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政令指定都市の中の仙台 -暮らしに関する5つの視点でランキング- 第1回 仙台の子供・子育て環境を検証する

2016/01/18 10:00

政令指定都市の中の仙台

-暮らしに関する5つの視点でランキング-

政令指定都市とは市のうち、特に政令で特別な行政権限を持つ都市で、原則として人口50万人以上の大都市です。簡単にいうと「区」がある「市」で、いわば都市の上級生にあたるもので、全国に20都市存在します。


仙台市も平成元年に政令指定都市となり、今年で28年目を迎えます。昨年末には地下鉄東西線も開業し、人口も107万人を擁する東北地方の大都市といえます。今回は、その全国の大都市を暮らしに関する5つの視点で比較し、仙台市の位置づけを確認してみたいと思います。


第1回 仙台市の子供・子育て環境を検証する

第1回は、子供・子育ての観点から、大都市を比較してみたいと思います。全国的に少子化が大きな社会問題となり、また昨年仙台市ではいじめを端緒として中学生が自殺するという痛ましい事件も起きています。全ての子供が安全で、健やかに成長する環境が整っていることが望まれます。


1.乳児死亡率

はじめに、子供の出生の安全性に関して比較してみましょう。出生の安全についてここでは、「乳児死亡率」を見ることにしましょう。表1は大都市の乳児死亡率のうち上位の12都市分を示しています。この乳児死亡率は当然小さいほうが望ましいので、熊本市が最も優れていることがわかります。


仙台市は第7位で、上位1/3程度に入っています。しかし、この死亡率は低ければ低いほどよいので、さらに改善が望まれます。




2.保育施設

次に、子育ての重要な指標として、保育施設の整備状況を見てみることにしましょう。女性の活躍が望まれる中、仕事と子育ての両立のためにも、保育施設は重要です。


保育施設の整備状況を比較するために、表2では、保育施設の利用を待っている待機児童数をその都市の0~4歳の子供の数で除したもの(小さいほど望ましい)と、逆に保育施設を利用している児童数をその都市の0~4歳の子供の数で除したもの(大きいほど整備されている)を示しました。


これを見ると、仙台市は待機児童の比率でも、利用児童の比率でも、20大都市の下位に甘んじており、保育施設の充実が望まれます。




3.児童相談の状況

次に、児童相談の状況を見てみることにしましょう。核家族化が進む中で、育児における母親の孤立化や児童虐待の問題など、子育てを行う親の側への相談業務などの手助けが必要とされています。


ここでは、大都市の児童相談の状況についてみてみましょう。表3は大都市の平成26年度の児童相談の対応件数と未対応件数の統計から計算した未対応率の上位5都市が示されています。ここでいう「未対応」とは、窓口での門前払いを意味するのではなく、受け付けてはいるものの、最終的な処置が未決定のものを指します。


これを見ると、対応件数と未対応件数を合わせた総件数に占める未対応の比率は市町村の窓口で行うものは20大都市中仙台市が最も未対応率が高くなっています。児童相談の対応がより早く、スムーズに行われるための行政資源の拡充が強く望まれるところです。


逆に、児童相談所の行う相談では、仙台市の未対応状況はベスト4と小さくなっていることがわかります。市町村の窓口での相談の充実と同時に、適切に児童相談所への連携と紹介が望まれるといえます。




4.子供にかける予算

次に、各大都市で児童福祉費を比較してみましょう。ここでは、平成25年度決算での児童福祉費支出総額を0歳から14歳までの子供人口で割った1人当たりの予算で比較してみます。


表4を見ると仙台市の子供1人当たりの児童福祉費は39万7千円余りで、政令指定都市中14位と低い方にランクされています。政令指定都市の平均は42万3千円でしたので、子供の安全で健やかな成長を行政の面から充実させるためにも、児童福祉費を40万円台まで充実させたいところです。




5.高校進学率

最後に、子供の教育環境を比較してみましょう。よく都道府県の比較では大学進学率が用いられますが、ここでは各都市の義務教育の環境ということで、中学卒業者に占める高校進学者の割合をとりました。


基本的にどの都市も9割以上の生徒が高校に進学しますが、仙台市はベスト3に入っており、この分野では良い結果となっています。




6.総括

今回、統計と政令指定都市の比較によってみた仙台市の子育て環境のランキングでは、保育施設と市役所の窓口における相談に改善の余地があることがわかりました。これらを制度的に充実させるためにも、児童福祉費の充実(政令指定都市平均の42万円レベルまで)が望まれます。


次回は、子供にかわって高齢者にとっての生活環境という視点から大都市を比較してみることとします。



次回は「第2回 高齢者の生活環境」です。

配信日程:1月19日(火) 配信予定



【プロフィール】

吉田 浩

東北大学大学院経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長

少子・高齢化社会の問題を経済学的観点から統計などを用いて解明。世代間不均衡、男女共同参画社会、公共政策の決定過程、玩具福祉学などを研究。

1969年、東京生まれ、1女2男の父。