「ひとりじゃない」を感じられる場所 NPO法人子どもグリーフサポートステーション
その他
2017/02/16 10:24
「ひとりじゃない」を感じられる場所
NPO法人子どもグリーフサポートステーション
髙橋 実希 杜の伝言板ゆるるインターン 東北大学2年
NPO法人子どもグリーフサポートステーション(以下、グリサポ)は、震災や自死、事故、病気などで、親や兄弟、友人など大切な人を亡くした子どもたちへのグリーフサポートを行っている団体です。グリーフとは、喪失体験に伴う愛惜や悲しみなど様々な感情のことを指します。
あそびは言葉
グリサポでは、仙台と陸前高田で月に2回ずつグリーフプログラムを開催しており、両市を合わせて毎月約25名から30名の子どもたちが参加しています。釜石市や宮古市、盛岡市などで開催することもあります。
このプログラムでは、子どもたちが自分の気持ちに丁寧に触れられるようになることを目標に、一緒に遊んだりおしゃべりしたりしながら自由に過ごします。また、同時に保護者同士が交流する場も設けられています。
グリサポが子どものケアと大人のケアを分けている大きな理由は、感情の表現方法の違いにあります。大人は言葉によって思っていることを共有できますが、子どもは大人に比べて語彙数が少ないため、自分の気持ちを言葉で伝えられないことがあります。その時は、あそびやクラフトワークなど体を動かすことを通して自分の感情を表現します。子どもの場合、あそびは「言葉」と同じなのです。また、年齢の近い人と話す方がより気持ちを共感し合えるというのも理由の1つです。
グリーフプログラムは、震災前からグリーフケアの活動をしていた現NPO法人仙台グリーフケア研究会が開催するプログラムでしたが、震災後に参加者が多くなり、単独での継続開催が難しくなったため、現在のグリサポが設立されました。
グリーフサポートステーションという名前は、子どもたちがいつでも何度でも行き来できる駅(ステーション)のような場所にしたいという想いから付けられました。その名前の通り、9割以上の子どもたちが2回目以降も訪れるといいます。
▲アートプログラムの様子
三つの部屋
グリサポの活動拠点である「あしなが育英会仙台レインボーハウス」には、子どものグリーフサポートのために考えられた3つの部屋があります。
1つ目は、「おしゃべりの部屋」。この部屋は、プログラムの始まりと終わりの場であり、みんなで輪になっておしゃべりをします。おしゃべりのためだけの空間を設定することで、子どもたちが日常では話しにくいことも話せるようになります。
2つ目は、「火山の部屋」。この部屋では、子どもたちが大声を出したり、のびのびと体を動かすことができ、日頃溜まっているストレスなど高いエネルギーを発散できる場所です。
3つ目は、「あそびの部屋」。子どもたちは、この部屋であそぶことを通して感情を表に出します。
▲のびのびと体を動かせる火山の部屋
グリサポを訪れる子どもたちの中には、将来に対して底知れぬ不安を抱えている子もいます。
グリサポ事務局長の相澤治さんは、「ある子どもは、『将来は○○になりたい。でも死ぬかもしれないしなぁ』と言います。将来に希望が持てないと、勉強する意欲が湧かず不登校になったり、健康意識の低下から、夜更かしや食生活の乱れがみられます。
しかし、悲しみや不安は無理に忘れようとしたり、乗り越えようとする必要はありません。過去に寄り添って、自分の気持ちを丁寧に扱えるようになることが大切なのです。自分の体験について話すタイミングも人それぞれです。感情は自分の言葉で扱えるようになって初めて話すことができます。その時まで子どもたちを見守っていくのがグリサポの役割です」と話します。
思い出を振り返ること
東日本震災からもうすぐ6年が経とうとしています。あの日まだ幼かった子どもたちは随分と大きくなりました。近頃は、震災当時やその前のことについて知りたいと言う子が増えたといいます。しかし、保護者がまだ話せるような心境ではなく、家庭内では聞きづらいという子もいます。
グリサポでは、そのような子どもたちと一緒に過去を振り返ることで、子どもたちが亡くなった大切な人とのつながりを再確認するための手助けをします。私たちは喪失体験をすると、亡くなった時のことやその後のことばかり考えてしまいがちですが、生前の思い出を振り返ることは命への実感を高めるためにとても大切なことなのです。
求められる支援の認知
