- 高齢者が安心・安全に運転できる3つの意識 「第1回 運転への慣れ」
- 高齢者が安心・安全に運転できる3つの意識 「第2回 1つ目:認知の意識」
- 高齢者が安心・安全に運転できる3つの意識 「第3回 2つ目:判断の意識」
- 高齢者が安心・安全に運転できる3つの意識 「第4回 3つ目:行動の意識」
高齢者が安心・安全に運転できる3つの意識 「第5回 事例:逆走問題」
東北大学
2016/12/16 11:19
第5回「事例:逆走問題」
第1回で高齢者による事故のニュースが増えたことに触れましたが,一般道路や高速道路を逆走する運転やそれに伴う事故がニュースで取り上げられる機会が増えました.逆走は,高速道路で起こる事故全体と比べても死傷事故になる割合が4倍,死亡事故は40倍と重大な事故に結びつく可能性が非常に高く,逆走を起こした運転者の7割が65歳以上の高齢者であり,高齢社会に伴い今後も発生件数は増加する傾向にあります.
逆走が起きてしまう原因としては,様々ありますが,認知・判断・操作のどこかのミスで起こっているのは間違いないのですが,ではどこで?と言われるとまだ解明には至っておりません.逆走を起こした方になぜ逆走をしたかと聞くと,「よく分からない」「道を間違えたから」「疾病によるもの」など原因がバラバラなところが難しい問題になっている理由です.
逆走のメカニズムの解明にはまだ時間がかかりますが,「よく分からない」や「道を間違えたから」を起こさせないようにする対策を講じることは可能です.
下図は,インターチェンジに進入する際の逆走を起こさせないための対策の一部です.
(三陸自動車道河北インターチェンジ)
中央ラバーポール
看板と矢印
路面カラー舗装
道路路面案内(出口矢印)
第2回で述べた「認知」し易い場所に逆走対策を施しています.これらの対策が逆走防止対策だという認識を持ってもらえれば第3回で述べた「判断」する材料として記憶に残ります.このコラムを読んで下さっていること自体,逆走対策の一環にもなっています.上図が逆走対策だと認知と判断できれば,第4回で述べた「操作」において運転者の運転行動を変えることができれば,結果的に逆走を未然に防止する対策となります.
これを表紙のヴァーチャル空間内で運転できるドライビングシミュレータを用いて実験すると上図の中で一番良かった対策としては,路面カラー舗装が一番逆走を起こしにくい対策となりました.理由は色が塗られているので,見やすくその上を走っていれば高速道路に入れるためで,実際に河北ICではこの対策が今年中に施工されます.
もう1つ,下記リンク先の動画を再生下さい.
(インターチェンジから車が逆走するシーンです)
http://mobility.niche.tohoku.ac.jp/?page_id=761
逆走する側ではなく,逆走される側の視点で見てみると,目の前で車が自分に向かってくる光景は今まで体験はもちろん,見る機会もないことから,動画のように車が向かってきたらどのように回避したら良いかは瞬間的には判断,操作するのは難しく,重大な事故につながるケースとなっています.
逆走がなぜ起きるのかを理解するよりも,現在ある逆走の対策を理解し,また,動画を見ていただいたことで逆走される側の光景を記憶に残すことで,同じ場面に遭遇した際に大きな事故を回避できる判断材料が得られ,このこと自体逆走対策の1つだと言えます.
この連載を通じて,「認知」「判断」「操作」の運転行動を今一度確認する機会となり,皆さんが安心な運転へのより一層の心がけができ,また安全への意識を今以上に持っていただける一助となれば幸いです.
