも世の中ってこんなことで変わっていくな〜って最近思うのです。ごめんなさい!

カギを握るのはあなた

団体が無いと地域を動かすことはできないのか、というとそうではないと感じています。私は個人の動きと団体の動きの相乗効果でここまで活動してきました。個人の動きというと、ただ、いろんな場で「子ども」「子育て」というキーワードを発言してくることです。

例えば公園をつくるといった会議。当然子どもや子育ての視点が入っていると思いますが、そうではないことも多いのです。会議のメンバーによっては「高齢者」に限定した視点になることもあります。

また、そういった会議の場に子育て中のママは参加していないのです。その場に「いる」だけでも場が変わってきます。
子育て中のママには是非、社会参加!してみてほしいです。命を産み育てる世代は地域復興のカギを握っていると私は信じています。

NPO法人ベビースマイル石巻
〒986-0861 石巻市蛇田字土和田19-11
●TEL:0225-24-8304
●FAX:0225-24-8305
●E-mail:ishinomaki@forbabysmile.com
●URL:http://www.forbabysmile.com/


月刊杜の伝言板ゆるる2016年7月号
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