障がいをもちながらも安心して働ける職場をめざして
その他
2016/08/18 10:09
障がいをもちながらも安心して働ける職場をめざして
菊地 茂(NPO法人シャロームの会 理事長)
2000年に私の行政書士事務所で、精神の障がい者手帳をもった女性を職親としてお預かりしたのが、現在のシャロームの会の始まりです。
職親制度というのは、事業主が市町村から委託を受けて、障がいをもった方々をお預かりする制度です。
第1号のKさんは、私たちのNPOを卒業して現在一般就労をして頑張っています。
この時の体験で私が学んだことは、「障がいを持っていようといまいが、その人の人格には何ら変わりないこと。彼らが仕事を通して社会とつながり、そのことを通して自信や生きがいを見つけると、更に本来の力を発揮していく」ということです。
始めはおむすびの店
2004年に小規模作業所として認可をいただきました。まず友人・知人などにNPOの会員となっていただき、会員向けのギフト販売を始めました。次に近所の空き倉庫を改装して「玄米カレーとおむすびの店」をオープンしました。
それが現在、新寺にある「太陽とオリーブ」です。
障害者自立支援法が施行された翌年2006年には、まっ先に手を挙げて2007年4月から新制度に移行しました。新しい制度には早く乗っかった方が良いという私の持論からです。
新しい制度がなんたるかも十分理解しないままでの移行でしたが、支援費は2ヶ月後、それまで蓄えていた資金を店の改装費用で使ってしまったので暫く運営は大変でした。
しかし、地域のボランティアさんに支えていただきながら、なんとかみんなで時折閑古鳥が鳴く店を回していた懐かしい時代です。
2011年東日本大震災の時には、メンバーさんを全員無事送り届け、3日目の月曜日から炊きだしを始めました。約半月、地域の皆様に炊きだし活動を続けることができたのは、遠方からのボランティアさんたちの助けに負うところが非常に大きかったです。
その年にみやぎNPOプラザの「オリーブの風」と「グループホーム・ハーモニー」を開設。翌年に三越141フロアーの「オリーブガーデン」を、西宮城野に「キッチンハーモニー・ポコ」をオープンしました。
サロンの参加者とイタリアへ
シャロームの会では年に数回、地域に開かれた「オリーブサロン」を開催しています。落語を聞く会・ミニコンサート・諸外国の料理教室〈韓国・ベネズエラ・ブータン・・〉等々・・・いずれも地域で音楽や文化活動をしている方々に講師をお願いしています。
2012年に「ボローニャに学ぶ町づくり」という会を開催した時、井上ひさし氏の《ボローニャ紀行》のDVDを見ました。その時、参加者から「ボローニャに行ってみたいね〜」という声があがり、2013年9月、サロン参加者とメンバーさんご父兄・総勢15名でイタリアに行くことになりました。
折角行くからには観光だけではなく、現地の社会的企業を見学しようということで、企画をしてくれた会の理事さんにお願いをしたら、ヨーロッパ最古の大学と言われているボローニャ大学で全盲のクォモ先生(障害者教育専門)の講義を聴く機会を得ました。
クォモ先生がおっしゃった「障がいを治そうとしない」「障がいのある人をそのまま受け入れる」という言葉は、シャロームの会の「あなたは、そのままですばらしい存在です」と重なるように感じました。
また精神・知的障がいを持つ人たちが運営する〈コーパップス協同組合農園〉と〈レストラン・イルモンテ〉を訪問。井上ひさし氏が「ホームレスも障がい者も、大人も子どもも共に手を取り合って生きる街・ボローニャ」と語ったように、町全体が一人ひとりの生き方を大切にし、社会的弱者や障がい者に対するオープンな雰囲気と温かみを感じる町でした。
▲イタリアでのレクチャー
台湾の社会的企業を視察
2014年、大変好評だったイタリア研修に続き今度は台湾に行って社会的企業を見学しようということになりました。
まず台北市から委託を受けてガソリンスタンド等を運営している「勝利財団」を見学。この団体の理念は「命の価値を大事にすること」「人間の潜在的能力を活かすこと」。
一般のスタンドと同じように60人もの〈視覚障がいを除く8種類の障がいをもった〉メンバーさんたちが24時間・365日働いていました。もちろん給油のほか、洗車もOKです。
次に訪問した「若水国際」は立派なオフィスビルの中に入っていて、都市銀行のクレジット・データ入力などをしていました。データ入力処理では正解率99・99%という信頼を得、キャドを使っての電気の設計図も作成していました。
