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募金サイト『復興みやぎ』で支援したNPOの「今」第2弾

2016/05/17 10:04

月刊杜の伝言板ゆるる2016年4月号より
 
-東日本大震災から5年を経て-
募金サイト『復興みやぎ』で支援したNPOの「今」第2弾

http://www.fukkou-miyagi.jp/

『復興みやぎ』で、支援した9団体の中から、本誌面では、3団体をご紹介しています。
●NPO法人のんび~りすみちゃんの家
●NPO法人みどり会
●NPO法人みやぎ身体障害者サポートクラブ


3月号では、『復興みやぎ』で募金を呼びかけた被災団体の「今」をお伝えしました。今号はその続編です。震災から5年が過ぎ、各団体がどのような活動を続けてきたのか、近況を含めお伝えします。

地域で支援を必要とする人のために活動を続けるには、非営利団体であっても資金が必要です。NPO法人の資金源は主に、活動に賛同する会員からの会費や寄付、事業収入、そして助成金や補助金などで、その収入源は不安定で、不足しがちなのが現状です。

震災直後は、人的支援とともに、寄付や民間の助成金、公的な補助金など多くの支援があり、自らの活動や復興に集中できました。しかし、5年経ち復興予算をはじめ、補助金等が減少傾向にあり、資金調達のハードルはさらに高くなっています。
被災地の復興はまだ道半ばです。引き続き力強い支援が求められています。

利用者の安全を考え高台へ移転

▲【のんび~りすみちゃんの家】パドル体操リハビリの様子

東松島市を拠点に活動するNPO法人のんび〜りすみちゃんの家は、地域のニーズに応え、宅老所、デイサービス、デイホーム、グループホームで多様なサポートを行っていました。高齢者も障がいを持った人も誰もが安心して暮らせる、自分の家のような場所を目指して活動を続けていましたが、東日本大震災で3棟が津波により大きな被害を受けました。

『復興みやぎ』を通じた募金や補助金、自己資金で何とか工面し、ボランティアの協力も得ながら、2011年7月には全壊を免れた自宅を改修し、利用者の受け入れを再開しました。

居住地や要介護認定の有無などで制限されることなく、「誰でも受け入れたい」という強い想いから、介護保険制度外の宅老所と、介護保険適用のデイサービス、訪問介護事業を運営しています。

震災による地盤沈下により、5年が経った今も、満潮や大雨時に道路が冠水し、家の目の前まで水が迫ってくると言います。施設内で避難体制を整えてはいても、利用者のことを考えると不安は消えません。

高台への移転も検討を続けていました。安全面が確保されるのは嬉しいことですが、新たな土地の購入、建築にかかる総額は、推定1億円を越えると言います。悩んだ末、代表の伊藤壽美子さんが後継者の娘さんとローンを組み、現在の拠点に事業所とデイサービスを残し、宅老所を高台へ再建することにしました。

人が集まる仕組み作りのため、同敷地内に飲食や物販ができるサロンも開きたい、と年内完成予定の新拠点の活用に期待が膨らみます。

さらに「人手不足」も大きな課題だと言う伊藤さん。現在職員は17名ですが、手厚いサポートと、宅老所の夜勤体制を考えると人手が足りません。

地域に根差した活動を続けたい一心で、宅老所を始め今年で20年。「自分達が生かされた意味を考え、これからの事業の在り方について整理していきたい」と伊藤さんは語ります。「ここを必要とする地域の皆さんのために、これからも地域に寄り添うサポートを続けていきます」優しい声からも、その強い意志を感じました。

ようやく整い始めた運営基盤

▲【みどり会】手芸作業の様子

NPO法人みどり会は、仙台市内でグループホーム2つと、小規模地域活動センター2つを運営する精神障がい者の自立支援団体です。

東日本大震災で仙台市若林区荒浜にあった小規模地域活動センター「みどり工房若林」は、基礎だけを残し全壊。備品や作業場だった農地も失い、大きな被害を受けました。工房の再生を心待ちにする利用者のため、障がい者センターを間借りし活動を続けながら、「みんなが集まれる工房を早く見つけたい」という一心で利用者・職員が一丸となり物件を探しました。