グリサポが現在抱えている課題は、グリサポを必要としている人々にその存在があまり広まっていないということです。そのため、今後は病院や葬儀関係者などを通じて当事者に伝えたり、教育機関でグリーフについての授業を行うこと等が必要になるでしょう。
また、別の課題として死別要因による支援の格差があります。東北では震災遺児や震災孤児を対象とした寄付金やプログラムが多く集まります。
しかし、事故や病気、自死などによって家族を亡くした子どもたちへの支援は未だ少ないのが現状です。震災は特殊なケースですので注目されるのはごく自然のこと。しかし、今後増加していくのは事故や病気、自死で家族を亡くすケースです。震災に限らず、他の死別要因の子どもたちにも十分に支援の手が差し伸べられるようになることが求められてい
ます。
地域に強いネットワークを
「自分も大事。相手も大事。」これは、相澤さんが活動するうえで大切にしている考え方です。頑張ることは良いことですが、無理をするのは自分にとっても相手にとっても悪影響になりかねません。
活動を継続して行うためにも「できないことは引き受けない」ことが重要だといいます。子どもたちにまつわるすべての支援を無理に1つの団体で行おうとすると、広く浅くの支援となり、かえって効率が悪くなります。
PTSDのようなケアは医療機関に、学習支援は教育機関にといったように専門の機関に繋げる、良い意味での「丸投げ」が必要なのです。このように、それぞれの専門性を持ったところで子どもたちの支援を行い、地域に強いネットワークをつくることは、支援の輪から外れる子どもをなくすことにも繋がります。
私たちが喪失体験をした子どもたちのためにできることは、まずは子どもの力を信じることです。手を貸し過ぎず、そばで見守り、時には辛抱強く待つことです。グリサポは常に子どもたちの視点に立ってグリーフサポートを行っています。
▲仙台ワンデイプログラムの様子
NPO法人子どもグリーフサポートステーション
〒980-0022 仙台市青葉区五橋2-1-15
仙台レインボーハウス 1階
●T E L:022-796-2710
●FA X:022-774-1612
●E-mail:info@cgss.jp
●URL:http://www.cgss.jp/
月刊 杜の伝言板 月刊ゆるる 2017年2月号
http://www.yururu.com/?p=2222
NPO法人子どもグリーフサポートステーション
髙橋 実希 杜の伝言板ゆるるインターン 東北大学2年
NPO法人子どもグリーフサポートステーション(以下、グリサポ)は、震災や自死、事故、病気などで、親や兄弟、友人など大切な人を亡くした子どもたちへのグリーフサポートを行っている団体です。グリーフとは、喪失体験に伴う愛惜や悲しみなど様々な感情のことを指します。
あそびは言葉
グリサポでは、仙台と陸前高田で月に2回ずつグリーフプログラムを開催しており、両市を合わせて毎月約25名から30名の子どもたちが参加しています。釜石市や宮古市、盛岡市などで開催することもあります。
このプログラムでは、子どもたちが自分の気持ちに丁寧に触れられるようになることを目標に、一緒に遊んだりおしゃべりしたりしながら自由に過ごします。また、同時に保護者同士が交流する場も設けられています。
グリサポが子どものケアと大人のケアを分けている大きな理由は、感情の表現方法の違いにあります。大人は言葉によって思っていることを共有できますが、子どもは大人に比べて語彙数が少ないため、自分の気持ちを言葉で伝えられないことがあります。その時は、あそびやクラフトワークなど体を動かすことを通して自分の感情を表現します。子どもの場合、あそびは「言葉」と同じなのです。また、年齢の近い人と話す方がより気持ちを共感し合えるというのも理由の1つです。
グリーフプログラムは、震災前からグリーフケアの活動をしていた現NPO法人仙台グリーフケア研究会が開催するプログラムでしたが、震災後に参加者が多くなり、単独での継続開催が難しくなったため、現在のグリサポが設立されました。
グリーフサポートステーションという名前は、子どもたちがいつでも何度でも行き来できる駅(ステーション)のような場所にしたいという想いから付けられました。その名前の通り、9割以上の子どもたちが2回目以降も訪れるといいます。
▲アートプログラムの様子
三つの部屋
グリサポの活動拠点である「あしなが育英会仙台レインボーハウス」には、子どものグリーフサポートのために考えられた3つの部屋があります。