一般企業に負けないスキルと営業力。オフィスで働くメンバーさんたちは皆さん車椅子の方々でしたが、バリアフリー以外は一般の企業となんら変わらない。素晴らしく先駆的な社会的企業だと感心しました。
当事者中心の支援体制
さて日本では、2013年に自立支援法から総合支援法へと移行しました。
旧「障害者自立支援法」では、自立した生活を営む事ができるように支援を行うが、新法では、基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしくと明記されています。
障がいの有無によって分け隔てられることなく、共生する社会を実現する。どこで誰と生活するかを本人が選択できる。また今まで「制度の谷間」と言われてきた難病の方々も障害福祉サービスの対象となりました。
相談支援事業所も増え、一人ひとりのケアプランを複数の支援機関が連携をして支援していきます。
福祉先進国と言われているイタリアやイギリスなどの先例に習って、当事者中心の支援体制が少しずつ整えられてきたのではないかと思います。
私たちのシャロームの会では、この8月から、A型〈最低賃金を保証され、雇用契約を結ぶ形態の支援〉事業として、中央卸売市場の2階の飲食店のフロアーに、洋風厨房オリーブの杜をオープンします。障がいをもちながらも安心して働ける、生きがいのある職場を目指して。
出来るだけご本人の体調にあわせたシフトを組みながら、尚且つ一般の店舗に負けない位のサービスを提供できるお店を目指していきます。
これからもご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
▲新しくオープンする「オリーブの杜」
▲新しくオープンする「オリーブの杜」内部
NPO法人シャロームの会
〒984-0051 仙台市若林区新寺2-3-1 長屋ビル
●TEL:022-293-4345
●FAX:022-293-4346
●E-mail:sharoomudesu@mountain.ocn.ne.jp
●URL:http://www.sharome.net/npo/index.html
月刊杜の伝言板ゆるる2016年8月号
http://www.yururu.com/?p=1801
菊地 茂(NPO法人シャロームの会 理事長)
2000年に私の行政書士事務所で、精神の障がい者手帳をもった女性を職親としてお預かりしたのが、現在のシャロームの会の始まりです。
職親制度というのは、事業主が市町村から委託を受けて、障がいをもった方々をお預かりする制度です。
第1号のKさんは、私たちのNPOを卒業して現在一般就労をして頑張っています。
この時の体験で私が学んだことは、「障がいを持っていようといまいが、その人の人格には何ら変わりないこと。彼らが仕事を通して社会とつながり、そのことを通して自信や生きがいを見つけると、更に本来の力を発揮していく」ということです。
始めはおむすびの店
2004年に小規模作業所として認可をいただきました。まず友人・知人などにNPOの会員となっていただき、会員向けのギフト販売を始めました。次に近所の空き倉庫を改装して「玄米カレーとおむすびの店」をオープンしました。
それが現在、新寺にある「太陽とオリーブ」です。
障害者自立支援法が施行された翌年2006年には、まっ先に手を挙げて2007年4月から新制度に移行しました。新しい制度には早く乗っかった方が良いという私の持論からです。
新しい制度がなんたるかも十分理解しないままでの移行でしたが、支援費は2ヶ月後、それまで蓄えていた資金を店の改装費用で使ってしまったので暫く運営は大変でした。
しかし、地域のボランティアさんに支えていただきながら、なんとかみんなで時折閑古鳥が鳴く店を回していた懐かしい時代です。
2011年東日本大震災の時には、メンバーさんを全員無事送り届け、3日目の月曜日から炊きだしを始めました。約半月、地域の皆様に炊きだし活動を続けることができたのは、遠方からのボランティアさんたちの助けに負うところが非常に大きかったです。
その年にみやぎNPOプラザの「オリーブの風」と「グループホーム・ハーモニー」を開設。翌年に三越141フロアーの「オリーブガーデン」を、西宮城野に「キッチンハーモニー・ポコ」をオープンしました。
サロンの参加者とイタリアへ
