子どもたちの居場所づくり 地域ぐるみで自由な遊び場を
その他
2017/01/10 10:38
子どもたちの居場所づくり 地域ぐるみで自由な遊び場を
谷垣 怜奈
仙台市財政局理財部(仙台市協働人材育成事業~NPO留学しませんか~体験職員)
楽しそうな笑い声、ばたばたと翔る音、マジックペンを持ってはしゃぐ子どもたち。若林区の伊在2丁目公園には、そのような光景が広がります。遊びを通して人や地域とつながる機会をつくっているのが、認定NPO法人冒険あそび場-せんだい・みやぎネットワーク(以下、冒険あそび場ネット)です。
自分の責任で自由に遊ぶ
子どもは、遊びを通して自ら生きる力を身につけていきます。しかし、現在の子どもの遊びを取り巻く環境は、とても窮屈なものです。「うるさい」「危ない」「迷惑をかける」からやめなさいと大人に言われ、子どもたちは自主的な行動をする機会を奪われています。
冒険あそび場ネットは、そんな子どもたちに思いのままに遊ぶことができる居場所を返していくために、活動しています。
冒険遊び場は『自分の責任で自由に遊ぶ』がモットーです。「遊び場は子どもたちがやりたいことをやれる場。遊具や道具などのハードは用意しますが、それをどのように利用するかは子どもたちの自由にまかせています」とプレーリーダーの岩渕健史さんは言います。
遊び場にはプレーリーダーがいますが、子どもたちの自由を尊重して活動しています。「プレーリーダーと聞くと、子どもたちに遊び方を教えたり、先頭を切って遊んでくれる先生やリーダーだという印象を持たれるかもしれませんが、遊び場のプレーリーダーは子どもたちがやりたいことを実現できるように見守る存在です。こんなことしてみたいんだけどという相談に乗ったり、子どもたちが話したいことがあれば傾聴します。一緒に遊ぼうと子どもたちから声をかけられたときには思い切り遊びます」と事務局の米倉正子さん。
岩渕さんは、「プレーリーダーは放任はしても、放置は決してしません。本当に危険なときはもちろん助けるし、遊びのヒントをあげることもあります。しかし、大人が必要になったときには子どもたちの方から話しかけてくれます。だから大人からはこれをしようあれをしようとは言わないようにしています」とも言います。
冒険遊び場では、このように子どもが自分の意思で自由に遊ぶことをとても大切にしています。
▲事務局の米倉さん(右)とプレーリーダーの岩渕さん(左)
震災発生後の心のケア
冒険あそび場ネットでは、若林区井土にある海岸公園冒険広場の指定管理をしていました。この公園は、2005年に開園して以来、年間18万人が利用する大人気の公園でした。
しかし、2011年3月11日、今まで経験したことのない大津波が冒険広場を襲いました。海岸からわずか300メートルの距離にある冒険広場は、高台部分を除いて甚大な被害を受けました。
震災発生後は、海岸公園は使用できる状態ではありませんでした。そのため、仮設住宅や小学校での遊び場開催を軸に支援活動を展開していました。仮設住宅の近くの遊び場では、子どもが遊ぶということはもちろんですが、子どもたちと一緒にお年寄りの皆さんも集まり、おにぎりなどを持ってきてわいわいするという光景もみることができました。
「子どもたちは遊びを通して、心の中の正直な気持ちを表しているように感じました」と岩渕さん。仮設住宅に移り、気を張っていた子どもも、遊び場で目一杯遊ぶことで、大きな声で笑うようになりました。遊び場に集まっていたお年寄りの皆さんも、子どもの笑っている姿をみることができて良かったと喜びました。冒険遊び場は心のケアの役割も果たしています。
地域主体の遊び場づくりへ
冒険あそび場ネットでは、現在も、六郷や七郷、田子や岩沼などで巡回型の遊び場の活動を行っています。冒険遊び場がある日は、子どもたちの期待をのせて、小学校や公園にカラフルな「プレーカー」がやってきます。プレーカーには、手づくり遊具や、のこぎり・かなづちなどの工具、木材や縄など、子どもたちが自由に遊べる道具が積まれています。海岸公園冒険広場が休園中でも子どもが思い切り遊べるよう、出張して遊び場の活動が行われています。