震災直後であった上、不動産業者の障がい者施設への偏見が強く、「希望に沿った拠点を見つけることは非常に難しいことでした」と施設長の今野真理子さんは当時を振り返ります。

『復興みやぎ』で掲げた1千万円の募金目標額は会員や個人、支援団体、行政などの補助金により達成。現在の拠点となるビルを見つけ、2011年6月に新施設で活動を再開しました。農作業などの活動を、さをり織りやパンチングレザー(※)などの手芸に切替え、利用者の作業基盤もようやく確立しつつあります。

しかし、自分達の居場所づくりがまず第一と考え、仮の場として使用を決めましたが、雨漏りなどの老朽化による弊害が現在も続いており、修繕の見通しは無い状態です。このビルでいつまで過ごせるか、老朽化が悪化した場合、またニーズに合う物件が見つかるか、日々今野さんの心配は絶えません。移転費用などの捻出についても、皆で知恵を絞っていますが、まだまだ課題は山積みです。

「皆さんのお力添えにより運営基盤もでき始めています。沢山の温かいご支援をいただき、ここまで来ることができました。心から感謝しています」と今野さん。利用者・職員一丸となってきたこの5年を足掛かりに、さらなる発展を目指していく、と展望を語りました。
※全面に規則的に穴が模様になっているフェイクレザー

利用者の笑顔を取り戻す活動

▲【みやぎ身体障害者サポートクラブ】農園班 大根漬け作り

栗原市のNPO法人みやぎ身体障害者サポートクラブは、事故や病気などにより後遺障害を負った中途障がい者が、趣味や創作活動などを通して、仲間と助け合い、生きがいを見出しながら自立・社会参加していくことをサポートする団体です。

震災当時は、デイサービスとショートステイができる、障がい者自立支援のための「サポートセンターころんぶす」と、介護保険デイサービス施設「ころんぶす清水」を運営していました。

震度7だった栗原市では、沿岸部に比べ大きな被害は免れたものの、度重なる地震により、「ころんぶす清水」は倒壊の危険性が高いと診断されたため、利用者の安全を考え、新施設再建を決断しました。とはいえ多額費用のあてはなく、資金獲得に頭を抱えている時、全国から寄せられた寄付や、株式会社デンソーの『はあとふる基金』などの補助金を得ました。「自己資金では賄いきれないところを多くの皆さんに助けられました。心から感謝しています」と理事長の野澤タキ子さん。

『復興みやぎ』で掲げた募金目標額1500万円を見事達成し、「サポートセンターころんぶす」敷地内に介護・デイサービス施設「ころんぶす西館」が新築されました。

60代の若い利用者が多いみやぎ身体障害者サポートクラブでは、利用者の日常生活をお世話し、ただ見守るだけのサポートではなく、自らできることを発見し、活かしながら、生活の質を向上していくことを目的として、「ころんぶす」での1日の活動・作業全てがリハビリになるよう考えられています。

震災後は表情がこわばっていたという利用者の表情に、日に日に笑顔が見られるようになってきたことや、「友達も沢山でき、このような身体になった今も働く喜びを感じています。職員の皆さんも親切で元気をもらっています」という利用者からの嬉しい声も職員の潤滑油になっています。

2016年4月末には、活動拠点敷地内に、介護保険対象者が緊急時に宿泊できる宿泊棟が完成する予定です。付き添う家族の負担を少しでも減らしたい、という利用者の希望が叶った施設だと言います。「これからも利用者主体の細やかなサポートを続けていきます」言葉一つひとつから野澤さんの誠意と優しさが伝わってきました。


月刊杜の伝言板ゆるる2016年4月号 
http://www.yururu.com/?p=1523