シャロームの会では年に数回、地域に開かれた「オリーブサロン」を開催しています。落語を聞く会・ミニコンサート・諸外国の料理教室〈韓国・ベネズエラ・ブータン・・〉等々・・・いずれも地域で音楽や文化活動をしている方々に講師をお願いしています。
2012年に「ボローニャに学ぶ町づくり」という会を開催した時、井上ひさし氏の《ボローニャ紀行》のDVDを見ました。その時、参加者から「ボローニャに行ってみたいね〜」という声があがり、2013年9月、サロン参加者とメンバーさんご父兄・総勢15名でイタリアに行くことになりました。
折角行くからには観光だけではなく、現地の社会的企業を見学しようということで、企画をしてくれた会の理事さんにお願いをしたら、ヨーロッパ最古の大学と言われているボローニャ大学で全盲のクォモ先生(障害者教育専門)の講義を聴く機会を得ました。
クォモ先生がおっしゃった「障がいを治そうとしない」「障がいのある人をそのまま受け入れる」という言葉は、シャロームの会の「あなたは、そのままですばらしい存在です」と重なるように感じました。
また精神・知的障がいを持つ人たちが運営する〈コーパップス協同組合農園〉と〈レストラン・イルモンテ〉を訪問。井上ひさし氏が「ホームレスも障がい者も、大人も子どもも共に手を取り合って生きる街・ボローニャ」と語ったように、町全体が一人ひとりの生き方を大切にし、社会的弱者や障がい者に対するオープンな雰囲気と温かみを感じる町でした。
▲イタリアでのレクチャー
台湾の社会的企業を視察
2014年、大変好評だったイタリア研修に続き今度は台湾に行って社会的企業を見学しようということになりました。
まず台北市から委託を受けてガソリンスタンド等を運営している「勝利財団」を見学。この団体の理念は「命の価値を大事にすること」「人間の潜在的能力を活かすこと」。
一般のスタンドと同じように60人もの〈視覚障がいを除く8種類の障がいをもった〉メンバーさんたちが24時間・365日働いていました。もちろん給油のほか、洗車もOKです。
次に訪問した「若水国際」は立派なオフィスビルの中に入っていて、都市銀行のクレジット・データ入力などをしていました。データ入力処理では正解率99・99%という信頼を得、キャドを使っての電気の設計図も作成していました。
一般企業に負けないスキルと営業力。オフィスで働くメンバーさんたちは皆さん車椅子の方々でしたが、バリアフリー以外は一般の企業となんら変わらない。素晴らしく先駆的な社会的企業だと感心しました。
当事者中心の支援体制
さて日本では、2013年に自立支援法から総合支援法へと移行しました。
旧「障害者自立支援法」では、自立した生活を営む事ができるように支援を行うが、新法では、基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしくと明記されています。
障がいの有無によって分け隔てられることなく、共生する社会を実現する。どこで誰と生活するかを本人が選択できる。また今まで「制度の谷間」と言われてきた難病の方々も障害福祉サービスの対象となりました。
相談支援事業所も増え、一人ひとりのケアプランを複数の支援機関が連携をして支援していきます。
福祉先進国と言われているイタリアやイギリスなどの先例に習って、当事者中心の支援体制が少しずつ整えられてきたのではないかと思います。
私たちのシャロームの会では、この8月から、A型〈最低賃金を保証され、雇用契約を結ぶ形態の支援〉事業として、中央卸売市場の2階の飲食店のフロアーに、洋風厨房オリーブの杜をオープンします。障がいをもちながらも安心して働ける、生きがいのある職場を目指して。
出来るだけご本人の体調にあわせたシフトを組みながら、尚且つ一般の店舗に負けない位のサービスを提供できるお店を目指していきます。
これからもご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
▲新しくオープンする「オリーブの杜」
▲新しくオープンする「オリーブの杜」内部
NPO法人シャロームの会
〒984-0051 仙台市若林区新寺2-3-1 長屋ビル
●TEL:022-293-4345
●FAX:022-293-4346
●E-mail:sharoomudesu@mountain.ocn.ne.jp
●URL:http://www.sharome.net/npo/index.html
月刊杜の伝言板ゆるる2016年8月号
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