▲カラフルなプレーカー
巡回型の遊び場は、子どもたちが遊ぶだけでなく、大人同士の情報交換の場にもなっています。幼稚園の情報や、病院の評判、おすすめのお店の紹介など、子どもたちが遊んでいる間におしゃべりは盛り上がります。子どもの洋服のおさがりをあげたりするなど、交流にもつながっています。
このように、遊び場は多世代のコミュニティ形成の場にもなっています。「これがきっかけで、これなら私たちにも遊び場ができそうだと地域の人に思ってもらえたら良いなと思います」と岩渕さん。実際に、未就園児と保護者が対象の遊び場の活動では、保護者が中心となってチラシを作るなど、大活躍しています。
震災直後と比べると、冒険あそび場ネットの活動がない日でも、子どもや保護者が公園に集まって遊ぶ光景も見られるようになりました。岩渕さんは、「プレーカーや道具がなくても、地域のコミュニティを活かして、子どもたちの居場所をつくり見守るということを続けていってもらえたら嬉しいです。冒険遊び場の理念や経験を地域の方に伝え、私たちは運営する立場から支える立場になっていけたらなと感じています」と語ります。
▲ビニールの壁にお絵かき
子どもの個性や意思などは遊びそのものに現れます。そのため、自由に遊び個性を存分に発揮することができる遊び場は、子どもたちの心の拠り所となっています。海岸公園冒険広場は2018年に再開する予定です。その海岸公園冒険広場をはじめ、地域に遊び場が広がり、子どもの笑顔があふれるよう、冒険あそび場ネットは活動しています。
認定NPO法人 冒険あそび場-せんだい・みやぎネットワーク
〒980-0803 仙台市青葉区国分町3-8-17
日東ハイツ202
●TEL/FAX:022-264-0667
●E-mail:jimukyoku@bouken-asobiba-net.com
●URL:http://www.bouken-asobiba-net.com/
月刊 杜の伝言板 月刊ゆるる 2017年1月号
http://www.yururu.com/?p=2044
谷垣 怜奈
仙台市財政局理財部(仙台市協働人材育成事業~NPO留学しませんか~体験職員)
楽しそうな笑い声、ばたばたと翔る音、マジックペンを持ってはしゃぐ子どもたち。若林区の伊在2丁目公園には、そのような光景が広がります。遊びを通して人や地域とつながる機会をつくっているのが、認定NPO法人冒険あそび場-せんだい・みやぎネットワーク(以下、冒険あそび場ネット)です。
自分の責任で自由に遊ぶ
子どもは、遊びを通して自ら生きる力を身につけていきます。しかし、現在の子どもの遊びを取り巻く環境は、とても窮屈なものです。「うるさい」「危ない」「迷惑をかける」からやめなさいと大人に言われ、子どもたちは自主的な行動をする機会を奪われています。
冒険あそび場ネットは、そんな子どもたちに思いのままに遊ぶことができる居場所を返していくために、活動しています。
冒険遊び場は『自分の責任で自由に遊ぶ』がモットーです。「遊び場は子どもたちがやりたいことをやれる場。遊具や道具などのハードは用意しますが、それをどのように利用するかは子どもたちの自由にまかせています」とプレーリーダーの岩渕健史さんは言います。
遊び場にはプレーリーダーがいますが、子どもたちの自由を尊重して活動しています。「プレーリーダーと聞くと、子どもたちに遊び方を教えたり、先頭を切って遊んでくれる先生やリーダーだという印象を持たれるかもしれませんが、遊び場のプレーリーダーは子どもたちがやりたいことを実現できるように見守る存在です。こんなことしてみたいんだけどという相談に乗ったり、子どもたちが話したいことがあれば傾聴します。一緒に遊ぼうと子どもたちから声をかけられたときには思い切り遊びます」と事務局の米倉正子さん。
岩渕さんは、「プレーリーダーは放任はしても、放置は決してしません。本当に危険なときはもちろん助けるし、遊びのヒントをあげることもあります。しかし、大人が必要になったときには子どもたちの方から話しかけてくれます。だから大人からはこれをしようあれをしようとは言わないようにしています」とも言います。
