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高齢者が安心・安全に運転できる3つの意識  「第3回 2つ目:判断の意識」

東北大学

2016/12/14 11:28

第3回「2つ目:判断の意識」

「2種類の判断」
認知により目から入ってきた情報が何なのかを自分の記憶の中から一致するものを探し出すのが判断の初期段階で,次に記憶と一致したものの性質を判断し,最終的にはそのもの自体がどのような行動をするのか予測するまでが判断の過程となります.

下図のような交差点に進入する際,道路標識または路面標識を認知して,「止まれ」という文字が記憶の中のものと一致するものがあるか探す作業が判断の第一歩になります.次に,自分が乗っている車はブレーキを踏めば止まることができることを知っているため,ブレーキを踏む判断を行うこれが判断の第二ステップに相当します.

ブレーキを踏むという判断は,これから自分が行おうとするイメージ(予測)の行動になります.つまり,判断には,視覚からの判断と予測から判断する2種類あり,我々はこの2種類の判断を瞬時にやっていることになります.


「安全への予測」

道路標識や路面標識は固定された位置にあり動くことはないので判断過程はここまでですが,安全運転を心がける方や無事故の方は,自身が止まるを判断した直後に死角となっている左右の道路から飛び出してこないか注意を払います.

これは,このような無信号交差点では左右から車が来る可能性があることを知識や経験などで記憶となり残っており,実際に目で見えていなくても予測の判断を多く行っているため,予測したことが実際に起きても対処することができ事故に至らずに済む可能性を高めます.

高齢になると一般的には記憶力の低下が進むと言われており,視覚情報から得られたものが何なのかを判断するのに時間がかかってしまい,また,目で見えていないものを頭の中でイメージして予測する力も弱まり,高齢になると2種類の判断が瞬時にはでき難くなっています.

ただ,瞬時にできなくても判断できる時間を稼ぎさえすれば,高齢者の方でも安全な運転行動に移せると思います.次回「3つ目:行動の意識」について述べたいと思います.

次回は第4回「3つ目:行動の意識」です。
配信日程:12月15日(木)配信予定

【プロフィール】
山邉 茂之(やまべ しげゆき)
東北大学未来科学技術共同研究センター准教授
ホームページ http://mobility.niche.tohoku.ac.jp/
2007年京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻博士課程修了。東京大学生産技術研究所を経て、2013年より現職。車両工学、シミュレーション工学を専門として、事故など現実では再現が難しいシチュエーションをシミュレータの活用により、運転者の運転行動計測や生体計測から原因解明を行う研究をしている。