1つ目は、「おしゃべりの部屋」。この部屋は、プログラムの始まりと終わりの場であり、みんなで輪になっておしゃべりをします。おしゃべりのためだけの空間を設定することで、子どもたちが日常では話しにくいことも話せるようになります。
2つ目は、「火山の部屋」。この部屋では、子どもたちが大声を出したり、のびのびと体を動かすことができ、日頃溜まっているストレスなど高いエネルギーを発散できる場所です。
3つ目は、「あそびの部屋」。子どもたちは、この部屋であそぶことを通して感情を表に出します。
▲のびのびと体を動かせる火山の部屋
グリサポを訪れる子どもたちの中には、将来に対して底知れぬ不安を抱えている子もいます。
グリサポ事務局長の相澤治さんは、「ある子どもは、『将来は○○になりたい。でも死ぬかもしれないしなぁ』と言います。将来に希望が持てないと、勉強する意欲が湧かず不登校になったり、健康意識の低下から、夜更かしや食生活の乱れがみられます。
しかし、悲しみや不安は無理に忘れようとしたり、乗り越えようとする必要はありません。過去に寄り添って、自分の気持ちを丁寧に扱えるようになることが大切なのです。自分の体験について話すタイミングも人それぞれです。感情は自分の言葉で扱えるようになって初めて話すことができます。その時まで子どもたちを見守っていくのがグリサポの役割です」と話します。
思い出を振り返ること
東日本震災からもうすぐ6年が経とうとしています。あの日まだ幼かった子どもたちは随分と大きくなりました。近頃は、震災当時やその前のことについて知りたいと言う子が増えたといいます。しかし、保護者がまだ話せるような心境ではなく、家庭内では聞きづらいという子もいます。
グリサポでは、そのような子どもたちと一緒に過去を振り返ることで、子どもたちが亡くなった大切な人とのつながりを再確認するための手助けをします。私たちは喪失体験をすると、亡くなった時のことやその後のことばかり考えてしまいがちですが、生前の思い出を振り返ることは命への実感を高めるためにとても大切なことなのです。
求められる支援の認知
グリサポが現在抱えている課題は、グリサポを必要としている人々にその存在があまり広まっていないということです。そのため、今後は病院や葬儀関係者などを通じて当事者に伝えたり、教育機関でグリーフについての授業を行うこと等が必要になるでしょう。
また、別の課題として死別要因による支援の格差があります。東北では震災遺児や震災孤児を対象とした寄付金やプログラムが多く集まります。
しかし、事故や病気、自死などによって家族を亡くした子どもたちへの支援は未だ少ないのが現状です。震災は特殊なケースですので注目されるのはごく自然のこと。しかし、今後増加していくのは事故や病気、自死で家族を亡くすケースです。震災に限らず、他の死別要因の子どもたちにも十分に支援の手が差し伸べられるようになることが求められてい
ます。
地域に強いネットワークを
「自分も大事。相手も大事。」これは、相澤さんが活動するうえで大切にしている考え方です。頑張ることは良いことですが、無理をするのは自分にとっても相手にとっても悪影響になりかねません。
活動を継続して行うためにも「できないことは引き受けない」ことが重要だといいます。子どもたちにまつわるすべての支援を無理に1つの団体で行おうとすると、広く浅くの支援となり、かえって効率が悪くなります。
PTSDのようなケアは医療機関に、学習支援は教育機関にといったように専門の機関に繋げる、良い意味での「丸投げ」が必要なのです。このように、それぞれの専門性を持ったところで子どもたちの支援を行い、地域に強いネットワークをつくることは、支援の輪から外れる子どもをなくすことにも繋がります。
私たちが喪失体験をした子どもたちのためにできることは、まずは子どもの力を信じることです。手を貸し過ぎず、そばで見守り、時には辛抱強く待つことです。グリサポは常に子どもたちの視点に立ってグリーフサポートを行っています。
▲仙台ワンデイプログラムの様子
NPO法人子どもグリーフサポートステーション
〒980-0022 仙台市青葉区五橋2-1-15
仙台レインボーハウス 1階
●T E L:022-796-2710
●FA X:022-774-1612
●E-mail:info@cgss.jp
●URL:http://www.cgss.jp/
月刊 杜の伝言板 月刊ゆるる 2017年2月号
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