冒険遊び場では、このように子どもが自分の意思で自由に遊ぶことをとても大切にしています。
▲事務局の米倉さん(右)とプレーリーダーの岩渕さん(左)
震災発生後の心のケア
冒険あそび場ネットでは、若林区井土にある海岸公園冒険広場の指定管理をしていました。この公園は、2005年に開園して以来、年間18万人が利用する大人気の公園でした。
しかし、2011年3月11日、今まで経験したことのない大津波が冒険広場を襲いました。海岸からわずか300メートルの距離にある冒険広場は、高台部分を除いて甚大な被害を受けました。
震災発生後は、海岸公園は使用できる状態ではありませんでした。そのため、仮設住宅や小学校での遊び場開催を軸に支援活動を展開していました。仮設住宅の近くの遊び場では、子どもが遊ぶということはもちろんですが、子どもたちと一緒にお年寄りの皆さんも集まり、おにぎりなどを持ってきてわいわいするという光景もみることができました。
「子どもたちは遊びを通して、心の中の正直な気持ちを表しているように感じました」と岩渕さん。仮設住宅に移り、気を張っていた子どもも、遊び場で目一杯遊ぶことで、大きな声で笑うようになりました。遊び場に集まっていたお年寄りの皆さんも、子どもの笑っている姿をみることができて良かったと喜びました。冒険遊び場は心のケアの役割も果たしています。
地域主体の遊び場づくりへ
冒険あそび場ネットでは、現在も、六郷や七郷、田子や岩沼などで巡回型の遊び場の活動を行っています。冒険遊び場がある日は、子どもたちの期待をのせて、小学校や公園にカラフルな「プレーカー」がやってきます。プレーカーには、手づくり遊具や、のこぎり・かなづちなどの工具、木材や縄など、子どもたちが自由に遊べる道具が積まれています。海岸公園冒険広場が休園中でも子どもが思い切り遊べるよう、出張して遊び場の活動が行われています。
▲カラフルなプレーカー
巡回型の遊び場は、子どもたちが遊ぶだけでなく、大人同士の情報交換の場にもなっています。幼稚園の情報や、病院の評判、おすすめのお店の紹介など、子どもたちが遊んでいる間におしゃべりは盛り上がります。子どもの洋服のおさがりをあげたりするなど、交流にもつながっています。
このように、遊び場は多世代のコミュニティ形成の場にもなっています。「これがきっかけで、これなら私たちにも遊び場ができそうだと地域の人に思ってもらえたら良いなと思います」と岩渕さん。実際に、未就園児と保護者が対象の遊び場の活動では、保護者が中心となってチラシを作るなど、大活躍しています。
震災直後と比べると、冒険あそび場ネットの活動がない日でも、子どもや保護者が公園に集まって遊ぶ光景も見られるようになりました。岩渕さんは、「プレーカーや道具がなくても、地域のコミュニティを活かして、子どもたちの居場所をつくり見守るということを続けていってもらえたら嬉しいです。冒険遊び場の理念や経験を地域の方に伝え、私たちは運営する立場から支える立場になっていけたらなと感じています」と語ります。
▲ビニールの壁にお絵かき
子どもの個性や意思などは遊びそのものに現れます。そのため、自由に遊び個性を存分に発揮することができる遊び場は、子どもたちの心の拠り所となっています。海岸公園冒険広場は2018年に再開する予定です。その海岸公園冒険広場をはじめ、地域に遊び場が広がり、子どもの笑顔があふれるよう、冒険あそび場ネットは活動しています。
認定NPO法人 冒険あそび場-せんだい・みやぎネットワーク
〒980-0803 仙台市青葉区国分町3-8-17
日東ハイツ202
●TEL/FAX:022-264-0667
●E-mail:jimukyoku@bouken-asobiba-net.com
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月刊 杜の伝言板 月刊ゆるる 2017年1月号
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