【プロフィール】
山邉 茂之(やまべ しげゆき)
東北大学未来科学技術共同研究センター准教授
ホームページ http://mobility.niche.tohoku.ac.jp/
2007年京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻博士課程修了。東京大学生産技術研究所を経て、2013年より現職。車両工学、シミュレーション工学を専門として、事故など現実では再現が難しいシチュエーションをシミュレータの活用により、運転者の運転行動計測や生体計測から原因解明を行う研究をしている。
【バックナンバー】
高齢者が安心・安全に運転できる3つの意識
第1回 「運転への慣れ」
第2回 「1つ目:認知の意識」
第3回 「2つ目:判断の意識」
第4回 「3つ目:行動の意識」
第1回で高齢者による事故のニュースが増えたことに触れましたが,一般道路や高速道路を逆走する運転やそれに伴う事故がニュースで取り上げられる機会が増えました.逆走は,高速道路で起こる事故全体と比べても死傷事故になる割合が4倍,死亡事故は40倍と重大な事故に結びつく可能性が非常に高く,逆走を起こした運転者の7割が65歳以上の高齢者であり,高齢社会に伴い今後も発生件数は増加する傾向にあります.
逆走が起きてしまう原因としては,様々ありますが,認知・判断・操作のどこかのミスで起こっているのは間違いないのですが,ではどこで?と言われるとまだ解明には至っておりません.逆走を起こした方になぜ逆走をしたかと聞くと,「よく分からない」「道を間違えたから」「疾病によるもの」など原因がバラバラなところが難しい問題になっている理由です.
逆走のメカニズムの解明にはまだ時間がかかりますが,「よく分からない」や「道を間違えたから」を起こさせないようにする対策を講じることは可能です.
下図は,インターチェンジに進入する際の逆走を起こさせないための対策の一部です.
(三陸自動車道河北インターチェンジ)
中央ラバーポール
看板と矢印
路面カラー舗装
道路路面案内(出口矢印)
第2回で述べた「認知」し易い場所に逆走対策を施しています.これらの対策が逆走防止対策だという認識を持ってもらえれば第3回で述べた「判断」する材料として記憶に残ります.このコラムを読んで下さっていること自体,逆走対策の一環にもなっています.上図が逆走対策だと認知と判断できれば,第4回で述べた「操作」において運転者の運転行動を変えることができれば,結果的に逆走を未然に防止する対策となります.
これを表紙のヴァーチャル空間内で運転できるドライビングシミュレータを用いて実験すると上図の中で一番良かった対策としては,路面カラー舗装が一番逆走を起こしにくい対策となりました.理由は色が塗られているので,見やすくその上を走っていれば高速道路に入れるためで,実際に河北ICではこの対策が今年中に施工されます.
もう1つ,下記リンク先の動画を再生下さい.
(インターチェンジから車が逆走するシーンです)
http://mobility.niche.tohoku.ac.jp/?page_id=761
逆走する側ではなく,逆走される側の視点で見てみると,目の前で車が自分に向かってくる光景は今まで体験はもちろん,見る機会もないことから,動画のように車が向かってきたらどのように回避したら良いかは瞬間的には判断,操作するのは難しく,重大な事故につながるケースとなっています.
逆走がなぜ起きるのかを理解するよりも,現在ある逆走の対策を理解し,また,動画を見ていただいたことで逆走される側の光景を記憶に残すことで,同じ場面に遭遇した際に大きな事故を回避できる判断材料が得られ,このこと自体逆走対策の1つだと言えます.
この連載を通じて,「認知」「判断」「操作」の運転行動を今一度確認する機会となり,皆さんが安心な運転へのより一層の心がけができ,また安全への意識を今以上に持っていただける一助となれば幸いです.
【プロフィール】
山邉 茂之(やまべ しげゆき)
東北大学未来科学技術共同研究センター准教授
ホームページ http://mobility.niche.tohoku.ac.jp/
2007年京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻博士課程修了。東京大学生産技術研究所を経て、2013年より現職。車両工学、シミュレーション工学を専門として、事故など現実では再現が難しいシチュエーションをシミュレータの活用により、運転者の運転行動計測や生体計測から原因解明を行う研究をしている。
【バックナンバー】
高齢者が安心・安全に運転できる3つの意識
第1回 「運転への慣れ」
第2回 「1つ目:認知の意識」
第3回 「2つ目:判断の意識」
第4回 「3つ目:行動の意識」